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短信:光で聴覚を呼び起こす

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光で聴覚を呼び起こす「手術が不要な」人工聴覚器の可能性を実証
~赤外レーザーによる蝸牛への非接触刺激で、遺伝子操作なしに聴覚を誘導~

 

 日本では1985年に初めての人工内耳埋め込み手術が行われて以降、これまでに1万人以上が人工内耳を装用している。人工内耳は、重度難聴者の聴覚を回復する有効な治療法として広く普及しているものの、外科的な電極埋め込み手術が必要であり、音の周波数再現性や合併症のリスクといった課題を抱えている。これに対し、光による治療は電気よりも狭い範囲を精密に刺激できることから、より高い周波数分解能を実現する次世代の人工内耳技術として期待されている。一方で、これまで光による聴覚刺激の研究では、光感受性タンパク質を導入する遺伝子改変(オプトジェネティクス)が必要であり、臨床応用へのハードルとなっていた。そのため、遺伝子改変を行わずに光刺激によって聴覚を誘発する技術の開発が求められていた。

 同志社大学音響ナビゲーション研究センターと慶應義塾大学の研究グループは、外耳から照射する赤外レーザー光を用いて、外科手術や遺伝子改変を必要とせずに聴覚を誘発する新しい非接触型刺激技術を開発した。本研究では、スナネズミを用いた行動実験を通じ、レーザー照射による感覚が「音」と同等の聴覚情報として動物の行動を確実に制御できることを世界で初めて証明した。本成果は、患者への身体的負担を最小限に抑える、次世代型の非接触型聴覚補助デバイス開発に向けた極めて重要な基礎技術となる。

 玉井研究員をはじめとする研究グループは、スナネズミを用いた実験で、鼓膜を通じた蝸牛に対する赤外レーザー照射により、遺伝子改変を行うことなく、覚醒動物(麻酔をかけていない状態)における聴覚知覚を行動レベルで誘発できることを初めて実証した。あらかじめ「音が聞こえたら水が飲める」ことを学習したスナネズミは、音を提示しなくてもレーザーを照射しただけで、水を期待して同じ行動を示したのである。このことは、スナネズミがレーザー刺激を実際の音として知覚していたことを示している。また、周囲に雑音があるとレーザー刺激への反応が弱まったことから、レーザー刺激は単なる光や熱への反応ではなく、実際の音と同じように脳で処理されていることが示された。さらに、音刺激による学習とレーザー刺激による学習の効率はほぼ等しく、レーザー刺激によって生じる「聞こえ」は、自然な音と同程度に明瞭である可能性が示唆された。

 本研究成果は、遺伝子改変を必要としない新しい光刺激技術の有効性を示すものであり、将来的には、より自然な音の知覚を可能にする次世代の光人工内耳や新たな難聴治療法の実現につながることが期待される。

 なお、本研究成果は「Optical induction of auditory perception via cochlear stimulation in Mongolian gerbils without genetic modification」の題目にて国際学術誌Elsevier出版のiScience誌に2026年6月30日付(UK時間)で公表された。

 

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