- ワタキューホールディングス株式会社 - https://www.watakyu.jp/ -

短信:新しい不活化エボラワクチン

→メディカルニュース今月の見出しページへもどる

 

新しい不活化エボラワクチン「iEvac-Z」の第I相臨床試験で安全性と免疫原性を確認

 

 厚生労働省によると、エボラ出血熱とはエボラウイルスによる致死率が最大90%に達する重篤な感染症であり、初期症状は発熱、頭痛、筋肉痛などで下痢、嘔吐、発疹などが出現、進行すると出血傾向、意識障害などの重篤な症状を示し死亡することがあるとされている。これまでに、コンゴ民主共和国やスーダン、コートジボワールなどアフリカを中心に繰り返し流行している。2026年もコンゴ民主共和国東部イツリ州を中心にアウトブレイクが発生し、ウガンダを含む周辺の国でも渡航者による感染例が報告されている。世界保健機関(WHO)は、コンゴ民主共和国およびウガンダにおけるこのエボラ出血熱の流行が「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」に該当すると2026年5月17日に宣言し、各国に対して監視と対応の強化を呼びかけている。

 現在承認されているエボラワクチンは、ウイルスベクターや生ウイルスを用いており、高い有効性を示す一方で、安全性には課題があり、より安全性の高いワクチンの開発が求められている。こうした課題を克服するため、大阪大学 微生物病研究所 渡辺登喜子教授、東京大学 国際高等研究所 新世代感染症センター 河岡義裕機構長らの研究グループは、エボラ出血熱に対する新規不活化ワクチン「iEvac-Z」の第I相臨床試験を実施し、その安全性と免疫原性をヒトで初めて確認した。この「iEvac-Z」は、エボラウイルスの増殖に必須なVP30遺伝子を欠損させた変異ウイルス(エボラΔVP30ウイルス)を基盤とする不活化全粒子ワクチンである。エボラΔVP30ウイルスは、VP30を発現する特殊な細胞の中でしか増殖できないため通常の環境やヒトの体内では増殖できず、バイオセーフティレベル2という比較的取り扱いやすい施設で製造することが可能である。さらに、増殖したウイルス粒子をβ-プロピオラクトンで処理することで感染性を完全に消失させる一方、糖タンパク質(GP)、核タンパク質(NP)、マトリックスタンパク質(VP40)など複数のウイルス抗原はそのまま保持されるように設計されている。

 本研究グループは2019年~2022年に、東京大学医科学研究所附属病院において、健康な成人男性を対象とするiEvac-Zの第I相臨床試験を実施した。これは国内で実施されたエボラワクチンの初めてのヒトへの投与であった。20~45歳の健常成人男性を対象に、低用量および高用量のワクチンを4週間間隔で2回筋肉内投与した。その結果、局所反応を中心とした軽度の副反応は認められたものの、ワクチン接種との関連が疑われる重篤な有害事象は確認されなかった。

 本研究は、安全性を重視した新しいエボラワクチンの実現可能性をヒトで初めて示した成果である。今後はアジュバント(ワクチンと同時に投与することで、抗原に対する免疫応答を増強する物質)製剤を用いた臨床開発を進めるとともに、実用化に向けた研究を推進する予定である。さらに、本ワクチンプラットフォームを活用した他のフィロウイルス(ヒトや霊長類に重篤で致死性の高い出血熱を引き起こす RNA ウイルス)ワクチンへの展開も期待される。

 本研究は2026年7月29日(米国東部夏時間)、米国科学誌「New England Journal of Medicine」(オンライン版)に公表された。

 

エボラ出血熱|厚生労働省

エボラ出血熱について|エボラ出血熱|東京都保健医療局

新しい不活化エボラワクチン「iEvac-Z」の第I相臨床試験で安全性と免疫原性を確認 | 東京大学