オーラルフレイルと内在的能力の関連を明らかに
~口腔機能への早期介入が心身能力の保持に寄与する可能性~
オーラルフレイルという考え方は、日本で生まれ、2014年に厚生労働省の調査事業で初めて提唱されたもので、口の機能低下、食べる機能の障がい、さらには心身の機能低下までつながる負の連鎖が生じてしまうことに対して警鐘を鳴らした概念である。オーラルフレイルは4つのレベルから構成され、レベル別に様々な制度などで対応されている。健康長寿を達成するためには、総合的な心身能力(内在的能力)の保持が重要であるとWHOによって提唱されているが、これまでに、オーラルフレイルなどの複合的な口腔保健指標と内在的能力との関連を検討した研究は限られていた。
東北大学大学院歯学研究科 加齢歯科学分野の小宮山貴将助教、服部佳功教授らの研究グループは、2024年5月から2025年10月の間に、秋田県および宮城県の11自治体で開催されたフレイル健診に参加した65歳以上の地域在住高齢者692名を対象として、オーラルフレイル、舌圧などのその他の口腔保健指標と内在的能力の関連を横断的に検討した。オーラルフレイルは、国際的な専門家らによって提案された指標(咀嚼能力、舌口唇運動機能、口腔乾燥、嚥下機能)と、本邦で広く用いられているOF-5(咀嚼能力、舌口唇運動機能、口腔乾燥、嚥下機能、現在歯数)の2つの指標を用いて評価した。内在的能力は先行研究に基づき、活力(体重減少、握力)、移動能力(4m歩行速度)、認知機能(基本チェックリスト:認知機能の3項目)、心の健康(基本チェックリスト:抑うつ傾向の5項目)、感覚(主観的な聴力低下、眼疾患の有無)の5つの領域で評価し、それぞれの領域に対応する能力の低下数を評価した。また、食事の質と閉じこもりの両者の関連に対する媒介効果、調整効果についても検討を行った。
その結果、オーラルフレイルの構成項目における機能低下が多いほど、内在的能力を構成する領域の低下も広範に認められることが明らかとなった。両者の関連には、閉じこもりが部分的に媒介することが示されたが、食事の質および閉じこもりによる調整効果は明らかにはならなかった。また、オーラルフレイルと内在的能力の各領域との関連を検討したところ、心の健康が他の領域よりも強く関連していることが示された。そして、個別の口腔保健指標では、舌口唇運動機能、舌圧、自己申告による嚥下機能と口腔乾燥において、内在的能力との関連が見られた。
本研究結果から、早期の口腔機能評価や適切な介入が、個人の心身能力の維持に重要であることが示唆され、フレイル対策の一環として一体的に運用することが期待される。また、健康的な口腔の生活習慣として、歯のブラッシングなどと共に、口腔機能のトレーニングを根付かせる重要性が示唆されている。今後は、本研究の横断的デザインによる限界を克服するため、オーラルフレイルなどの口腔保健指標と内在的能力の時間的関係を明らかにする縦断研究、および口腔機能トレーニングが内在的能力の維持・向上に与える効果を検討する介入研究が必要となる。
本研究成果は、2026年5月19日付で、The Journal of Nutrition, Health and Agingにオンライン公開された。また、同誌の特別版であるNutrition for Healthy Longevity: Focusing on Functional Capacities During Aging Handlingにも掲載される。
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