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短信:朝食欠乏と体重、筋肉量の関係

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朝食欠乏と体重、筋肉量の関係

 

 近年、日本をはじめとする先進国では朝食を摂らない若者が増加している。厚生労働省によると、日本国内での朝食欠食率は、平成11年以降、全体的に男女とも増加しており、特に男女とも20歳代で最も高く男性で34,3%、女性で22.0%となっている。さらに、20歳代の一人世帯に限った朝食の欠食率は男性の20歳代で65.5%、30歳代で41.4%に至っており、学生の朝食欠食も問題視されている。朝食を食べることで就寝中に使われたエネルギーや栄養素と午前中に使うためのエネルギーや栄養素を補充することができる。脳で使われるエネルギーはブドウ糖からのみ補充されるが、肝臓に蓄えることができるブドウ糖は、約12時間分しかないのだ。朝食を欠食すると、前日の夕食から昼食までおおよそ12時間以上供給がないことになってしまう。文部科学省によると、この朝食の摂取状況は学力や体力に相関するとされている。朝食欠食に関しては、古くから朝食を食べたほうが健康になるのか、食べない方が良いのかという「朝食論争」が続いてきた。特にダイエットに関して、朝食を食べるべきか否かについて多くの関心が寄せられてきた。

 これまでの数ある研究が、朝食習慣は健康に良いことを示しており、体重を抑える作用があると考えられてきたが、国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学大学院生命農学研究科の小田裕昭准教授らの研究グループは、朝食欠食が、体重を増加させてメタボリックシンドロームへつながる可能性を大きくするだけでなく、筋肉を萎縮させてロコモティブシンドロームやサルコペニア(加齢に伴い通常以上に筋肉の萎縮が起きる現象で、加齢性筋肉減弱症と呼ばれる)の危険性も増大させることを発見した。2018年、本研究グループは高脂肪食を食べさせた実験動物(ラット)を使い、朝食欠食が、体内時計の異常をきたした結果として、体重増加をもたらすことを遺伝子レベルで明らかにした。今回の研究では、マウスを用いて普通食を与えた場合でも、活動期の最初4時間を食べさせないようにして朝食欠食にさせた。その結果、普通食の場合でも、朝食欠食により脂肪組織重量が増加して体重増加が見られた。これは、体温や肝臓、脂肪組織での時計に異常が生じたためであることが判明した。さらに、朝食欠食によって筋肉重量の低下が起こることを始めて見出した。これは、筋肉の時計の異常によるものだと考えられている。これらの結果から、朝食欠食は、脂肪組織の増加による体重増加だけでなく筋肉の萎縮をももたらすことが明らかとなり、朝食はメタボリックシンドロームの予防やロコモティブシンドローム、サルコペニアの予防にも役に立つことが判明した。

 本研究成果は、2022年3月11日付イギリス科学雑誌「British Journal of Nutrition」オンライン版に掲載された。

 

朝食を食べないと、体重が増えるだけではなく、筋肉量も低下することを解明 – 名古屋大学研究成果情報

https://www.mext.go.jp/a_menu/shougai/katei/08060902/004.pdf

https://www.maff.go.jp/j/seisan/kakou/attach/pdf/youryou-2.pdf