◇「10月からカスタマーハラスメント対策が義務化 厚労省、医療業を対象とした「専用マニュアル」を整備」から読みとれるもの
・顧客等からの著しい迷惑行為では、「医療・福祉」(53.9%)が突出
・背景に「過労死等防止対策白書」が示す医療従事者の過重負担
・厚労省、ペイシェントハラスメント対策強化の動画をYoutubeで配信中
■10月から事業主はカスハラ対策を体系的に講じる義務
2026年10月1日、改正労働施策総合推進法が施行され、カスタマーハラスメント(以下、カスハラ)対策が全事業主に課される法的義務となった。これにより、事業主はカスハラ防止のため、以下の10項目の措置を必ず講じる義務があり、これは厚生労働省の防止指針に明記された法定義務となる。
① 事業主の方針の明確化・周知
② あらかじめ定めた対処内容の周知
③ 相談窓口の設置・周知
④ 相談窓口担当者の能力確保
⑤ 事実関係の迅速・正確な確認
⑥ 被害者への配慮措置
⑦ 再発防止措置
⑧ 悪質事案への対処方針の明確化
⑨ プライバシー保護
⑩ 不利益取扱いの禁止
厚労省は、同法の施行に先立ち、医療業を対象とした業種別モデル事業を開始し、医療機関向けの専用マニュアル整備を進めている。医療現場では、患者・家族による暴言、過度な要求、長時間の不当拘束などの迷惑行為が深刻化しており、職員の安全確保と医療提供体制の維持に向けた標準化が急務となっている。
背景には、同省が公表した「過労死等防止対策白書」が示す医療従事者の過重負担がある。長時間労働や夜間対応の常態化に加え、カスハラによる心理的負荷が職員の離職や医療の質低下を招く懸念が指摘されている。今回の法改正とモデル事業は、医療機関における労働環境改善と安全な医療提供体制の確保を両立させるための基盤整備として位置づけられる。(図3 令和8年10月1日からハラスメント対策が強化されます!)
■制度化の背景:顧客等からの迷惑行為の増加と医療現場の脆弱性
厚労省「職場のハラスメントに関する実態調査」(令和5年度)によれば、過去3年間に顧客等からの迷惑行為に関する相談があった企業は27.9%に達し、前回調査(令和2年度)から大幅に増加した。迷惑行為の内容は「継続的・執拗な言動」「威圧的な言動」「精神的攻撃」が中心であり、顧客等からの著しい迷惑行為では、「医療・福祉」(53.9%)と突出している。医療現場では、待ち時間、病状悪化、救急対応など正当な背景が存在する場合でも、暴言、威圧、長時間の居座り、不当要求が社会通念上許容される範囲を超えると、カスタマーハラスメント(カスハラ)に該当する。(図4 ハラスメントの発生状況①(企業調査)厚労省令和5年度「職場のハラスメントに関する実態調査」より)
(図5 過去3年間の顧客等からの著しい迷惑行為及び就活等セクハラの発生状況に関する業種別の特徴(企業調査)厚労省令和5年度「職場のハラスメントに関する実態調査」より)
医療機関は応招義務を負うため、対応の裁量が限定され、職員の心理的負荷は他業種より高い。特に外来・救急では、突発的な迷惑行為が医療安全に直結し、診療の中断や他患者への影響を生じさせるリスクが大きい。こうした状況は、医療従事者の精神的負荷を増幅する構造的要因となっており、離職や医療提供体制の不安定化につながる懸念が指摘されている。迷惑行為の増加傾向と医療現場の特性を踏まえれば、カスハラ対策の標準化と組織的対応体制の整備は、医療安全と職員の健康確保の観点から不可欠である。
■過労死等防止対策白書が示す「医療従事者の長時間労働と精神的負荷の高さ」
厚労省の過労死等防止対策白書では、医療従事者の長時間労働と精神的負荷の高さが繰り返し指摘されている。令和3年版「過労死等防止対策白書」によると、令和2年の週労働時間80時間以上の雇用者数は、「全業種」では、令和2年3月及び8月を除き、前年同月を下回ったが、「医療,福祉」では令和2年3~6月、9~11月で前年同月を上回った。その後、令和7年版過労死等防止対策白書では、令和6年の週労働時間80時間以上の雇用者数が「全業種」では前年同月比で減少した一方、「医療,福祉」では増加したことが示されている。白書は、医療・福祉は週80時間以上の労働者数が「前年同月を上回る」唯一の主要業種であると指摘。夜勤・当直・オンコールが常態化し、勤務間インターバルが確保されにくい。特に救急・外来領域では、患者対応の不確実性や突発的なクレーム対応が顕著なストレス要因となっており、カスタマーハラスメント(カスハラ)は過労死ラインを押し上げる要因として位置づけられている。
白書が示す主なポイントは以下のとおりである。 ①医療従事者の精神障害の労災認定件数は高止まりしている。 ②患者・家族対応が「業務外ストレス」として蓄積し、心理的負荷を増大させている。 ③長時間労働とカスハラが複合し、離職リスクを高めている。こうした状況を踏まえれば、カスハラ対策義務化は過労死防止の観点からも、医療現場における安全配慮義務を強化する政策的意味を持つ。医療従事者の負荷軽減と医療提供体制の持続性を確保するために、制度的対応が不可欠である。
過労死等防止対策推進法に基づく「過労死等防止のための対策に関する大綱」で、 過労死等が多発し、特に対策が必要とされる業種を「重点業種等」として指定している。令和7年版白書では、医療など8業種が該当する。
●重点業種(令和7年版)
1. 自動車運転従事者(運輸業)
2. 教職員
3. IT産業
4. 外食産業
5. 医療
6. 建設業
7. メディア業界
8. 芸術・芸能分野
■厚労省モデル事業:医療業向け「専用マニュアル」の狙い
厚労省は2024〜2026年度にかけて、業種別カスタマーハラスメント(カスハラ)対策支援事業を展開し、医療業向けに専用マニュアル(業種別版)を整備する方針を示している。一般事業主向け指針では十分に示しきれない、医療特有のリスクと法的制約を踏まえた実務基準を提示することが目的である。医療機関は応招義務を負い、診療拒否の要件や医療安全管理体制など制度的制約が大きく、迷惑行為への対応における裁量が限定される。このため、医療現場の実態に即した標準化された対応指針の整備が不可欠となっている。(図6 令和8年度業種別カスタマーハラスメント対策の取組支援)
専用マニュアルには、外来・病棟・救急・在宅における典型事例の体系化、複数名対応や警察通報基準を含む初動対応プロトコル、電子カルテとの連携を含む記録様式の標準化、相談窓口の設置・運用基準、応招義務との整合性を踏まえた診療継続の判断基準、職員のメンタルヘルス支援などが盛り込まれる予定である。これらは、医療現場で発生する迷惑行為への対応を組織的に標準化し、職員の安全確保と医療提供体制の維持を図るための基盤となる。
医療機関は、改正労働施策総合推進法に基づき、①事業主の方針の明確化、②相談体制の整備、③事後対応の実施、④悪質事案への対処方針、⑤ 迷惑行為の類型化、⑥ 初動対応の標準化、⑦ 記録の整備、⑧ 研修の実施、⑨ 周知・啓発、⑩ 体制整備の継続的改善など、指針で示された10項目の義務を履行する必要がある。専用マニュアルの整備は、これらの義務を実効性ある形で運用し、医療現場におけるカスハラ対策を制度的に支える中核的手段として位置づけられる。
■医療現場の暴力・ハラスメント対策のeラーニング動画教材をYouTube等で公開
既に厚労省は、医療現場における暴力・ハラスメント(いわゆるペイシェントハラスメント)対策の強化に向け、全12本のeラーニング動画教材を公式ホームページおよびYouTubeで公開している。これらは医療従事者が患者・家族からの迷惑行為への対応を体系的に学習できる一次情報として整備されたものであり、都道府県を通じて医療機関への周知が依頼されている。各コンテンツは約20分で、スタッフと管理者双方の視点から、迷惑行為の基礎知識、日頃の備え、発生時・発生後の対応、応招義務、使用者の安全配慮義務などを段階的に学べる構成となっている。
●厚生労働省ホームページ 「医療従事者の勤務環境の改善について」:「その他 医療現場における暴力・ハラスメント対策」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/quality/
教材には、迷惑行為禁止ポスターの活用、院内マニュアル整備、危険予兆の把握、複数名対応や警察通報基準、証拠収集・記録方法(写真・録音・電子カルテ連携)の留意点など、医療現場で求められる実務的要素が網羅されている。また、暴行・脅迫・不退去・名誉毀損・わいせつ行為など、行為類型別の具体的事例と対応の要点が示され、管理者向けには被害者ケア、二次被害防止、法的対応の判断材料も提供されている。
これらの教材は、医療機関が院内研修や個人学習に活用することで、迷惑行為への初動対応の標準化、職員の安全確保、医療安全の向上に資する基盤として位置づけられる。(図7 医療現場における暴力・ハラスメント対策【eラーニング動画教材】)

100%負けると言われた、我が国初のハラスメント裁判に挑んだ女性たちの物語、映画「ファーストボイス」(主演:綾瀬 はるか)、公開日は10月2日だった。10月からカスタマーハラスメント対策が義務化されたことと、公開日の関連性は決してないことはないのだろう。この原稿執筆段階で、筆者はまだ観ていないが、今10月号が更新されている頃には鑑賞後なのかもしれない。予告編を見る限り、当時のファッショントレンドは、当時としては最先端だったのだろうが、どこか懐かしさを覚える。昭和ファッションだ。
まだ観ていないので、映画についてはあまり触れることが出来ないので、前置きはこれくらいにさせて頂く。
今回のテーマは、10月からカスタマーハラスメント対策が義務化され、厚労省によって医療業を対象とした「専用マニュアル」が整備された、というのがテーマだ。
これまでカスタマーハラスメント、いわゆる「カスハラ」に、自分はいったいどれだけ直面してきただろうか?思い出してみる。
今でも鮮明に記憶しているのはこの3つだろうか。これはカスタマーハラスメントの定義に嵌るのだろうか。
逆に、もしかすると今ならたとえ顧客側であってもカスハラ扱いされてしまう可能性が高い自分の行為も思い出してみる。
商品については翌朝一番で自分で小売店まで届け、間に合ったが釈然としない数日が続いた。
言い方と程度の問題はあるのだろうが、別に当時筆者は土下座しろ、とか、声を荒げたこともなく、しかし相手から何らかの答えを聞くまで引き下がらなかった。という意味では筆者の相手をした担当も困られたことだろう。果たして筆者の行為は「迷惑行為」だったのか、それとも「否」か?(個人的には「否」であって欲しいな)
さて、読者諸氏におかれては、これまでカスタマーハラスメント、いわゆる「カスハラ」に「被害者側」、「(もしかしたら)加害者側」として、どれだけ直面されただろうか?
コメントを紹介したい。
○厚労相:中小企業のカスタマーハラスメント対策
9月29日の大臣記者会見において、上野厚生労働大臣は、中小企業のカスタマーハラスメント対策について、次のとおり述べた。
大臣は、まず一般論として、中小企業は大企業と比較して人事労務部門の体制が脆弱であり、カスタマーハラスメント対策に関する十分な準備が整っていない可能性があると認識しているとした。その上で、特に中小企業に対して、そのような観点から支援を行うことが重要であるとの考えを示した。
このため、厚生労働省としては、リーフレットの作成やポータルサイトにおける解説動画の発信等を通じて、周知啓発に取り組んでいるところである。また、都道府県労働局が企業向け説明会を開催しており、商工会や商工会議所等にも周知への協力を得ながら、全国でこれまで約900回の相談説明会を実施しているところである。その際には、個別相談にも対応している。
さらに、ハラスメント事案が発生した場合には、専門家が事業主や人事労務担当者等からの相談に応じ、速やかに事案を解決するための対応策を助言する事業を実施しているところである。
大臣は、引き続き、これらの取組を通じて、中小企業およびその従業員への支援に着実に取り組んでいく考えを示した。
確かに、相談説明会についてはニュースなどで目にした記憶がある。
その昔、三谷幸喜作品のドラマ「王様のレストラン」で伝説のギャルソン、千石 武(演:松本 幸四郎 現 松本 白鸚)の影響を受けたベテランのソムリエ、梶原 民夫(演:小野 武彦)が、レストランの中で
「お客様は神様なんだろ?俺にもうまいもんを食わせろ!愉しませてくれ!!」と大声を上げて怒鳴り散らす(厄介な)客にこう言った。
「私は先輩のソムリエに教わりました。お客様は皆、王様である、と」
「しかし、王様の中には腹を切られた者もいる、と」
「うぐっ」となって、店を去っていく客。
その後梶原に向かって千石さんがその毅然たる対応を褒めた後、「正しくは、『王様の中には首をはねられた者もいる』」です、と、若干の上から目線と嫌味口調で言う(指導する)。
こんなシーンだ。
特に接客業では、お客様は「神様」なのか、それとも「王様」なのか、現場対応においては常に悩んでいることだろう。
次はこんなコメントを。
○厚労省官僚:SNSによる誹謗中傷、社会通念上許容される範囲を超える場合はカスハラ
2026年10月施行の改正労働施策総合推進法では、カスタマーハラスメントの行為者を「顧客、取引の相手方、施設利用者その他、事業主の事業に関係を有する者」と規定している。これにより、迷惑行為の主体は来店者や利用者に限定されず、事業に一定の関係性を有する幅広い者が対象となる。7月10日の衆議院 内閣委員会で厚⽣労働省⼤⾂官房の⼤隈俊弥審議官(雇用環境、均等担当)は、SNSによる誹謗中傷についても、個別の事案ごとの判断にはなるものの、社会通念上許容される範囲を超え、労働者の就業環境を害する場合にはカスタマーハラスメントに該当し得るとの見解を示した。これにより、デジタル空間での迷惑行為も制度的に防止措置の対象となることが明確化され、企業はオンライン上の誹謗中傷への対応も労働者保護の観点から求められることとなった。
SNSか。筆者は見るだけなので、特に何も書かないので、少なくともデジタル空間においては筆者が加害者扱いされることはなさそうだ。
医療機関のコメントだ。
○医療機関経営層
【急性期病院・病院長】
「急性期医療においては、待ち時間や診療内容への不満を背景として、暴言、威圧的言動、執拗な要求が生じる事案が増加している。職員は応招義務の下で対応せざるを得ず、心理的負荷と医療安全リスクが同時に高まる構造が継続している。10月からの義務化および専用マニュアルの整備は、初動対応、複数名対応、記録の標準化を進める契機となるものであり、職員が安心して就業できる環境整備に大きく寄与するものであると考える。」
【中小病院・事務長】
「中小病院では、受付、看護、事務が少人数で運営されているため、迷惑行為が発生すると即座に業務が滞る構造となっている。若手職員ほど心理的負荷が大きく、離職につながるリスクが高いことが課題である。今回の義務化は、相談体制の整備および対応基準の明確化を進める絶好の機会である。専用マニュアルを活用し、職員が一人で抱え込まない体制を整備していく考えである。」
【HITO病院:ICTの活用による労働効率化と医療サービス向上】
愛媛県の社会医療法人石川記念会HITO病院は、スタッフ確保に課題感を持ち、柔軟な働き方の整備に取り組んできた。中でもICT活用によって生み出したシステ ムは他病院からの視察も相次ぐなど、医療界の常識を変える改革となっている。HITO病院も例に漏れず基本は対面か電話だった。「医師の指示や承認が必要な 仕事が多いため、手術や外来診察で医師が捕まらない限り仕事が始められず、スタッフの時間外労働につながりやすいという課題がありました。」と石川賀代理事長は語る。 チャットを導入したことで、急ぎ対応が必要な連絡には医師がすき間時間で返事を できるようになり、全体の作業効率が上がった。また、脳神経外科医は「なにより電話と比べてストレスが軽減されました。また、グループチャットの中では他の人の目があるのでハラスメントも起きにくい。若いスタッフにとっては受け入れやすいコミュニケーション方法なのではないかと思います。」と話す。HITO病院では、病棟内を複数のセルに分け、看護師やメディカルスタッフがチームとなって各セル付近に常駐してケアを行う仕組みを採用している。(厚労省「令和7年版 過労死等防止対策白書〔概要版〕【コラム】ICTの活用による労働効率化と医療サービス向上の取組事例 ~社会医療法人石川記念会HITO病院(愛媛県四国中央市)~」より)
先にも関連した内容があったが、筆者は約20年前、医療機関で受付業務に携わったことがある。どうしても女性が多い傾向にある現場であったが、突然怒鳴ってくる患者もいれば、とても感謝してくれる患者もいる。いろいろだ。時には筆者の顔がその人にとってとても身近だった(おそらく亡くなられた?)人と瓜二つだったのだろう。筆者の顔を見た途端、隣の連れの人と顔を合わせてうなずき合い、懐かしそうな目で筆者を見て、そして二人で涙ぐまれる、なんてこともあった。
「カスハラ対策」とは言え、特に受付業務では、顧客対応に若干難のあるスタッフもいないわけではない。筆者の在籍していた医療機関の受付にも、身内から見ていても、そりゃあ患者さんも嫌な気持ちになるわなぁ、と同情してしまいたくなるような女性スタッフもおり、遠回しに気を付けるようには促すのだが、忙しくなってしまうと「地」とでもいおうか、ついツンケンした態度を患者にとってしまう。ご本人としてもそれは意識しており、おそらくそんな自分を認識してはおられた。でも直らない。彼女に対する投書がコンスタントに来ていたと記憶している。
次は介護施設。
○介護施設経営層
【介護老人保健施設(老健)・事務長】
「老健においては、在宅復帰支援の過程で家族との調整が多く、説明の行き違いを契機として強い口調のクレームが生じる事案がみられる。リハビリ内容や退所時期への不満が、特定職員への攻撃的な言動につながるケースも少なくない。
今回の義務化により、相談体制の整備および対応基準の明確化が進展することで、職員の心理的負担が軽減されると期待している。」
【有料老人ホーム・運営責任者】
「有料老人ホームにおいては、サービス水準への期待が高く、些細な事案であっても感情的な要求が生じる事案がみられる。夜間帯の少人数体制では、迷惑行為が発生すると対応が困難となり、職員の離職につながるリスクが高いことが課題である。今回の義務化を受け、相談窓口の設置、対応手順の標準化、警察との連携基準の明確化を進めることで、職員が働き続けられる環境づくりを強化する考えである。」
【サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)・管理者】
「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は、生活支援と介護サービスが混在するため、職員への要求が多岐にわたり、業務範囲の境界が曖昧になりやすい特徴がある。その結果、「できること」と「できないこと」の線引きが不十分なまま迷惑行為が発生するケースがみられる。今回の義務化を契機として、方針策定および説明の標準化を進め、職員が迷わず対応できる体制を整備していく考えである。」
さもありなん。医療機関でのクレームも決して少なくない時代に突入しているが、それでも医療機関で、医師に対して面と向かってクレームをつける患者はなかなかいない。医師以外の人がクレームにあっていることが圧倒的に多い。
対して介護施設。医師と患者が合う機会も殆どない。多くは施設長とか、介護スタッフとの遣り取りだ。そうなると、往々にして言う側の権利意識の方が勝ってくる場合が多いだろうから、今回の義務化は歓迎すべきことなのかもしれない。
保育所。
○保育施設経営層
【認可保育所・園長】
「保育現場においては、送迎時間や園内での出来事、職員の対応に関する誤解等を背景として、保護者から強い言動や過度な要求が生じる事案が増加している。特に、育児不安が強い保護者ほど、職員個人への攻撃的な言動につながる傾向があることが実情である。10月からの義務化を契機として、専用マニュアルを踏まえた初動対応、複数名対応、記録の標準化を進め、職員が安心して働ける環境整備を強化していく考えである。」
【認定こども園・副園長】
「こども園は教育と保育が一体となるため、保護者の期待が高く、些細な事案であっても感情的な要求が生じる事案がみられる。園内事故や子どもの行動への指摘が、特定職員への強い叱責につながるケースも少なくない。今回の義務化により、相談体制の整備および対応基準の明確化が進展することで、職員の心理的負担が軽減されると期待している。」
【小規模保育事業・管理者】
「小規模保育では職員数が限られているため、迷惑行為が発生すると対応が困難となり、職員の離職につながるリスクが高いことが課題である。保護者との距離が近い分、要求がエスカレートしやすい構造も存在する。今回の義務化を受け、相談窓口の設置、対応手順の標準化、複数名対応の体制整備を進めることで、職員が働き続けられる環境づくりを強化する考えである。」
保育所も、保育士にとっては結構ストレスの多い職場である。子どもたちは可愛い(だけではないが)のだが、子ども同士のトラブル、傷、転んで頭を打った、何かを口にしてしまった、おむつの中がかぶれている、どれだけ気を付けていても日々いろいろ起きてしまう。それらを親が迎えに来た際(似たような時間帯)に、分け隔てなく、公平に、正しく伝え、理解を得、そしてその日のトラブルを後日に残さぬようにする…。そういう日々の連続だ。心中お察し申し上げたい。こと、保育以外に関する文字化、定義づけ、等については結構苦手な方が多いのも保育施設に見られる傾向だ。早いうちに施設の考え方が明確化されることを願いたい。
調剤薬局はどうか。
○調剤薬局経営層
「薬局は患者との距離が近く、相談業務が多い分、感情的な要求や過度なクレームが発生しやすい職場である。特に、疑義照会や薬剤変更の説明に対する誤解を契機として、薬剤師個人への攻撃的な言動が生じる事案もみられる。今回の義務化は、現場の安全確保にとって大きな前進である。厚生労働省の専用マニュアルを活用し、対応基準を明確化することで、職員の心理的負担が軽減されると期待している。」
そうなんですよね~。患者は医師には直接不満を言わないことが多く、医療機関では患者であった人が、調剤薬局に行った瞬間に「客」の立場になる、というのがニュアンスとしては近いだろうか。とにかく、医療機関で芽生えにくい権利意識が、調剤薬局に行くと芽生えることに違和感を覚えない。
今後、OTC類似薬の自己負担追加について患者と直接やりとりが多くなることも予想される調剤薬局。大手の企業であればあるほど、ことカスハラ対策における準備は万端だろう。
医師のコメントだ。
○医師のコメント
【勤務医】
中年女性の患者から交際を迫られた。当然断ったが、その後ストーカー化し、待ち伏せや病院へのプレゼント攻撃が始まった。
【開業医】
軽度認知症患者さんの処置中に突然抵抗され、げんこつで殴られて眼鏡を壊された。
「かかりつけ医(予約制)の待ち時間が長いから」と当院を受診した患者。受付の時点で「当院も予約優先のため待ち時間が長くなります」と説明して了承を得ていたにもかかわらず、結局「待てない」と腹を立て、SNSで低評価の口コミを投稿された。
ストーカー。殴られる。SNS低評価口コミ。
SNS以外はクレームというわけではないのだろうが、医師には医師で困る場面もあるということか。
看護師のコメントだ。
○看護師のコメント
【院内】
「こんなに待たせるなんてあり得ない」「看護師のくせに分からないのか」と怒鳴られる事案がみられる。説明しても理解が得られず、病棟で長時間詰め寄られる場合には、職員の心理的負荷が極めて高まり、心が折れそうになる状況が生じている。
「職員間では、先輩が新人に対し「こんなこともできないのか」と繰り返し叱責し、申し送りで意図的に情報を伝えないなどの陰湿なモラハラが発生する。」
【訪問系】
単独訪問においては安全リスクが低く、暴言や威圧的な態度を取られる事案がみられる。周囲に誰もおらず助けを呼べない状況で、危険行為が発生した場合でも、直ちに退避できない構造が存在し、職員の心理的負荷は極めて大きい。「もっと頻回に来い」「病院と同じ処置をしろ」と強い要求を受ける事案がみられる。医学的に実施できない旨を説明しても理解が得られず、怒鳴られたり、長時間詰め寄られる状況が生じる場合がある。
「陰湿なモラハラ」は、是非とも院内での解決する仕組みを構築していただきたい。
「待ち時間」というのは、待つ身にとっても、待たせる側にとっても、実に問題だ。
訪問系においては、ケアマネージャーが帰らぬ人となってしまうという、痛ましい事件があったのは記憶に新しいが、厚労省の推奨する「これからは在宅」を、働く側の安心も含めて実現しなければならないが、果たしてどうなるか。
スタッフ系の方々のコメントを列記したい。
○医療クラーク業務スタッフ
医療クラークは受付・文書作成・診察補助など患者と接する機会が多く、セクハラの標的になりやすい。外来では、受付で「若いね、彼氏いるの?」「その制服似合ってるね」と私的な質問を繰り返され、身体を覗き込むように身を乗り出されることがある。
○介護スタッフ
【施設系】
「『もっと頻回に見てほしい』『食事を全部食べさせて』など、職員数では対応できない要求をされることがあります。説明しても『それが仕事でしょう』と言われ、精神的にきついです。」
「排泄介助の際に『触るな』『早くしろ』と怒鳴られることがあります。中には手を振り払われて腕を打撲した職員もいて、怖さが残ります。」
【訪問系】
「ゴミ屋敷に近い環境で掃除を求められる事案がみられる。虫が発生する住宅もあり、マスクと手袋を着用しても対応が困難な状況である。生活援助の範囲を説明しても『全部やって』と求められる場合があり、職員が業務の限界を感じる状況が生じている。」
「家族が介護疲れにより疲弊している場合、怒りの矛先が職員に向く事案がみられる。『もっとしっかり見てよ』『あなたが来るときだけ調子が悪い』などの理不尽な言動を受けることで、職員の心理的負荷が高まり、心が折れそうになる状況が生じている。」
○保育士
「『もっと丁寧に見てほしい』『うちの子だけ特別にしてほしい』など、保護者からの個別要求が増加している。説明しても納得が得られず、降園時に20〜30分にわたり詰め寄られる事案もみられ、その結果、他の子どもの対応が遅延する状況が生じている。」
これらのコメントを見るにつけ、「自分はこうはなりたくない」「自分はこんなことしない、やっていない」と、当然思ってしまうのだが、介護や何らかのサービスを受ける側には、何らかの心理的なバイアスがかかっている。つまり健常の平穏時ではない。従って、多少「我が儘」と捉えられる心理状態や、態度や言動に現れてしまうことも少なくないのだろう。そういった心理を、医療福祉系のスタッフはある程度理解した上で業務に従事して下さっているのだ。
だとしても言い知れぬ徒労感が拭えない…。
最後に、こんなコメントだ。
○患者(または家族)
「『もっと頻回に来てほしい』『すぐに対応してほしい』と無理なお願いをしてしまいました。人手が限られていることを理解できていませんでした。」
おそらく健常や冷静である時は、大抵の方がこのように思うことが出来るのだろう。
ルールで縛ることなく、お互いの思いやりの心でそれが実現できれば最高なのだが…。
寂しい限りだが、世界中から道徳観において世界中からリスペクトを浴びている日本も、逸脱者に対するルールが必要な国となったということか。
<ワタキューメディカルニュース事務局>
| (※4)… | これについては筆者が営業時代に似たようなことを行ってしまい、問屋のマネージャーに、それはもうこっっっぴどく叱られた。いや、怒鳴りあげられた。当然真摯に謝罪はしたものの、まだまだ若かった自分は、「そちらも売上が増えたんだからいいでしょう?」くらいに内心は思っていた節もあり、叱られたがどこか納得していなかったかもしれない。しかし、数年後に立場代わって同じことをされ、どれだけ怒りが込み上げてきたか、ということを考えると、反省することしきりであり、そのお叱りを受けたことを、今となってはとても感謝している。 |
<筆者>




