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No.619 病院長は、「医師不足地域の勤務経験者」に。厚労省・医師従事者検討会が第2次取りまとめ。

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医師少数区域勤務医師の認定制度を創設、病院長に医師不足地域の勤務経験者

 厚生労働省の「医療従事者の需給に関する検討会」と下部組織の「医師需給分科会」は12月18日、「第2次中間取りまとめ」を行い、医師偏在対策として、医師少数区域に勤務する医師の認定制度創設とインセンティブ付与、認定医師に対する一定の医療機関(地域医療支援病院の一部)の管理者としての評価など提案した。その中で、一定規模の病院で院長になるための基準の1つに、医師不足地域での勤務経験を有することを求めた。医療法や医師法の改正が必要となることから、厚労省は、12月22日の社会保障審議会・医療部会に報告の上、2018年の通常国会にこれらの改正案を提出したい考えだ。

 

  「第2次中間取りまとめ」の医師偏在対策は、主に、(1)勤務環境の整備やインセンティブ付与による「自発的な医師不足地域での勤務の推進」、(2)都道府県の権限強化などによる「医師養成過程を通じた地域定着の推進」―に分けられる。

 (1)のインセンティブ付与については、「医師不足地域にある医療機関で一定期間勤務した医師」を厚生労働大臣が認定する制度(認定医師制度)を設けた上で、「認定医師を雇用して、質の高いプライマリ・ケアを提供させている」医療機関などに、税制優遇や補助金のほか、「診療報酬による対応」など経済的インセンティブを与える方向性も盛り込まれている。この「医師不足地域での勤務の推進」に向けた施策は、医師不足地域で勤務することの魅力を高めるもので、医師の自発的な勤務を促すのが狙い。

 

 「医師不足地域での勤務の推進」に向けた施策は「勤務環境の整備」と「インセンティブ付与」の2つの対策があり、前者の勤務環境の整備では、医師不足地域で働く際の不安の払拭を目指す。具体的には、医師複数人によるグループ勤務や交代勤務を推進し、医師不足地域で働く医師が「働き詰め」になることを防ぐ。また、専門外の症例に対応できるように、地域の中核病院が助言や患者受け入れなどの後方支援を行うこと、医師不足地域で働く前や働いている間にプライマリ・ケアの研修・指導を受けられる体制を確保する方策もとられる。

 

 「医師不足地域にある医療機関で一定期間勤務した医師」について、厚生労働大臣が認定する制度(認定医師制度)の創設では、医師がメリットを感じられるように、①認定医師であることを広告可能事項に追加、②医師派遣を支える医療機関等に経済的インセンティブを付与、③一定の医療機関の管理者として認定医師を評価する(図1 医師少数区域に勤務した経験を有する医師への評価)。

 

 

医師養成過程を通じた地域定着、地域枠等通じ定着を促す仕組み

 (2)の「医師養成過程を通じた地域定着の推進」は、次のような傾向を踏まえ対策を講じられるように、都道府県の権限を強める。厚労省が臨床研修修了者を対象に行ったアンケート調査では、①地域枠の入学者と地域枠以外の地元出身者(大学と出身地が同じ都道府県)は、臨床研修修了後に出身地で勤務する割合が高い(地域枠80%、地元出身者78%)(図2 地域枠と地域枠以外の地元出身者の定着割合)。

 

 

 ②出身地の大学に進学し、出身地で臨床研修を行った場合、臨床研修終了後に出身地で勤務する割合が最も高い(90%)。出身地以外の大学に進学した場合であっても、臨床研修を出身地で実施した場合、臨床研修修了後に出身地の都道府県で勤務する割合が高い(79%)-傾向がみられた(図3 出身都道府県で臨床研修を行ったときの定着割合)。

 

 

 ①のデータからは、地域枠や地元出身者枠を設けると、医師の定着率が高くなると考えられる。そこで都道府県が、医学部を持つ大学に対して、地元出身者を対象とする入学枠を設定するよう要請できる制度を設ける。②のデータからは、大学医学部を卒業した研修医が、初期研修を出身地で受けると、定着率が高くなると考えられる。そこで、研修医と臨床研修病院とのマッチングについて、地域枠などの研修医は別枠で選考することも可能にし、「研修医が出身地での研修を希望したが、選考の結果、別の地域にある臨床研修病院で研修を受ける」ことを防ぐことにする。

 

 さらに、臨床研修病院の指定・定員設定権限を、都道府県に移管。また、都道府県の医療計画の中で、3か年の「医師確保計画」を策定する仕組みを創設する。都道府県では現在、「地域医療対策」としても医師確保対策を定めているが、「医師確保計画」の中に組み込む。

関係者のコメント

 

<片峰医師需給分科会座長:「最低限の調整制度を導入することで合意した」>

 医師需給分科会座長の片峰 茂・長崎大学前学長は12月18日の会合で、「これまでの医師の自由意志を尊重した医師偏在対策から一歩を踏み出し、地域医療に携わる医師(認定医師)へのインセンティブを講じるとともに、地域の医師配置に関する都道府県の権限を強化するなど新たな制度的枠組みを提案した」とした上で、「社会システムとして最低限の調整制度を導入することで合意が得られた」と盛り込んだ『座長談話』を出した。

 

<邉見全自病会長:「国費で養成した医師が田舎の人に医療を提供しない状態が続く」>

 全国自治体病院協議会、全国厚生農業協同組合連合会、全国国民健康保険診療施設協議会、日本慢性期医療協会、地域包括ケア病棟協会の5団体から構成される「地域医療を守る病院協議会」は12月20日、記者会見を行い、邉見公雄・全国自治体病院協議会会長は、「2016年5月の第1次中間取りまとめより後退している。1歩進んで2歩下がった気がする。いつ終着駅にたどり着くのか」との懸念を示した。同氏は、全自病などが求めてきた、医師不足地域での勤務実績を医療機関の管理者要件とすることが、「第2次中間取りまとめ」では要件ではなく「評価」とし、地域医療支援病院の一部とするなど規制色が弱い形になったことについて「地域医療支援病院の一部では、ほとんどゼロで、誤差の範囲だ」と指摘。「国費を使って養成した医師が私益のために働き、田舎の人に医療を提供しない状態がずっと続いている」と批判した。

事務局のひとりごと

 

 新たな年を迎え、本年もワタキューメディカルニュースをよろしくお願いします。

 

 今年は戌(いぬ)年。新春早々のスパイアクシヨン映画では、さすがは戌年である。映画の中で重要なキーを握っていたのが犬であった(※1)。戌年がどんな年であるか、色々な経営者や経済団体のあいさつ文をみて、ご確認いただきたい。「人事を尽くして天命を待つ」気持ちで何事にも臨みたいものだ。

 

 以前、このWMNで日本の医療制度の特徴として、3つ挙げるなら、「国民皆保険」、「現物給付」、「フリーアクセス」というコメントをひとりごとに書いたが、もう一つ、忘れてならないものに「自由開業医制」があった。

 我が国においては、日本国憲法で保障されている国民の権利がまず念頭に置かれなければならない、というのが、制度を守り、立案する官僚の考え方の根底にある。

 であるので、報道などでも、例えば欧州などの制度を例に挙げて診療科の偏在や、医師の地域偏在問題を、ルールで統制管理している事例をあげつつ、世論に問いかけるのだが、医師も国民であり、職業選択の自由(すでに医師を選択されているわけだが)、働く場所を選べる自由も保障されている、というのが前提であるので、今回のテーマにあるような、「インセンティブ(人参:本当にこれが人参なのか?とは思わないでもないが)」によって医師不足問題を解決の方向に導こうとするものであるらしい。本文中にもあるように、あくまで「医師の『自発的な』勤務を促す」のが狙いである。この「自発的」というのが最大のポイントだろう。

 

 昨年、働き手不足やワークライフバランスの機運の高まりを背景として、「働き方改革」という言葉と、それに経済界が本腰を入れる記事が目立った(※2)。「ブラック」という表現も、目にしない日はない筆者の理解では、「ブラック」の意味するものとは、「強制」なのだろうと考える。従って、自発的であれば強制ではないので、憲法に照らしても人権を侵害していないので間違いにはならない、という理屈なのだろう。

 

 本文の再掲となるが、片峰医師需給分科会座長の座長談話。

 「これまでの医師の自由意志を尊重した医師偏在対策から一歩を踏み出し、地域医療に携わる医師(認定医師)へのインセンティブを講じるとともに、地域の医師配置に関する都道府県の権限を強化するなど新たな制度的枠組みを提案した」とした上で、「社会システムとして最低限の調整制度を導入することで合意が得られた」。

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 日本においては、この合意が形成されるのでも「大きな第一歩」なのである。

厚労省のコメントである。

 

武田医政局長:「医師偏在対策についての大きな第一歩」

 武田俊彦厚労省医政局長は、12月18日の「医療従事者の需給に関する検討会」と「医師需給分科会」の合同会議で、今回の第2次中間取りまとめ案について、「医師偏在対策についての大きな第一歩」と述べ、関連法案提出を目指すほか、2018年度以降は2020年度以降の医学部定員について議論すると説明した。

 

厚労省医事課:「医療提供体制を考える上で重要な圏域である2次医療圏単位で医師偏在対策を考えていくことが基本」

 第2次中間取りまとめ案をまとめた「医療従事者の需給に関する検討会」と「医師需給分科会」の合同会議で、厚労省医事課の担当者は、「医療提供体制を考える上で重要な圏域である2次医療圏単位で医師偏在対策を考えていくことが基本であり、例えば医学部定員の調整など、都道府県を越える課題については、国も検討していく」と説明。「認定医師」についても、「強制的に医師少数区域に行かされるような仕組みにはしていない」と説明、税制、診療報酬、補助金などの経済的なインセンティブを付ける方向で検討していくとした。

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 お役人においては、この枠組みをつくるだけでも相当なご苦労があったことだろう。本音としてはもっと踏み込んでいきたいところなのだろうが・・・

 開業医からのコメントを紹介したい。

 

○離島の開業医:「僻地や離島の生活に馴染めず辞める医師が多い」

 現在、離島で開業しているが、地元の国保診療所に勤務する医師が生活面から溶け込めず、相次いで辞めた。へき地勤務を無理強いしてもどうかと思う。しかし、自治医大の卒業生だけに押しつけるというのは、納得がいかない

 

○へき地医療を経験した開業医:「地元枠入学者が地元に残らないのなら、彼らを全員医師免許停止とすればいい」

 何のために地方の医大に地元枠があるのか。地元枠入学者が地元に残らないのなら、彼らを全員医師免許停止とすればいい。強制的だ、人権迫害だと論じる人々の感覚が信じられない。

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 勤務医側からはこんなコメントが寄せられた。

 

○中国地方の山間地の市立病院長:「医師不足地域の対策に本腰を入れてくれるようになったと期待」

 医師の確保は、地域の公的病院長にとって最大の課題。我々の県では、同じ大学医学部出身のへき地病院長同士が集まりコンソーシアムを作り、共同で出身大学に医師派遣をお願いするとともに、不足する診療科をカバーするため医師の交流、若手・中堅医師の勤務環境向上など施策を共同で進めてきた。ようやく厚労省も医師不足地域の対策に本腰を入れてくれるようになったと期待している。

 

○診療科部長級医師:「病院長に医師不足地域の勤務経験者は、絶対必要条件」

 出身大学の医局から地方の病院に派遣された同期の多くが、出身医局に戻ることばかり考えていた。特に子供の教育のことで頭が一杯で、3、4年も経たないうちに戻り、残ったのは私一人だけ。昔は、教授選に敗れて地方の病院長になるパターンが多かったが、厚労省の検討会が示した「病院長に医師不足地域の勤務経験者」という考えは、絶対必要条件だ。多少、私の僻み根性もあるかもしれないが…。

 

○診療科部長級医師:「腰掛け程度でへき地の病院に勤務して欲しくない」

 厚労省の検討会が示した制度では、若手医師に対して、「医学」ではなく、地域に腰を据えて、しっかりへき地の「医療」「生活」を学んで欲しい。そもそも高度な医療技術を学びたいという手技系希望の先生には、腰掛け程度の気持ちでへき地の病院に来て欲しくない。

 

○臨床研修医:「へき地の勤務は、2年目の初期研修医が望ましい」

 現状では国家試験で広く浅く知識がある国家試験後の研修医の方がまだましだ。できれば全科当直体制、必要な診療科のある病院、特に僻地であればマイナー内科の神経内科、糖尿病内科なども高齢者対象にも必要となると思われる。ある程度の経験は必要なため、へき地の勤務は2年目の初期研修医が望ましい。

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 役所が声を上げずとも(ルール化されなくても)、医師不足地域の問題は真剣に考えておられる医師がかなりおられ、ちゃんと声を上げてくれる、その上で合意形成がなされ、強制ではないが自発的で、本来あってほしい(あるべき)運用の姿になっていくそうなって欲しい、これがお役人の思っているところなのだろう。

 

 これから医師になろうとする方、医師を子に持つ親のコメントもいただいた。

 

○地域枠の医学生:「医師不足地域の勤務は当然だと思う」

 地域枠で地方の国立大学医学部入学した。国より費用を出してもらい医師を目指す身であり、医師不足地域の勤務は当然だと思っている。

 

○医学生を持つ開業医:「子を持つ親にとっては悩ましい問題だ」

 自分の経験から、ある程度自分の判断で診療ができるようになった40歳代に一定の期間僻地医療に携われば良いと思うが、子供の教育の問題があり、なかなか思うようにはいかないかもしれない。そうすると、子供がまだ小さい時期の30歳代に行くのが良いのかもしれない。いずれにせよ、子を持つ親にとっては悩ましい問題だ。

 

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 昨年12月、ある大学の医療関係の講義があり、聴講させていただいた。その時のテーマが「医療政策の方向性について」であったのだが、講師は元官僚の方で、明快な講義がなされた後(90分)、質疑応答が行われ、非常に忌憚のない質問、回答が飛び交った(こちらも90分)。

 「・・・ご質問のように、日本では規制が強いとか、色々なご意見があるだろう。診療報酬制度は「公共の宝」。皆で大切に使いましょう、というのが根底にあるのだが、ルールが決まれば必ず抜け道を抜けようとする者が出てくる。そういった者がいる以上、規制が強化されてしまうのは致し方ないところだ。が、日本も世界の流れには逆らうことは出来ないこれまでの政策は、例えばドラック・ラグの問題を取ってみても、皆が良い、と思う方向に確実に一歩ずつ前進している時間はかかるかもしれないが、必ずや皆が(こうあるべきだと)思う時代がやってくる。逆は決してない(悪い方向に行くことはない)。それこそが日本の良さであり、官僚も常に良い方向を目指し、それを信じて取り組んでいる、ということを是非ご理解いただきたい。」

 講師が最後に述べられた言葉がとても印象的であった

 

 医師の偏在問題と、都市圏への人口集中問題と、子育て、働き方、ワークライフバランス、様々な課題を抱えるわが国だが、これまでの日本の諸先輩が作り上げてきた公共の宝」を少しでも持続させるために国民一人ひとりが何をなすべきか、そんなことを考えさせられたテーマであった。

<ワタキューメディカルニュース事務局>

 

(※1)・・・「キングスマン2」、1/5封切。1作目が大人気のため、2作目が登場(監督はマシュー・ボーン)。因みに、1作目でも犬は重要な役割を果たしていた。英国の映画なので正直なところ、戌年だから、というのは全く関係がなさそうだ。ただ、日本での上映についてはそういった意識があったかもしれないが、それは映画関係者のみぞ知るところだろう。

 前作では主役の一人のエージェントを演じるコリン・ファースが、とても格好良かった(不運にも前作で死亡)。ところが死亡していたにもかかわらず、2作目で復活(復活した理由は映画の一つのキモ)。コリン・ファースのファンとしては嬉しい限りであったが、なんというご都合主義であろうか(さらに残念なことにコリン・ファース演じるエージェント、「ガラハッド」には、前回のような格好良さが今回はなかった・・・と感じた)。めまぐるしいアクション、時には唐突に、時に残酷に次々と飛び交う死体(敵も味方も、時に主要登場人物でさえ)。しばらくハンバーガーが食べられそうにない、という方も結構おられることだろう。アメリカを小バカにしたような設定や世界観、敵のスケール等、前作に比較して雑な部分があったような気はするが、といっても、面白さという点においては、私見ではあるが2作目のジンクスは破った、といって良いのではないだろうか?

<筆者>

 

(※2)・・・教育界もその機運が高まった。どうやら何にでも「ブラック」という言葉を付けると、「働き方改革」につながるというような図式を定着させるような機運が高まってきたのだろうか?「ブラック部活」という言葉も出てきた。機会があれば、こちらもひとりごちたくなるテーマだ。

<WMN事務局>