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No.678 有床診療所の減少スピードが続き、4月には6500施設を割る可能性

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■有床診療所は、2019年から2020年の1年間で275施設減少

 通院治療、必要があれば入院治療ができる病床数19床以下の小規模な医療施設である有床診療所の減少スピードが止まらない。厚生労働省が5月8日公表した「医療施設動態調査(2020年2月末概数)」では、有床診療所の減少スピードは依然として続いており、既に2020年4月末には施設数が6500を割っている可能性が高いこと、また2021年5月にはベッド数が8万5000床を切る可能性が高まっていることが明らかになった。

 

 厚労省は毎月末における病院・診療所の設置数および病床数をまとめた「医療施設動態調査」を公表している。今年2020年2月末の全国の医療施設は17万9212施設で、前月末から5施設増加した。内訳は、病院が8282施設(1施設増)、一般診療所が10万2611施設(12施設増)、歯科診療所が6万8319施設(8施設減)。病院種類別に見ると、一般病院7228施設(前月から増減なし)、精神科病院1054施設(同1施設増加)—などという状況。一般病院のうち、「療養病床を有する病院」は3649施設で前月末から7施設減少、「地域医療支援病院」は619施設で前月末から増減はない(図4 医療施設動態調査(令和2年2月末概数))。

 

 

 このうち、地域支援病院については、昨年8月に厚労省の「特定機能病院及び地域医療支援病院のあり方に関する検討会」で承認要件の見直しの方向となり、現在の「紹介患者への医療提供(かかりつけ医への逆紹介も含む)」「医療機器の共同利用」「救急医療の提供」「地域の医療従事者への研修の実施」の要件に、新たに「地域(都道府県)の判断で、医師の少ない地域への医師派遣実施などのプラスアルファ要件を追加(厳格化)できること」が加わることになり、医療法改正案が国会に上程されることになっている。しかし、新型コロナウイルス感染症の影響で遅れが出ている。

 また、2020年度診療報酬改定を巡る中医協の論議で、「紹介なし外来患者からの特別負担徴収」を一般病床200床以上の地域医療支援病院に拡大することが決まった。このため、今後、地域支援病院の整備数に影響が出ることが予想される一方で、新型コロナウイルス感染症拡大がどう影響するかも見逃せない。

 

 一般診療所の動向は、医科診療所は10万2611施設で、1月末から12施設増加。このうち、有床診療所は1月末から21施設減少し、6531施設となった一方で、無床の医科診療所は33施設増加9万6080施設になった。一般診療所についても、新型コロナウイルス感染症の影響で、感染を避けるために受診を控える患者が増加しているといわれ、受診の控えが経営の悪化につながり、今後、診療所の施設数の動向に影響する可能性もある。

 

 一般診療所10万2611施設の内訳は、有床診療所が6531施設、無床診療所9万6080施設だが、気になるのが有床診療所数の動向だ。2年前の2018年2月末には7166施設だったのが、1年前の2019年2月末には6806施設と、2018年から2019年の1年間で360施設の減少、さらに2019年から2020年の1年間で275施設と減少している。

 2019年2月末から2020年2月末の1年間では、2019年2月末から3月末が32施設減、3月末から4月末が44施設減、4月末から5月末が24施設減、5月末から6月末が9施設減、6月末から7月末が16施設減、7月末から8月末が19施設減、8月末から9月末が18施設減、9月末から10月末が25施設減、10月末から11月末が19施設減、11月末から12月末が19施設減、2019年12月末から2020年1月末が29施設減、2020年1月末から2月末が21施設減の6531施設-と、1カ月当たり23施設弱のペースで減少が続いている。このままのペースで減少すると仮定すれば、今年2020年4月末には6500施設を割る計算となるが、既に現時点で6500施設を切っている可能性が高い。

 

■2018年度・2020年度診療報酬で有床診療所の経営をサポートしているが

 また、2020年2月末の有床診療所の病床数は、2020年1月末から237床減少し、8万9389床。2年前の2018年2月には9万7731床、1年前の2019年2月には9万3069床と、2018年2月末から2019年2月末までの1年間で4662床減少、2019年2月末から2020年2月末までの1年間で3680床減少した。さらにこの1年間では1カ月当たり306床強のペースで減少が続いている。このままのペースで病床が減少すると、来年2021年5月末には8万5000床を切る可能性が出ており、小規模入院医療施設を巡る経営環境の悪化を反映してか、有床診療所のさらなる減少が懸念される。

 

 経営環境が悪化している有床診療所に対して、厚労省は介護報酬と同時改定となった2018年度診療報酬改定で、有床診療所を「専門特化型」「地域包括ケア型」の2類型に分け、後者の「地域包括ケア型」について、「過疎地などにおける入院医療の重要な支え手(地域包括ケアシステムの重要な担い手)であるものの、経営が厳しく、存続が困難」といった課題に直面していることを重視し、有床診療所の経営をサポートするために、要介護者の受け入れを「介護連携加算」で評価するなどの報酬見直しを行った。

 さらに、2020年度診療報酬改定で、「有床診療所が地域において担う役割を踏まえ、病院からの早期退院患者の在宅・介護施設への受け渡し機能や、終末期医療を担う機能等を更に推進する観点」から、①急性期病棟からの転棟患者受け入れを評価する「有床診療所一般病床初期加算」について、点数を150点に引き上げ(50点増)、算定上限日数を「転棟等日から14日」に延長(7日間延長)、②「医師配置加算」について、加算1を120点(32点増)、加算2を90点(30点増)に引き上げ、③「看護配置加算」について、加算1を60点(20点増)、加算2を35点(15点増)に引き上げ、④「夜間看護配置加算」について、加算1を100点(15点増)、加算2を50点(15点増)に引き上げ、⑤看護補助配置加算】について、加算1を25点(15点増)、加算2を15点(10点増)に引き上げ、⑥「有床診療所緩和ケア診療加算」について、250点に引き上げる(100点増)-など、有床診療所入院基本料の見直しを行った(図5 有床診療所入院基本料の見直し)。

 有床診療所の減少スピードが緩和するかなど、二度の診療報酬改定による報酬面の評価が今後どのように現れてくるか注目される。

 

【事務局のひとりごと】

 

 外来は診療所入院は病院医療提供体制はこんな流れでこれまで進捗してきた。今回のコロナ禍を機に、医療従事者への注目度は俄然高まり、総理大臣も意味が分かって仰っていたかは不明だが、緊急事態宣言の冒頭、「診療報酬を2倍にします」(※ あくまで新型コロナウイルス患者を受け入れる病床や、自治体の要請によって確保される病床についてのみ、現在は救急医療管理加算1、救命救急入院料1などで通常の3倍相当の点数になっている)と、医療機関にとっては朗報の会見内容でもあったのだろうが、実際には医療機関のこのコロナ禍の間、患者減による収入減は免れないほどの危機的状態である。この状況に対し、財務省は何を思うのか。2020年の国民医療費は、そう、人口統計の棒グラフで目立った凹みの“丙午(ひのえうま)”の年のように、特異な数値として後年刻まれることになるだろう。多くの業界がそうであるように、この約2か月間の収入減は、恐らく取り返しがきかないだろう。2020年の骨太の方針では、医療費についてどのような方向性が示されるだろうか。そして国民は、それをどう捉えるだろうか。

 

 今回のテーマ有床診療所の減少スピードについてである。

 

 コメントを紹介したい。

 

〇厚労省医政局:有床診療所の特例開設、地域医療構想調整会議の協議が前提

 2018年3月27日で発出された厚労省医政局地域医療計画課長通知「地域医療構想を踏まえた地域包括ケアシステムの構築のための有床診療所の在り方について」では、「地域包括ケアシステムを推進するために必要と判断された有床診療所は、病床過剰地域においても開設できる」と、特例が拡大された。ただし、その必要性を十分に見極めるために地域医療構想調整会議で「事前の協議を行う」ことが前提となっている。厚労省の医療計画の見直し等に関する検討会・地域医療構想に関するワーキンググループの論議の中で、地域医療計画課は、法律上、調整会議や医療審議会の意見に強制力はないため、特例の対象になるか否かについては、「地域のニーズを踏まえて、特例かどうかを(都道府県知事が)判断する」と回答。「届出する場合は、保健所に相談に来ることになるだろう。まずは調整会議で説明してもらう。地域の実情を把握している調整会議の中で議論し、調整会議の意見を踏まえて、医療審議会が最終的には意見を言うことになっている」などと説明した。

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 ここにも保健所が登場したが、自由開業医制日本の医療制度の特徴の一つであるが、果たして“自由”が保証されるのか、今後の動向が気になるところだ。ただ、今回は開業、というより、あくまで有床診療所であるが、床数が減少している点にスポットが当てられている。

 

厚労省保険局医療課からはこんなコメントである。

 

〇医療課長:2020年度診療報酬改定で有床診療所にさらなるテコ入れ

 厚労省保険局の森光敬子医療課長は2020年度診療報酬改定で、「有床診療所の診療報酬に関するさらなるテコ入れ」として、次の通り措置を講じたとした。有床診療所が地域において担う役割を踏まえ、病院からの早期退院患者の在宅・介護施設への受け渡し機能や、終末期医療を担う機能等を更に推進する観点から、①有床診療所一般病床初期加算の算定要件について、転院又は入院した日から起算した算定上限日数を7日から14日へと延長するとともに、一般病床初期加算として1日につき150点に引き上げた(従来は100点)、②医療従事者の追加的配置に係る評価の見直し(医師配置加算、看護師配置加算などの引き上げ)、③有床診療所緩和ケア加算の引き上げ(150点から250点)-を行ったと説明している。

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 確かに点数上のテコ入れは行われたし、地域医療構想における有床診療所の役割も重要だ。“減少”と“コロナ禍”、因果関係があるかは分からないが、有床、しかも20床未満の小規模運営において、病床を維持することはコスト増なのか、効率が悪いのか、とにかく経営上はなかなか厳しい状況になっていたということだろう。

 

〇高齢化が進むへき地で欠かせない有床診療所

 厳しい経営環境にあるへき地の有床診療所を運営するある自治体。私どもの町は、戦前、個人医院を買収して村立診療所を開業し、その後国保病院にした。2012年には国保財政の悪化に伴い、その43床の国保病院を19床の有床診療所に縮小した。今日まで地域の基幹的な公的医療機関として重要な役割を果たしてきた。人口の高齢化が進み、経営環境が悪化する有床診療所廃院の動きもあったが、「認知症になってもならなくても」「若くても若くなくても」「障がいがあってもなくても」この地域で安心して暮らし続けるために、介護・保健・福祉・教育と連携した生活に寄り添う医療をめざしており、現在は有床診療所のメリットを最大限に活かそうと努めている。

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 へき地とそうでない場所を一括りに考えることはどうしても無理がある。一つの診療報酬体系でしか語られない現況、地域医療崩壊。深刻さの度合いは増している地域が増えている現実がある。

 

〇日医常任理事:「病院のみが診療報酬上対象の開放型病床を有床診療所でも可能となるように」

 日本医師会の有床診療所委員会による日医会長諮問「中長期的に見た、地域における有床診療所のあり方について」を受け、日医定例記者会見で有床診療所担当の小玉弘之常任理事は、「一人医師で24時間地域医療を守ってきた有床診療所が消滅の危機に瀕していることから、若い世代がやりがいを感じるような魅力ある有床診療所の再構築が必要である」と指摘。その上で、「病院のみが診療報酬上の対象となっている開放型病床について、有床診療所でも可能となるように制度を整えることで、地域の資源として病床を有効活用できる可能性がある」と提案した。

 

〇日医会長:「医療と介護の垣根を低くした診療・介護報酬の同時改定。有床診療所が果たす役割は大きい」

 日本医師会の都道府県医師会有床診療所担当理事連絡協議会で、横倉日医会長は、地域包括ケアシステムを確立していく中で有床診療所の活躍が期待されており、国の政策にも反映されてきていると強調。その上で、2018年度の診療・介護報酬の同時改定は医療と介護の垣根をできるだけ低くしようというものであったとし、2025年に向けて、「かかりつけ医」を中心にそれぞれの地域で必要な医療・介護が受けられるような体制の構築で、有床診療所が果たす役割は大きいなどと述べた。

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 役割は期待されているものの、減少という現象だ。“若い医師がやりがいを感じる魅力ある”状態に、今改定はなったのであろうか。その効果が出るにはもう少し時間がかかりそうだ。

 

 こんなコメントを紹介したい。

 

〇医業系コンサルタント:有床診療所は、空床を利用し介護サービスを提供して病床稼働率をカバー

 「専門医療提供モデル」の有床診療所が手術や検査で収益を得ている一方で、入院料が主な収益となる「地域包括ケアモデル」の有床診療所では、高い病床稼働率を維持できないと安定的な経営は難しくなる。空床を利用して介護サービスを提供できれば、稼働率の低さをカバーできる。

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 あまりフレキシブルにとはいかないのだろうが、介護医療院という類型も徐々にではあるが増えつつある

 

 最後に開業医や利用者からのコメントを紹介し、締めくくりとしたい。

 

〇開業医:診断・手術から在宅ホスピスまで対応する「かかりつけ有床診療所」

 消化器がんの有床診療所として、週2回、定期的な手術の日程を決め、院内にスタッフをそろえ、麻酔医も大学病院から呼んで万全の体制で手術をしている。また、再発や転移などの末期の方の場合は、患者さんに正しい情報を与えて、本人の希望や人生観に沿ってがん治療や在宅ホスピスを含めた緩和医療を進めてきた。近隣にがん専門の民間病院ができ、厳しい経営環境にあるが、地域住民に身近かな「かかりつけ有床診療所」として生き残りたい。

 

〇利用者・家族:「がんの在宅医療に必要な有床診療所」

 がん患者とその家族が住み慣れた地域で苦痛を感じることなく生活でき、必要な場合は直ぐに疼痛緩和のために麻薬を打ってくれる。また、急変した場合には即座に入院でき、最期に地域で看取ることができるのが、身近な町の中にある有床診療所であると思う。

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 「選択と集中」がもてはやされた時代もあったが(医療がそうであったとは必ずしも言えないが)、今は地域医療、しかも有床診療所には「よろづ屋的要素が求められている。“医療と介護の垣根をできるだけ低く”。どちらの垣根がどれだけ高いのか不明だが、垣根が低い → シームレス(段差のない)が厚労省のメッセージだ。それをしっかり受け止めれば、有床診療所は増えることになるのだろうか

 悪い時には叩かれ、良い時には当たり前。辛いところだが、それを必要としている人々にとって、病院・診療所を問わずしっかりとした体制を提供することが行政の役割か。難しいかじ取りだが是非ともお願いしたい。

 

<ワタキューメディカルニュース事務局>