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No.726 医師偏在解消に向けた「医師確保計画」2022年内に見直し~厚労省地域医療構想・医師確保計画WG

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◇「医師偏在解消に向けた「医師確保計画」2022年内に見直し~厚労省地域医療構想・医師確保計画WG」から読みとれるもの

・2024年度から作成される医師偏在解消に向けた「第8次(前期)医師確保計画」

・2020年から始まった第7次医師確保計画を見直し

・医師確保計画のベースとなる「医師偏在指標」の様々な問題点指摘

 

■2020年から始まった各都道府県の「医師確保計画」の見直し

 

 2024年度から、医師偏在の解消に向けた新たな「第8次(前期)医師確保計画」(3年を1期)について作成することが求められる。厚労省の検討会は、医師確保計画作成の考え方について、問題はないかを検証し、必要な見直しを行っていくことになった。具体的には、「医師確保計画のベースとなる医師偏在指標が適切なものかどうかの検証」「計画に医師確保の目標数をどう適切に設定するか」「医師確保に向けた具体的な取り組みをどう考えていくか」といった各項目について、夏までに一通りの議論を行い、10月から12月にかけて報告書を取りまとめ、新たな医師確保計画の策定につなげる予定だ。

 

 厚労省は、5月11日に開催された「地域医療構想及び医師確保計画に関するワーキンググループ(WG)」(「第8次医療計画等に関する検討会」の下部組織 座長:尾形裕也・九州大学名誉教授)の第4回会議で医師偏在指標について3つの論点(図4 医師偏在指標の見直しに関する論点)を提示した。

 

 

 これに対し、構成員からは医師偏在対策を行う上で参照することになる「医師偏在指標」のさらなる精緻化を求める声やこの指標が実態を反映しているのかを疑問視する声が相次いだ

 

 都道府県や2次医療圏等によって医師配置にバラつき(偏在)があることが従来から問題視されてきている。このため、2020年度から各都道府県に「医師確保計画を作成し、計画的に医師養成・確保を行う」ことが求められている。医師確保計画・偏在解消に向けた取り組みは、①地域の医師確保状況を精緻な指標(医師偏在指標)を用いて相対化(順位付け)し、2次医療圏を「医師多数区域(医師偏在指標に照らし上位3分の1)」「中間の区域」「医師少数区域(同下位3分の1)」に地域を3区分する。②3つの地域の区分(医師多数区域:圏域外からの医師確保は行わず、逆に医師少数区域に医師を派遣/中間の区域:圏域内に「医師少数の地域」がある場合など、必要に応じて他の2次医療圏からの医師派遣等を受ける/医師少数区域:医師多数の区域(他の2次医療圏)から医師派遣等を受ける)に応じた「医師確保計画」を作成する-流れで進むことになっている。

 3つの地域の区分による医師確保に関する方針の下、目標医師数を2次・3次医療圏ごとに「計画満了時点」(3年後)に確保すべき医師数を算出。具体的な施策として、「地域枠を○名確保する」「医師派遣を○名受けるよう調整する」などの施策を明示する。この計画を第7次医師確保計画(2020~2023年度)→第8次(前期)医師確保計画(2024~2026年度)→第8次(後期)医師確保計画(2027~2029年度)と進めることで、「医師多数区域」から「医師少数区域」への医師移動を強力に促し、「地域偏在を2036年度に解消する」ことを目指す図5  医師確保計画を通じた医師偏在対策について)。

 

 

 

■医師確保計画のベースとなる「医師偏在指標」を巡り議論

 

 始まって間もない「医師確保計画」だが、現在の第1期計画の中で課題なども浮上してきており、第8次計画作成に向けた見直し論議が始まった。5月11日のWGの会合では、医師確保計画のベースとなる「医師偏在指標」を中心に議論が行われた。

 地域によって人口・年齢構成・医師の年齢構成などが異なるため、「医師数が多いか少ないか」は実数で比べることは不適切。このため、「人口10万人対医師数」を基本に、①地域住民の年齢・性別(例えば高齢者が多ければ医療ニーズが高く、より多くの医師が必要となる)、②医師の年齢・性別(例えば高齢医師割合が高い場合、稼働能力が低いために、より多人数の医師が必要となる)などを加味した医師偏在指標」を用いて「この2次医療圏は相対的に医師が多い」「この2次医療圏は相対的に医師が少ない」などと判断する。「医師多数」と判断された場合、圏域外からの医師派遣などを受けることができなくなる(図6  医師偏在指標)。

 

 

 「医師偏在指標」については、「診療科別に医師数を見ていくべきではないか「地理的状況を勘案すべきではないか(医療機関へのアクセスを考慮すべき)」「大学病院等の勤務医が他医療機関へ非常勤医師として派遣されていることを加味してはどうか」「臨床研修医などは医師数から除外してはどうか」などの要望が都道府県から出ていた

 5月11日の会合でも、「医師数を考えるにあたっては「病院の医師」と「クリニックの医師」とを分けて考えるべきではないか」「研修医の診療については「指導医により監督、チェック」などが必須であり、少なくともその分を割り引いて考えるべき」「診療科別に医師の多い少ないかを見ていくべき」「医学部入学定員の方向が決まらなければ、地域枠をどの程度設定してもらうべきかなどの検討が進まない。早期に方向を固めてほしい」などの意見が出された。

 

 地域医療構想・医師確保計画WGは医師偏在解消対策に向け「医師確保計画」の見直し論議を進めるとともに、医師確保とも密接に関連する地域医療構想の実現に向けた論議も並行して進めていくことになる。

 

 

【事務局のひとりごと】

 

 6月である。これから梅雨の時期にも入り、夏本番を前に、コロナ禍に関するもろもろの規制が緩和されてきたこともあり、公私ともに気分の高まりをみせる季節だ。

当社は7月が事業開始月なので、6月は新年度スタートに向けた人事異動の季節でもある。

 より良い組織づくり、組織成長のために、無理をお願いする異動もあるかもしれないし、この移動によって出世の歩みが進む方もおられることだろう。個人としては思うところも多々あるかもしれない。年に一度の定期人事異動は、社員にとっては最も気になる行事の一つだ。

 

 企業が人事異動を行うのは、組織活性化、個人の成長の視点、偏在を平準化しようとする働きなど、いろいろな側面がある。

 医療においては、医師の自由開業医制が担保されていること、(医師が)働く場所を自己の意思で決める権利などで保障されているのだが、医療法人グループに所属しておられる医師の人事異動、医局による異動(勤める医療機関そのものも変わる)等、主に勤務医にとってはこれもまた人事異動は行われるのだろうが、こちらは一般企業ほどの強制力があるかどうか、そこは判然としない。

 本文中にもあるように、「医師配置にバラつき(偏在)があることが従来から問題視されている」わけであるので、働く地域については、少なくとも医師個人が自らの希望を通す、叶えることは出来易いのだろう。

 であるから、あまり「ここで働きたい」というようなインセンティブが働きにくい医療圏、地域では医師が不足、逆だと充足気味(敢えて過剰とは表現しない)、ということになり、結果としては「偏在」ということになるのだろう。

 

 コメントを紹介したい。

 

〇厚労省:医師多数地域においても医師偏在を是正していただきたい

 地域医療構想及び医師確保計画に関するWGの会合で、厚労省事務局は「医師多数地域の中においても、実際に医師が少ないところについては考慮して派遣するようになっている。医師多数地域においても医師偏在を是正していただきたい」とコメントした。

 

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是正していただきたい」。

このWG(ワーキンググループ)に出席しているメンバーには医師が多いことだろう。医師自身に向けられたコメントなのだろうか。

 

  全国自治体病院関係者からはこんなコメントだ。

 

〇全自病会長:基幹病院でも不採算地区病院等への医師派遣が困難に

 

 総務省の「持続可能な地域医療提供体制を確保するための公立病院経営強化ガイドライン」を受け、小熊 豊全国自治体病院協議会会長は、「医師の時間外労働規制への対応により、基幹病院においても十分な医師が確保できず、不採算地区病院等への派遣が困難となることが懸念される。国において、実効性・即効性のある医師確保・医師偏在対策を講じられるよう、改めて強く要望する」とコメントした。

 

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強く要望する」。

 自治体病院からは、国に対する強い要望」だ。

 

 また、自治体からはこんなコメントをいただいた。

 

〇医師偏在指標は、医療機関へのアクセスなど地理的状況を勘案すべき

 

 山間へき地では鉄道の廃線が相次ぎ、自動車を運転できない高齢者は通院が困難な状況にある。医師偏在指標について、医療機関へのアクセスなど地理的状況を勘案すべき。

 

〇医師偏在に「西高東低」

 

 医師偏在指標に基づく医師多数地域、中程度地域、少数地域の分類を参照すると、東日本に医師少数地域が多く、西日本に医師多数地域が多いという「西高東低」の傾向は明らかである。もっと医師が動く強力な仕掛けがないと、いつまで経っても変わらないのではないか。

 

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 住み慣れた街で、親しい人たちのいるコミュニティで生活を送りたい。誰しもが思うことだ。

 その思いを、国としては最大限尊重したいとは考えているし、その考えを元にインフラが整備されてきたはずだ。「鉄道の廃線」。人口減少と少子高齢化。人口ボーナス期に整備されてきたであろうインフラが、少子高齢化で人口オーナス期においていろいろな歪みが吸収できなくなってしまっている

 

 日本医師会からはこんなコメントだ。

 

〇「診療科ごとの配置状況」は正確に把握できるのではないか

 

 地域医療構想及び医師確保計画に関するWGの会合で猪口雄二日医副会長は、「医師について2年に一度、「勤務場所」「診療科」などを詳細に届け出ることとなっている。指標化は困難であっても、「診療科ごとの配置状況」は正確に把握できるのではないか」と指摘した。

 

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 まずは正しい状況把握だ。国勢調査よりも頻度が高い2年に一度の届出だ。この情報が何らかにぜひ生かされんことを願う。その間に「鉄道の廃線」議論が止まるとも思えないが…。

 

 勤務医からのコメントを紹介したい。

 

〇2次医療圏における大学病院、どのように考える?

 

 医師偏在指標では、上位33%の3次医療圏・2次医療圏は「医師多数地域」と、下位33%の3次医療圏・2次医療圏は「医師少数地域」とみなされる。医師多数地域は原則として、他の3次医療圏・2次医療圏から医師を確保は行わない方針だ。この点について、日本医療法人協会会長代行の伊藤伸一氏は「大学病院が存在する2次医療圏は数字上、医師過剰になるが、その周辺の病院の医師数が必ずしも充足されるわけでない」「2次医療圏の医師多数地域では、必ずしも大学病院から医師が派遣されるわけでないため、偏在が助長されかねない」と疑問を呈した。

 

〇病院と診療所の医師を区別する必要性も

 

 全国医学部長病院長会議理事の大屋祐輔氏は病院と診療所では医師の勤務実態が異なることを踏まえ、「医師偏在指標」が病院と診療所の両者で働く医師を対象に算出していることを問題視し、「医師数をコントロールする指標において診療所を勘案したら実態とマッチしない」「病院で働く医師の偏在指標を出していかないと不完全なものになるのではないか」と問題提起。この医師偏在指標は地域枠の学生数や研修医のシーリング等、あらゆる医師確保対策に関わるものであるため、「そもそもの医師偏在指標が実態に合っていない場合、大変なことになる」と指摘した。

 

〇大学病院の勤務医は、複数医療機関で勤務しており、勤務時間割合などを考慮して「医師配置」を検討すべき

 

 大学病院の勤務医は、「大学病院での勤務」(主たる従事先)と「他医療機関での副業」(従たる従事先)と複数医療機関で勤務しており、勤務時間割合などを考慮して「医師配置」を検討すべきではないか。

 

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 大変不勉強で申し訳なかったが、筆者としては、開業医・勤務医と分けた形で集計しているものだ、とばかり考えていた。集計方法の定義づけだけでこれから何年もかかる、なんてことにはならないで、と願うばかりである。

 

 こんなコメントを紹介したい。

 

〇医科大学長:医師多数地域から医師少数地域に移動させる強力な手法を

 

 東北地方の医科大学の学長。「医師少数の地域での勤務を推奨する」方策など、医師を「医師多数の地域・区域」から「医師少数の地域・区域」に移動させる強力な手法を考えるべき。

 

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 決して簡単なものではないが、企業においては、「人事異動」を以って定期的に組織の再編成・活性化を行う。

 

 医業系コンサルタントからはこんなコメントをいただいた。

 

〇医師にとって地方の医療機関で働くメリット・デメリットとは

 

 医師にとって地方の医療機関で働くことは、次のようなメリットが考えられる。「一人の医師が受け持つ診療の範囲が広がるため、ゼネラリストとしての経験と実績を積むことができる」「都市部に比べて好条件の報酬を得られやすい」「のびのびとした自然環境のもと、地方ならではの生活環境でゆったりとした暮らしが望める」。その一方で、次のようなデメリットが聞かされる。「業務量が多くなる傾向が強く、長時間労働や精神的な負担につながりやすい」「限られた医療環境の中で完璧な診療を求められ、強いプレッシャーにさらされる」「アクセスが悪い場所だと自家用車が必須となり、経済的負担が増す。また、学会やセミナーに参加するのも体力勝負となる」。

 医師が地方で医療を行うことの意義は大きく、それに伴う困難さをどのように把握し対処しながら医師としてのキャリアを積まれていくかに尽きるのではないか。

 

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 企業においても同様かな?と思う。大都市にある拠点なら、所属人員も多いし、多くのことを団体戦で乗り切ることができる。

 筆者が社会人1年目に配属された大型拠点から、3年後に異動した営業拠点は、所長と営業員3人。同世代の社員もいない、友人も親戚も、ましてや知り合いもいない、勝手も分からない。故郷からは1,000km以上離れている…。とても不安で心細い日々を過ごした

というのも束の間のことだった。

 先のコンサルタントのコメントのように、給料はあまり変わらない(むしろ田舎の方が手当が安い、その代わり物価も安い)が、ゼネラリストとしての経験を積むことができ、営業員一人にかかるプレッシャーもさることながら、その分、会社の一部分を背負っているんだ、そんな自負にもつながる。同業他社の友人もたくさんできる。どこの地域でも、「住めば都」になる。

 それも、人事異動で自分の意思とは関係なくレールを敷かれたからこそ、分かったことだ。自分の意思で自らの住む場所・勤務場所を決めることができる医師の裁量権。それは果たして本当に自由なことなのだろうか。

 いろいろ知った上(経験した上)で、はじめて自分の意思で決めることができることをありがたい、と思った時、もっと医師としての人間性に磨きがかかるのではないだろうか?そんなことを感じた。

 

 最後に、英国に住んだ経験のある日本人からのコメントを紹介して締め括りとしたい。

 

〇英国でGPを探すには、郵便番号で検索

 

 イギリスのNHS(国民健康保健制度)では、イギリスに6カ月以上滞在する場合、GP(かかりつけ医)登録を事前にしておくと基本的に無料で医療サービスを受けることができる(処方薬や歯科などは有料)。診察を受けたい時は、登録したGPに予約をし、受診する。GPを探すには、NHSのWebサイトでポストコードや地名を入力し検索し、自宅に近い順にGP一覧が表示される。

 

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日本の医療制度では、患者自らが、自らが受診する医療機関を選択することができる「フリーアクセス」だが(ただ、現在は原則診療所の流れが強いが)、英国ではGP制度(ゲートキーパー制)で、公的医療を受けるためには、患者は決められた地域の中のGPからしか医療を受けることができない。

 「国民皆保険」、「フリーアクセス」、「自由開業医制」、我が国の医療の3大特徴は、これまで世界に冠たる制度として知られてきた。今後も世界で冠たる医療制度であり続けるためにも医師偏在の問題と正面から対峙していくしか道はないのかもしれない

 

<ワタキューメディカルニュース事務局>