ワタキューメディカルニュース

ワタキューメディカルニュース詳細

No.733 病院薬剤師の不足が指摘される薬剤師の確保、第8次医療計画に記載へ

→メディカルニュース今月の見出しページへもどる

 

◇「病院薬剤師の不足が指摘される薬剤師の確保、第8次医療計画に記載へ」から読みとれるもの

・地域医療提供体制の設計図といわれる医療計画の策定に向け厚労省検討会で議論

・医師確保以外に歯科医師や薬剤師、看護師の確保も第8次医療計画に記載へ

・医療現場で指摘される病院薬剤師不足

 

■2024年度から都道府県で施行される第8次医療計画

 

 地域医療提供体制の設計図といわれる医療計画について、都道府県は2023年度から第8次計画を策定、2024年度から施行することになっている。医療計画には、「一定の医療を完結できる地域(医療圏)をどう設定するか」「医療圏におけるベッド数をどう考えるか(基準病床数)」「地域医療構想(高度急性期・急性期・回復期・慢性期等の機能ごとの必要病床数など)の実現に向けた方策」「5疾病(がん、脳卒中、心血管疾患、糖尿病、精神病)・6事業(救急、災害、へき地、周産期、小児、感染症)+在宅医療の対策」「医師確保」「効率的かつ効果的な外来医療提供体制の構築」などが記載される(図1 第8次医療計画の策定に向けた検討体制)。

 

 今年末の第8次医療計画の基本方針、作成指針等の取りまとめに向け、厚労省の「第8次医療計画等に関する検討会」で論議が行われている。医師確保計画については2023年1~3月をめどに医療計画の指針を策定するが、検討会では、医師以外の医療従事者の確保として、歯科医師や薬剤師、看護師の確保についても議論。このうち、業務内容、給与水準などで大手調剤薬局チェーンと格差があるなど病院薬剤師の不足問題が提起され、次期医療計画の作成指針に薬剤師確保を明確に記載することになった。

 

■病院薬剤師不足の背景は、6年課程になり奨学金返済で経済負担、大手調剤薬局チェーンとの給与格差など

 

 8月25日の検討会では、2024年度から施行される次期医療計画について、歯科医師、薬剤師、看護師の確保策を盛り込むかなどについて議論した。このうち、調剤だけでなく病棟薬剤業務やチーム医療、在宅医療への参加など多岐にわたり医薬品の専門家として業務・役割の充実が求められる一方、医療現場で不足が指摘されている病院薬剤師の確保を進めるため、各都道府県において「薬剤師の就労状況を把握」した上で、医療計画の中に「薬剤師『確保』促進策」を記載するよう求める方向で議論が進んだ(図2  薬剤師の主な業務・役割)。

 

 現行の医療計画には「薬剤師の資質向上」に関する記載は求められているが、「薬剤師の確保」に関する明確な記載がない。厚労省の調査によると、そもそも約4割の都道府県で「薬剤師の地域における不足状況」が把握できておらず、薬剤師の不足が多くの地域で生じている、一部の地域で生じているとの回答や県内で地域偏在がみられることが明らかにされた(図3 薬剤師の偏在の実態(地域偏在))。

 

 厚労省の「薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会」の調査結果では、①薬剤師が不足している」との回答は、薬局でも4割強あるが、病院では64.8%に上る、②病院では「病床規模が大きい」ほど、薬局では「処方箋応需枚数が多い」ほど、薬剤師の不足感が強い、③薬剤師が偏在(地域偏在・施設偏在)してしまう要因に、少なくとも20~30代では、病院のほうが薬局より給与水準が低いと推測されること-が明らかになっている。

 

 今後、検討会でより詳細に「どういった記載内容を都道府県に求めるのか」を詰めていくことになる。「主に薬局と病院との給与格差が、病院薬剤師不足を招いている」と指摘され、その原因の一つに、薬剤師養成課程が「6年間」に延長されたことなどを背景に、「1000万円を超える奨学金返済債務を抱える薬学生」が少なくない。また、20歳代・30歳代では「病院よりも薬局の方が、給与が高い」と推測され、「給与の高い薬局を選択する」薬学生がどうしても多くなってしまうようだ。

 

【事務局のひとりごと】

 

 空前の旅行ブームであった2019年までの数年間、少なくとも新型コロナウイルス感染症がはびこることとなった2020年初頭までは、我が国においても海外旅行が隆盛であった。迎える側の日本では「来日観光客を4,000万人に」の掛け声のもと、「インバウンド」という言葉ももてはやされ、日本の観光各地は海外旅行客で溢れかえっていた。

 関西の古都などは、市長による誘致活動も手伝い、街中にホテルが盛んに建ち、さらには民泊所すらも建設ラッシュとなった。

 そんな頃、今度は「オーバーツーリズム(観光公害)」、なる言葉も生まれ、何でも行き過ぎは良くないわな、などという声も聞かれ出したそんな折、

 

 あれからそんなに時が経ってしまったのか。我が国では元号が「平成」から「令和」へとかわり、令和という言葉と美しい響きに込められた思いを日本国民が噛み締め、2度目の東京オリンピックを開催に向け、日本中が沸き返っていたのに、突然のコロナ禍である。

 世界は一変した。

 海外旅行などは言うに及ばず、国内旅行ですら憚られ、これまでは、

 

 ようこそ観光客 

 

だったはずが、他府県ナンバーの車を見れば、

 

 他府県の車が入ってくるな!!

 

などという動きにまで発展する始末。あまり明るい話題のなかった令和の幕開けであった。

 

 

 そして、新型コロナウイルス感染症との折り合いの付け方がようやく見えて来たかに思える現在。旅行需要喚起のための、またしても〇〇割の登場により、国内旅行や、場合によっては海外旅行、という機運も高まってきた。

 

人が集まる、というのは都市の特徴であるが、「住みたい都市」と「訪れたい都市」は、もしかしたら異なるのかもしれない。

 

10位 静岡県

9位 奈良県

8位 広島県

7位 鹿児島県

6位 長崎県

5位 長野県

4位 東京都

3位 沖縄県

2位 京都府

1位 北海道

 

 ランキングサイトであるランキングー!が、10~60代の男女3,401名に「旅行して良かった都道府県」についてアンケート調査を行った結果だそうだ。

(参照:https://tripeditor.com/392022

 

 今回のテーマは、薬剤師、特に病院勤務の薬剤師が不足している、という問題についてである。ここにランクインの都道府県の薬剤師は、そして病院勤務の薬剤師は、果たして充足しているのだろうか?

 

 コメントを紹介したい。

 

〇様々な確保策を講じているが‥‥

 薬剤師確保のために、学会・研修会・講習会への参加支援(経済的支援)、院内チームへの参加、薬剤部以外への配置・関与、各種認定薬剤師・専門薬剤師の資格取得支援(経済的支援、経済以外の支援)など様々な確保策を講じているが、それでもなお薬剤師確保が難しい。調剤薬局の給与水準が高く、そちらに流れてしまう。

 

〇診療報酬の処遇改善で薬剤師や事務職員が対象外で、職種間の分断

 看護職員等処遇改善事業補助金や10月以降は診療報酬で処遇改善が行われるが、薬剤師や事務職員などが対象になっていないことで、職種間の分断を生んでいる。経営が苦しい中、分断が生まれないように手当しないといけない。四苦八苦している。

_______________________________________

 病院経営層からのコメントである。看護師に対しては、政治的な動きも手伝って、とにかく財源が看護師の方に向いているのは、これまでもW・M・Nで採り上げてきた。一方で薬剤師についてはどうか。このコメントを見る限り、「そうではないな」。

 そう感じてしまうのは筆者だけではあるまい。

 

 政治家からはこんなコメントをいただいた。

 

〇薬剤師の地域偏在、無薬局地帯を無くしたい

 自民党の本田顕子参院議員(薬剤師)は広島県薬剤師会長とのオンライン対談の中で、「薬学部が6年制になったが、まだ成果が実感として見えていなくて、これから理解が深まってくると思う。薬学部を卒業している人は多いが、必要なところに薬剤師がいないという状況があると思う。都市部に集中しているのか大病院に多いのかなどを調べ、できれば無薬局地帯を無くしていくことが我々のいちばんの願いだ。医師の地域偏在が言われているが、薬剤師は増えてきている。医師の代わりになるとは言わないが、専門家の知識を発揮することが理想だと思う」などと述べた。

______________________________________

 すでに最終回を迎えてしまったが、今夏7月より放送の「異世界薬局(※1)」というアニメでは、現代に生きる薬剤師が異世界に転生し、現代医学(薬学)の知識で、それとフィクションなので魔法の力も使い、人々を救っていくドラマであった。放映はペスト(黒死病)から国を守ったところで終了したが、おそらく原作はまだ続いているのだろう。コロナ禍の現在、非常に時宜を得た放映ではなかったか。まさに、本田議員の仰るように、異世界においては、主人公は専門家の知識で医師の代わり以上の存在となり得ていた。これを見て快哉を上げた薬剤師諸氏は多かったのではないか?

 また、薬剤師を目指そうとする若者も増えたのではないか?

 

 厚労省からはこんなコメントをいただいた。

 

〇給与格差は課題との認識を持っている

 第8次医療計画等に関する検討会で、厚労省担当者は「給与格差は課題との認識を持っている」とした上で、修学金を活用する薬学生の割合が約3割と高く、それが給与水準の高い薬局チェーンへの就労につながっていることも考えられ、基金等を活用した支援を進めるなどと説明した。また「卒後臨床研修については、現在、プログラム案を作成中で、卒後研修で得られる成果、問題点の検討を進めている」とし、厚労省としても病院薬剤師の確保に積極的に取り組む姿勢を示した。

______________________________________

 「奨学金」と「修学金」。

 奨学金は入学後の生活資金の援助を目的としたもので、一方の修学資金とは、入学金や授業料等入学時に一括で納付する資金の事、なのだそう。

 薬剤師になるためには、つまり薬学部に入るためには「お金がかかる」上に、おそらく修学金も返済の必要性もあるだろうことから、早くお金を返すためにも、収入の高い方に勤めようとする心理も働くのだろう。

 

 薬学部生からもコメントをいただいた。

 

〇薬学部は6年制なったが、学費が上がっただけで一向に風向きは変わらず

 「医師と同じ待遇で」と鳴り物入りで薬学部は6年制にしたが、学費が上がっただけで一向に風向きは変わらず、大学が乱立し過剰になっている。毎回国試合格率が30%の大学はもう要らないと思う。

______________________________________

 …なかなか手厳しいコメントだ。

 

  「学費が上がっただけ」

 

 そこに、職を得てからの収入の問題は、勤務先を選択する際に無関係な話ではないのだろうな。

 

 日本薬剤師会からはこんなコメントだ。

 

〇行政と医療現場で充足率に関する認識が異なる。医療計画で薬剤師確保するのが大切

 薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会で、「薬剤師確保のための調査・検討事業」の結果を受け、日本病院薬剤師会会長の武田泰生氏は、「行政と医療現場で充足率に関する認識が異なるため、まず都道府県が現場の薬剤師不足を認識する必要がある」と指摘した。日本薬剤師会副会長の安部好弘氏は、「医療計画の中で薬剤師を確保していくことが大切である」とし、地域事情に応じた薬剤師確保について医療計画に盛り込むよう訴えた。

______________________________________

 都道府県の認識。医療計画、それはある意味、目標数値でもあるので、そこに入れこまれなければどうしても数を把握することは難しいのだろう。コロナ患者の全数把握は、紆余曲折の末、なくなってしまったが。つまり、把握することができなくなったということでもある。

 

 日本医師会からもコメントをいただいた。

 

〇日本は世界一薬剤師を養成しているが病棟で薬剤師が不足している。構造的な問題だ

 中医協の論議で日本医師会代表委員は、「日本は世界一薬剤師を養成しているにも関わらず病棟で薬剤師が不足している。構造的な問題だ」と指摘。大きな理由の一つに、病院薬剤師と調剤チェーンの給与が大きく違うことをあげ、病院薬剤師の待遇改善に向けて、調剤料などの病院薬剤師の技術料を「きちんと手当てすべき」と主張した。

______________________________________

 財源論が絡むと、ともすれば意見が衝突しかねない医師側からも、薬剤師の待遇改善が叫ばれている

 

 病院薬剤師からもコメントをいただいたので紹介したい。

 

〇薬の専門家としてチーム医療に貢献。やりがいのある仕事

 医師や看護師らと協力してチーム医療に貢献したいという想いが強く、病院薬剤師の職に就いた。「錠剤が飲み込めない患者さんにはどうすればいい?」といった相談を持ちかけられることがあり、薬の専門家として正しいアドバイスを心がけている。今後は病気の知識を増やすことはもちろんだが、医師に薬物での治療方針を提案したり、認定薬剤師・専門薬剤師の資格を取得したり、やりたいことがたくさんある。新人の給与は調剤薬局チェーンに比べて低いが、薬の専門家としてチーム医療に貢献できるやりがいのある仕事だ。

 

〇地方の中小病院には就職しない。薬剤師の偏在が問題

 今の薬学生は、保険調剤薬局ばかりに就職している傾向がある。給与面のみで比べられると病院薬剤師は、不利。薬学部の教員の方も、その辺りを説明してもらいたい。病院でも、都市部の大病院には、薬学生の興味はあり就職するが、地方の中小病院には就職しない。薬剤師の偏在が問題と思う。

______________________________________

 調剤薬局と病院勤務、さらには地域偏在。地域偏在は、「訪れたい都市」ではなく「住みたい都市」のランキングで下位に位置付けられる都市では、おそらく苦しいのだろう。

 ふるさと納税にしても、町おこしにしても、つまりは都市間の競争である。競争すれば上位と下位が生まれ、差もついてしまう。偏在はその結果なのか?医師の偏在でも触れたが、個人の自由意志を最も尊重する日本社会において、果たして行政の力でこの問題は何とかなるのだろうか?

 

 今度は調剤薬局勤務の薬剤師からのコメントを紹介したい。

 

〇激務ではないし、同職種で比較すれば充分もらえていると思う

 1日の処方箋枚数は53枚と勤務内容もそこまで激務ではないし、同職種で比較すれば充分もらえていると思う。有休が取りやすく働きやすい職場で、お給料も相場以上もらっている。

 

〇「目標達成できれば給与アップにつながる」と話すが、そうなるとはとても思えない

 そもそもの給料が他社より安いと聞くうえ、ここ最近やることが増えている経営幹部は「目標達成できれば給与アップにつながる」みたいなことを話すが、そうなるとはとても思えない。

______________________________________

 上のコメントと下のコメントでは、お勤めになられている会社が異なるのだろう。はたまた、収入や職業観の違いによる個人差なのか?

 

 こんなコメントも。

 

〇調剤薬局チェーン大手の賞与は年間平均141.5万円

 調剤薬局チェーン大手の日本調剤の給与で特筆すべきは、賞与の高さである。2021年度実績では、夏・冬合わせて平均141.5万円と業界でも屈指の水準。 また、日本調剤は自己研鑽を積む薬剤師を評価する制度を整えており、その最たるものが「外部認定専門薬剤師手当」である。

______________________________________

「業界屈指」か…。

 

 医業系コンサルタントからはこんなコメントだ。

 

〇薬剤師の負担を減らす人材が必要

 薬剤師の役割が変化したことで、調剤などの対物業務を代理で行う人材が求められるようになっている。アメリカでは、「ファーマシーテクニシャン」という調剤助手の制度が取り入れられている。ファーマシーテクニシャンは、薬局や医療機関で勤務して、処方箋に必要な薬の量を計測し、薬の在庫管理などを行う。薬剤師の管理下で働き、薬の調合が可能。こうした制度を日本にも導入するかどうかの議論が行われている。その中で、国内でも民間薬局が「薬局パートナー制度」をいち早く導入した。薬局パートナーは、薬学的な知識がなくても、処方箋入力、ピッキング、服薬指導が完了した薬のお渡し・会計、OTC医薬品販売など薬剤師の一部業務を請け負う。こうした制度が広く普及すれば、薬剤師の業務を軽減することができ、対人スキルが求められる業務にも手を広げることができると思う。

______________________________________

 「」。ライセンスをもつ存在と、それをサポートする、聞こえは悪いが「無資格者」。互いが現場で補完し合いながらサービス提供の質向上を目指す。その考え方は理に適っている。

 要は本来ライセンスをもつ方のライセンスがないと不可能な業務と、それ以上にライセンスがなくても可能な業務に、あまりの開きがあるのだろう。筆者も普通運転免許以外で人に自慢できるようなライセンスを持っていないが(普通運転免許が自慢できる代物なのかは分からないが)、いわゆる管理業務とでも言おうか(注:管理職業務といっているのではない)、管理するためにどうしてもしなければならない仕事、そういう業務が周りに溢れているような気がする。出勤簿の集計一つ取ってみてもそうだ。

 ライセンスを持つ方も同様なのだろう。やりっ放しで仕事に片が付くなら、仕事はとても楽しいのだろうな、そう感じる時もある。

 

 最後に、こんなコメント紹介して締め括りとしたい。

 

〇病院勤務の薬剤師は身近な存在ではない気がする

 病院勤務の薬剤師は身近な存在ではない気がする。医薬分業が進み、病院で医師から処方された薬は、病院の外の調剤薬局でもらい、薬の説明を受ける。入院しない限り、病院の薬剤師は身近な存在ではないかもしれない。

______________________________________

 なるほど。病院勤務の薬剤師も、患者と触れ合う機会がないことはないのだろうが、患者との触れ合いも業務の魅力であるならば、「収入面」という側面以外で調剤薬局勤務を選択する薬学部生も、少なくないのかもしれない。

と思う。

<ワタキューメディカルニュース事務局>

 

 (※1)…『異世界薬局』、高山 理図(たかやま りず)による小説(ライトノベル)。2022年7月より放映。関西ではフジテレビ系での放映。そういえば、薬剤師が主人公になるドラマは、あまりなかったような気がする…。

 石原さとみ主演のアンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋 というドラマが、日本の連続ドラマ史上初だったようだ(2020年7月 こちらもフジテレビ系)。

<筆者>