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No.699 病院の高齢者のポリファーマシー対策推進で厚労省が通知

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■「病院における高齢者のポリファーマシー対策の始め方と進め方」で厚労省が通知

 高齢になると、どうしても複数の傷病を抱え、各傷病治療のために「多剤投与」が行われがちとなる。また高齢者は、細胞内水分の減少、血清アルブミンの低下、肝血流や肝細胞機能の低下、腎血流の低下といった生理機能の低下が生じるものの、薬物吸収能には大きな変化がないため、「医薬品が効き過ぎる」状態に陥り、多剤投与(ポリファーマシー)対策が重要となる。ポリファーマシーとは、「単に服用する薬剤数が多いのみならず、それに関連して薬物有害事象のリスク増加、服用過誤、服薬アドヒアランス低下等の問題につながる状態」をいう。

 

 厚生労働省は3月31日に通知「『病院における高齢者のポリファーマシー対策の始め方と進め方』について」を発出し、①多剤投与の中でも害を伴う「ポリファーマシー対策」を病院・地域が連携して推進する、②病院における高齢者のポリファーマシー対策は、担当者を決め、ポリファーマシー対策に関心があるチームで「小規模」に取り組みをはじめる、③人員不足、多職種連携が不十分、医師が「自科以外の処方薬」を調整することが難しいなどポリファーマシー対策の導入が困難な場合は、タスクシフト推進、多職種カンファレンスへの積極的な参加などで課題解決を図る、④入院患者に対して入院前、入院時、入院中、退院後のそれぞれでポリファーマシー対策の視点を持つ、⑤急性期病院から回復期・慢性期病院など後方病院に「処方変更」を提案し、そこで処方見直し後の経過観察を行う-ことを求めた。

 

 このうち、病院における高齢者のポリファーマシー対策の進め方について、厚労省は「担当者を決め、ポリファーマシー対策に関心のあるチームで『小規模』に取り組みをはじめる」ことを推奨している。また、院内には、栄養サポートチーム(NST)、緩和ケアチーム、皮膚・排泄ケアチーム、認知症ケアチーム、褥瘡対策チーム、せん妄対策チームなど「病棟横断的な専門医療チーム」がいることから、セットで「ポリファーマシー」の視点を導入することが円滑な導入が期待できる。さらに、診療情報提供書、薬剤管理サマリー、看護サマリー、電子カルテ、服薬情報提供書など既存の院内ツールの中にポリファーマシー対策の視点を盛り込むことが重要となる(表3 病棟横断的な専門チームの例)(表4 既存ツールへのポリファーマシー対策の取り入れ方)。

 ポリファーマシー対策の導入後は、それを推進・拡大していくことが必要となる。そこでは、①ポリファーマシーの概念(多剤投与の中でも害を伴うもの)を確認する、②ポリファーマシー対策の目的(高齢者の特徴に配慮したより良い薬物療法を実践して、問題の解消・改善をはかる)を確認する、③資料(上記指針やガイドライン)を取りそろえる、④院内でポリファーマシー対策に関する「運営規定」をつくる、⑤人員体制をつくる、⑥地域医療・介護連携体制を構築する(例えば病院の「地域連携室」に薬剤師を新たに配置し、地域全体でポリファーマシー対策を進める風土を作っていくなど)、⑦ポリファーマシー対策の効果をモニタリングする、⑧対策のデジタル化を進める―ことなどが求められる。このため、薬剤師がキーマンとなって地域でポリファーマシー対策を進めることが極めて重要となる(図1 地域連携薬剤師チーム 介入システム)。

■入院前・入院時・入院中・退院後それぞれでポリファーマシー対策の視点を

 入院患者に対する具体的なポリファーマシー対策については、①入院前に対象者のスクリーニング・院外医療機関等からの情報収集を進める、②入院後に、多職種カンファレンス等で「処方見直し」内容を固め、主治医・患者の意向を確認して処方を見直す、③退院時に逆紹介先に情報提供を行い、他院後にもモニタリングを行うという流れで進めることになる(図2 入院患者への対応の流れ)。

 

このうち、入院前のスクリーニング・情報提供を十分に行うことで、入院後に円滑なポリファーマシー対策が可能となる。このため、「入退院支援」部門にも「ポリファーマシー対策の視点」が重要となる。

 入院時には、薬剤に関する情報(持参薬や服用薬、アレルギー歴、かかりつけ薬剤師・薬局の有無、お薬手帳の活用状況など)、薬剤以外の情報(患者の基本情報やかかりつけ医、介護の状況、家族構成など)をしっかり把握する必要がある。入院後は、多職種チームで「処方見直し案」を検討することになり、その際には、対象患者の決定(「○日以内に入院した○剤以上の内服薬を服用し、処方見直しを希望する患者」などの基準をあらかじめ院内で決定しておく)、主治医との調整、患者・家族の意向確認―などが重要となる。「処方見直し」により患者の状態が悪化していないか、などを継続的に観察し、状態悪化などが見られた場合には、再度の「処方見直し」を迅速に行うなどの対応を図ることが必要不可欠である。

 入院中と異なり、退院後には「医療従事者が24時間そばにいる」状態ではなくなるため、かかりつけ医やかかりつけ薬剤師の協力(処方内容が元に戻っては意味がない)、必要に応じたモニタリングなどを行うことが重要

 

■通知のもとになった「高齢者医薬品適正使用検討会」ポリファーマシー対策の手順書

 高齢者のポリファーマシーを防止するため、厚労省は「高齢者医薬品適正使用検討会」を設置、2018年5月に主に急性期病院を対象とした「高齢者の医薬品適正使用の指針【総論編】」、2019年6月に外来・在宅医療、回復期・慢性期入院医療、介護保険施設を対象とした「高齢者の医薬品適正使用の指針【各論編(療養環境別)】」をまとめた。その指針では、医師・薬剤師・看護師等が協働して、高齢者の状態、治療の必要性、薬剤処方内容などを総合的に勘案し、「現在の医薬品処方が適正かどうか」を常に評価し、併せて、必要に応じて減薬や薬剤投与の中止などの見直しを行うことを具体的に提言した。

 この考えに基づき、2018年度診療報酬改定では、①「服用薬剤調整支援料(125点)」の新設、②「重複投薬・相互作用等防止加算」について残薬調整以外の場合を40点に引き上げるなどが行われ、③さらに、2020年度診療報酬改定では、「患者のための薬局ビジョン」や「高齢者の医薬品適正使用の指針」を経済的にサポートする基盤が整備され、「服用薬剤調整支援料2」が新設された。

 

 今回の通知のもとになったのが、厚労省の「高齢者医薬品適正使用検討会」が3月11日、ポリファーマシー対策の手順などをまとめた「病院における高齢者のポリファーマシー対策の始め方と進め方」である。

 手順書は、ポリファーマシー対策をゼロから始める病院向けの「始め方」と、ポリファーマシー対策をある程度は進めている病院向けの「進め方」で構成。「始め方」では、ポリファーマシー対策を始める前に、身近なところから始める方法、ポリファーマシー対策を始める際の課題と対応策で構成。「担当者を決める」など初歩的な内容から解説しているほか、ポリファーマシー対策を始める際の課題と対応策も示している。既に取り組んでいる病院向けの「進め方」は、ポリファーマシー対策の体制づくり、ポリファーマシー対策の実施、様式事例集-からなる。体制づくりに関しては、「運営規定をつくる」や「人員体制をつくる」など、一過性の取り組みで終わらせないための工夫を盛り込んでいるほか、「入院」「外来」に分けた「患者への対応」も記した。

 

 この手順書は、同検討会が2018年5月に公表した「高齢者の医薬品適正使用の指針【総論編】」と2019年6月公表の「高齢者の医薬品適正使用の指針【各論編(療養環境別)】」に基づく内容である。厚労省は今後、全国での活用を促しながら、2021年度にモデル事業を実施し、実用性などを検証する。モデル事業の内容は同検討会でも把握し、検証内容などを踏まえ、より良い内容への改訂などをさらに検討する考えだ。

【事務局のひとりごと】

 

 「スクラッチアート」をご存じだろうか。

 画用紙に思いの色々のクレヨンを使用し存分に塗りつぶす。そしてその上から黒のクレヨンで優しく塗りつぶしていく(この際、黒に限らず濃いめの紺などで濃淡などをつけてやると一層効果的らしい)。そして今度は一応真っ黒に埋め尽くされた画用紙を、思いの形に先がとがった固いもので削っていく。そうすると、えもいわれぬ色とりどりの輪郭を持った形があらわれるではないか!!

 未就学児、小学校低学年の図工などで誰しもが一度は経験されたのではなかろうか。

 クレヨン独特の特性がとても生かされたスクラッチアート。黒で塗りつぶすのはともかく、それぞれの色同士が混ざることはあまりない。

 

 今回のテーマは、クレヨンではなく、それを薬でやると、体の中で混ざってしまい、良薬である筈の薬によって、飲み過ぎてかえって体に良くない事象が起こってしまう、という「ポリファーマシー対策推進についてである。

 

 まずはこんなコメントを紹介したい。

 

〇看護師のコメント

 ポリファーマシーを解決するためには、患者(利用者)がどのような薬を服用しているのかが確実に把握できるシステムが必要だと考えます。その一つとしてお薬手帳はとても有効とは思いますが記入がない場合や、お持ちでない方もいます。ネットを利用し全国どこで受信しても(マイナンバーやID)番号を入れると病名や服薬内容が分かり、追加処方時に「有害」と判断されると赤字になるなどのシステムになると問題の解決になるのではと考えます。ただ、市販薬となると難しいです。

<訪問看護師>

 

 高齢者は機能低下により腎臓や肝臓への負担は大きく、多剤併用の身体へもたらたす影響は以前より考えていたことでした。しかし、現状ではそのような服用をしている方はとても多くポリファーマシーの推進や対策はとても遅いと感じています。

<訪問看護師>

 

 薬剤費=医療費が上がる、有害な症状が出現する、残薬が増える、医療保険(国の負担)が増える、などを考えると見直していかなければならない問題だと考えます。

<高齢者住宅に勤務する看護師>

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 ある高齢者施設に勤務する看護師から、ポリファーマシーについて考えることをコメントいただいた。

 また、こちらの施設では服薬管理も業務として行っておられる。

 

 服薬管理で気にかけていることや大変なことについてもコメントをいただいた。

 

〇看護師のコメント

 複数の医院を受診され薬が重複しているとき、双方の医師に確認を取り、薬の内容整理をしなければならない。

<訪問看護師>

 

 一包化された薬の数が異なるときがあるので確認がいる。

<訪問看護師>

 

 多剤併用してはいけない薬が分からない。

<訪問看護師>

 

 訪問看護師として利用者の訴えを主治医に報告する橋渡しの役割を担っていますが、上手に伝えないと内服の内容が何度も変わったり、錠剤が増えたりします。そのため、注意しながら慎重に観察することが難しいと感じます。

<訪問看護師>

 

 病院、薬局から飲み合わせによる有害症状などの注意書きなどある時は状態を注意深く観察していますが、重複投薬に対しての症状やどの組み合わせで注意が必要かはまだ知らないことが多いのでもっと情報を提供してほしいです。10錠ほど服薬されている方に関してはその薬が本当に必要なのかと感じることもありますが医師に直接聞くことはできません。

<高齢者住宅に勤務する看護師>

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 総じて感じるのは情報が少ないということだろう。また、医療の中のヒエラルキー、医師への敬意と、若干の遠慮がない交ぜとなっているが故の歯がゆさ、いろいろ感じるところだ。

 日々現場で業務に携わっておられる看護師の方々、ご苦労様です。そしてありがとうございます。

 

 厚生労働省からはこんなコメントだ。

 

〇まずは取り組みやすい範囲で活動を始めるポリファーマシー対策

 第12回高齢者医薬品適正使用検討会で厚労省の医薬・生活衛生局医薬安全対策課の担当者は、「ポリファーマシー対策の始め方」について、多職種連携によるポリファーマシー・カンファレンスを行いながら処方見直しに取り組むことが理想的だが、まずは取り組みやすい範囲で活動を始め、理解を得ながら活動を維持・拡大していくことで、より多くの医療機関でポリファーマシー対策が導入されることを期待していると説明した。

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 臓器別に患者を診る日本の医療体系、それはそれで当然良い面もある。それを「光」に例えると、「影」の部分がどうしても出てくる。ポリファーマシーの問題もその一つだろう。現実的なコメントであるが、草の根運動のように感じてしまうのは筆者だけだろうか。

 

 医師会からはこんなコメントだ。

 

〇ポリファーマシー対策で医療機関同士の情報連携の診療報酬上評価を

 中医協でのポリファーマシー対策を巡る論議で、日本医師会の松本吉郎常任理事は、ポリファーマシー対策として地域で療養を支える診療所などの医療機関と病院が、医療情報で連携する際の診療報酬上の評価も必要と訴えた。「医療機関から薬局へというのだけでなく、医療機関から医療機関への情報提供が大切」と指摘し、病院で減薬したのちに地域で療養を継続している状況などを診療所が病院へフィードバックする重要性を強調した。今村 聡日医副会長も、「医療機関同士の連携ということで病院の評価はあるが、開業医は継続の処方で結果を確認している。病院に情報を返す時の評価がないので、医療機関同士の情報連携の診療報酬上の評価もあっていい」と訴えた。

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 評価(報酬)があってもいい、のだそうです。

 ポリファーマシーは高齢者に多くみられる問題であるので、減薬することで薬価負担も減り、不思議なことに健康が保たれることにもつながるので、薬価が下がる分の医療財源を原資とすれば、1割(若しくは2割)負担は高齢患者だが、保険財源を使うことを検討しても良いのではないか?

 そんな「訴え」である。どんな職にあっても、他者から評価されるのは嬉しいものだ。ましてや報酬ともなるとインセンティブが働き、相乗効果が狙える可能性がある。

 

 日本看護協会からはこんなコメントをいただいた。

 

〇ナース・プラクティショナーによるポリファーマシー対策で成果

 日本看護協会は「NP(ナース・プラクティショナー)教育課程修了者の活動成果に関するエビデンス構築パイロット事業報告書」で、パイロット事業参加の介護老人保健施設ではNP教育課程修了者が、①処方内容を確認・ガイドライン等をもとに精査、②医師に提案し減薬、③全身状態の把握・管理など薬剤管理を行うことによって、総処方薬剤数を259剤から125剤に減らすことができ、1日1人当たり薬剤費を322.6円から55.6円に減額することできたと報告している。

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 何か事をなすには、とにかく誰かが責任をもって担当し、その存在が医師と双方向に良好な関係を構築すれば、成果は得られるということだ。薬剤費も8割以上の減。成果が得られるならば、モノから人へ、の財源移転は意外に奏効するのではないか?そんなことも感じさせるコメントだ。もっとも、SDGs的な観点から言えば、みんなで力を合わせて、極力お金を使わずに、かけなくて良い可能性のあるお金を使わないようにしよう、という方が望ましいのだが。

 

 医師からはこんなコメントをいただいた。

 

【病院勤務医】

〇主治医、各診療科の専門医と薬剤師が集まり、減薬を検討する会議を毎月開催

 毎月1回、各診療科の専門医と薬剤師が集まり、主治医に患者に関するプレゼンをしてもらっている。議論を交わし、患者1人1人のどの薬が減らせるか、病棟をラウンドしながら、実際に薬剤削減をやっている。減らした結果、病状がどう変化したかなどのフィードバックも会議で報告し合うことにしている。

 

【開業医】

ポリファーマシーは恐らく医療者が患者の身になって考えれば避けるようになると思うが、患者の立場になって考える時間を持たないことによると思われる。薬剤を減らすことに医療者の金銭的なインセンティブが発生しないために端を発している。ポリファーマシー実践加算なるものがあればよい。

 

【訪問診療医】

 1日に5件も回るような訪問診療では、医師が患者の服薬状況を把握できる時間がないのが現状。在宅医療で患者の服薬状況を把握するには、訪問看護師やケアマネジャー、薬剤師との情報共有など連携が必要である。

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 どのコメントもごもっともだ。時間と金銭的インセンティブ。今は働き方改革時間を効率的に使い、その中で最大限のパフォーマンスを出していこうという考え方だ。「時間がない」のが理由で実現できない、となると、そこには何らかのブレイクスルー」が必要だ。IoTなどを活用、というのが決まり文句であるが、果たして、ポリファーマシー対策推進で最も便益を享受するのは誰で、その便益向上のためにお金を出してくれるのだろうか?

 

 先ほどは訪問系の看護師からのコメントであったが、今度は病院勤務看護師からのコメントを紹介したい。

 

〇多剤投与の高齢者は、週1回投与の薬でも誤って毎日飲んでしまうおそれ

 糖尿病看護認定看護師。最近、糖尿病治療薬で1週間に1回使用するタイプの薬が出てきた。確かにその薬単独で見れば使用回数は減るが、毎日服用の薬を長年併用する患者にとっては、週に1回の薬が新たに処方されると、使用を忘れたり誤って毎日使ってしまったりする事例もみられる。適正に薬を使うには、実は患者さんの生活のアセスメントに基づく考え方が必要ではないかと思う。患者の一番近くで話を聞き、生活のリアルを知る看護師の役割は大きい。

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 エラー。医療機関におけるエラー要素は、結構患者であることも多い。患者を責めるわけではないが、この問題も非常に難題である。

 

 チーム医療なので、栄養士からもコメントをいただいた。

 

〇治療食による栄養管理において投薬治療が削減できるケースを検討・提案

 入院患者に対する管理栄養士の役割は、①治療食による栄養管理において投薬治療が削減できるケースを検討・提案する、②栄養補助食品の利用などから改善可能な例について検討・提案する、③必要に応じて栄養サポートチームや摂食嚥下チームなどと連携することであると思う。

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 皆プロフェッショナルである。だが、そのプロフェッショナル同士で、日々の限られた業務時間の中で、情報を共有し、連携し、決定し、協力して… うーん、時間がいくらあっても足りないような気がする

 

 薬剤業界からもコメントをいただいた。

 

〇タイムリーな情報という意味では「お薬手帳」が一番活用できる

 高齢者医薬品適正使用検討会で橋場 元・日本薬剤師会常務理事は、ポリファーマシー対策における「お薬手帳」の活用について、「タイムリーな情報という意味ではお薬手帳が今は一番活用できると思う。薬局も充実させて必要な情報を入れ込んだ形のお薬手帳にしていきたい」と述べた。

 

〇複数の医師から処方箋が集まる調剤薬局はポリファーマシーが一番把握できる

 複数の医師から処方箋が集まってくる調剤薬局はポリファーマシーが一番把握できる存在である。調剤薬局の薬剤師から処方医に多剤投与の情報を積極的にお伝えしたいが、どうしても薬剤師は医師に気後れしやすい。気兼ねなく情報を交換しあう信頼関係の構築が必要である。

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 ここでも医師への敬意と若干の遠慮が…。

 

 なかなかに難題であるが、取り組み事例もある。それを背景とした根拠があるからこそ厚生労働省も通知を出しているのだ。というわけで事例紹介をしたい。

 

〇多剤処方解消を目的に専門外来「ポリファーマシー外来」

 国立病院機構栃木医療センターは多剤処方解消を目的に専門外来「ポリファーマシー外来」を設置、多職種で対策して成果をあげている。医師、薬剤師、看護師等の多職種チームを結成し、5剤以上の薬を内服している入院患者で同意が得られた人を対象に、外来で薬の組み合わせを確認していく取り組みである。2015年1月から整形外科病棟で介入を開始したところ、5カ月で平均3剤の薬剤中止という成果を得た。

 

〇医療情報ネットワークを活用、地域の医療機関・薬局と処方内容や検査値を情報共有

 (株)日立製作所ひたちなか総合病院が主体となり電子カルテの一部を地域医療情報ネットワーク「ひたちなか健康IT ネットワーク」を通じて、地域の医療機関、薬局等に閲覧専用で公開。地域の医療機関や薬局がネットワークを通じて処方内容や検査値を確認し、処方見直しの提案を行うことができ、ポリファーマシーへの対応が可能となっている。地域の医療機関や薬局が、ひたちなか健康ITネットワークを通じて患者情報を閲覧し、処方見直しが必要と判断した場合には、モニタリングレポートをひたちなか総合病院薬剤部に提出する。提出を受けた薬剤部では、対象患者を総合的に判断し、処方医に連絡し処方見直しを提案する。

 

〇院内に地域連携担当薬剤師を配置、「薬薬」連携を通じたポリファーマシー対策

 香川県西讃地域(観音寺市・三豊市)の中核病院である三豊総合病院は、2017年に地域連携担当薬剤師1人を院内に配置することで、患者の情報を途切れることなく院内外の関係機関へ繋ぎ、退院後に薬学的な介入が必要と思われる症例のフォローを開始した。その結果、院内外からの問い合わせの増加や、退院後の患者情報のフィードバックが行われるようになった。さらに、地域連携担当薬剤師が自ら地域の薬局薬剤師やケアマネジャー、医師等のいる場に直接赴き、ポリファーマシーに対する内容を含めた地域連携の重要性について説明を行い、地域の多職種と関係を築くことで、継続的な患者情報の共有が進められている。

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 考えてみれば、例えば携帯電話(スマホというべきか?)の通話料は、すでにWeb上で明細を確認し、さらに「これをこうやって見直せば、〇〇円の節約が可能」などという情報が得られて当然の時代なのだ。電気代、ガス代も同様で、節約に関する情報は百花繚乱である。であるので、ポリファーマシー対策も当然何かできるはずだ、という気がしてきた。一体、何が?どこに?その障壁があるのか?

 

 医業系コンサルタントからもコメントをいただいた。

 

〇欠かせない薬剤師の気づきと患者とのコミュニケーション

 調剤薬局向けコンサルタント。ポリファーマシー対策の成功例に共通するのは、処方箋やお薬手帳の記載内容、あるいは患者の様子やヒアリング内容から、薬剤師がポリファーマシーを疑う気づきの力である。ポリファーマシー対策には、普段から「もしかしたら?」の視点を常に心の隅に置き、処方箋と服薬状況、患者の様子を照らし合わせていくことが求められる。日々の「当たり前」に忠実に向き合いつつも、常にその当たり前を疑う視点もまた、薬剤師にとっては欠かせないものだと言える。

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 診療報酬の財源配分では、やや対立構造にある診療側と薬剤側。ポリファーマシー対策においては、薬剤師や調剤薬局事業者の存在の活用最も実現に近いのかもしれない。

 

 最後にこんなコメントを紹介して締め括りとしたい。

 

〇ある高齢者:高齢者自身も「服薬リテラシー」が必要かも

 日本では75歳以上の4人に一人が7種類以上の薬を飲んでいるといわれる。高齢者本人も漫然と毎日薬を飲むのではなく、「お薬手帳」を見て自分がどのような薬を飲んでいるのか、飲み忘れがないかなど確認することが大切である。「服薬リテラシー」が必要ではないかと思う。

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 …ですね。ポリファーマシー対策もチーム医療の一環だ。チームには患者も含まれて然るべき。筆者はそう考えている。

 

 ところで先日、筆者が食べた(豚)肉そばは、「鰻と梅干」に代表される、良くない食べ合わせらしい。結構コンビニで売っているレンチンメニューでもありそうなのに…。意外なことに大根と人参もだめらしい。おでんやがめ煮(筑前煮)でしょっちゅう食べている。幸いお腹の調子は何ともなかったが、まずは身近な食べ物のポリファーマシーにも気をつけなければなるまい。

 

<ワタキューメディカルニュース事務局>