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No.703 政府の規制改革実施計画、オンライン診療・オンライン服薬指導の特例措置恒久化を打ち出す

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■規制改革実施計画でオンライン診療は2023年度から順次実施と明記

 政府は「経済財政運営と改革の基本方針2021」(骨太方針2021)6月18日、閣議決定した。それに先立つ経済財政諮問会議で菅 義偉首相は、「骨太方針では、まずは新型コロナ対策に最優先で取り組みながら、特にグリーン、デジタル、活力ある地方づくり、少子化対策の4つの課題に重点的な投資を行い、長年の課題に答えを出し、力強い成長を目指していく」と述べ、感染症によって有事の状況となった場合の病床の確保、早期の治療薬やワクチンの実用化などについて法的措置を速やかに検討すると表明した。

 焦点の一つだったオンライン診療については、「初診からの実施は原則かかりつけ医によるとしつつ、事前に患者の状態が把握できる場合にも認める方向で具体案を検討する」と記載した。同日閣議決定した「規制改革実施計画」では、「オンライン診療・オンライン服薬指導の特例措置の恒久化」が打ち出され、2021年度から検討開始、2023年度から順次実施(電子処方箋システムの運用は2023年度夏目途に措置)と明記された(図1 オンライン診療の推進(ICT、ロボット、AI等の医療・介護現場での技術活用の促進))。

 

 

 オンライン診療は2018年度から再診に限って解禁された。初診は2020年4月に新型コロナウイルス下の特例措置として認めていた。今回の規制改革実施計画で感染収束後も継続すると決まった。初診は過去に受診歴のある「かかりつけ医」を原則としつつ、健康診断の結果などで患者の状態が把握できれば、かかりつけ医以外も認めることにした。医師が事前に患者からオンラインで病気の履歴などを把握し、双方で合意する場合も可能とする。ただし、受診歴のない患者の初診については、診療録や診療情報提供書、地域医療ネットワーク、健康診断結果等の情報により患者の状態をあらかじめ把握することを条件とした。

 

 なお、オンライン服薬指導についても、オンライン服薬指導は患者がオンライン診療や訪問診療を受診した場合に限定せず、薬剤師の判断で初回からオンライン服薬指導することも可能とすること、介護施設等に居住する患者への実施の制約は撤廃することが実施計画に盛り込まれた。

 

■今秋策定に向け厚労省、オンライン診療の実施指針検討会で取りまとめ案を提示

 オンライン診療は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、時限的な措置で初診からの実施が認められているが、感染収束後の対応については、厚生労働省の「オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」で(1)定期的に受診している場合、(2)過去に受診歴がある場合、(3)過去に受診歴がない患者について、かかりつけ医等からの情報提供を受けた場合-を認める方向で議論がなされていた。

そのような中、同省は6月30日開いた検討会で、6月18日に閣議決定された規制改革実施計画やこれまでの議論を踏まえ、今後検討すべき事項の方針を示した取りまとめ案を了承した(図2 今後の方針)。

 

 厚労省が今後の検討方針として主に示したのは、(1)初診からのオンライン診療の取扱いについて(初診からのオンライン診療に必要な医学的情報の詳細、規制改革実施計画における「オンラインでのやりとり」の取扱いの詳細や実際の運用、初診からのオンライン診療に適さない症状・医薬品等)、(2)オンライン診療の推進について(医療提供体制におけるオンライン診療の役割について、規制改革実施計画における「オンライン診療の更なる活用に向けた基本方針の策定」について)、(3)その他、オンライン診療の安全性・信頼性に関する事項(初診・再診問わず、医師・患者の同意や、不適切な事例への対応等、安全性・信頼性の担保に関するその他の論点)の3つ。指針改訂までに同検討会で主に議論を進めるのは(1)や(3)となる見込みだ。

 

 規制改革実施計画で「初診からのオンライン診療は原則かかりつけ医による実施とし、かかりつけ医以外が実施する場合は医学的情報で患者の状態が把握できる場合とする」と示しているのを前提に、今後検討会では、医学的情報の詳細や、初診からのオンライン診療に適さない症状、医薬品などについて議論する。今秋中に指針改訂を目指す

 

 

【事務局のひとりごと】

 

 医療をテーマとしたドラマは、内容の安定性故、必ずといって良いほど毎クールで新番組が出てくる。高視聴率を稼ぐ可能性も高い。今夏はコロナ禍故なのか、比較的規模の大きい内容が多いような気がする。そして実際の医療現場では忌避されている(?)救急医療や災害医療ものほど、翻ってドラマとなると、観ているものに感動を与えると言ったら言い過ぎか。「ナイト・ドクター」、「TOKYO MER~走る救命救急室」はその救命救急(前者は夜間救命救急、後者は災害救急)がテーマとなっている。筆者個人の私見としては、期待を裏切らない内容であったと思う(※1)。

 また、コロナ禍で観客動員数がおそらく伸びていないだろう映画業界。こちらでも医療をテーマとした映画を、先日見た。「いのちの停車場(主演 吉永 小百合)」は、救急一筋で生きてきた外科医が、何と在宅医療で一人ひとりの いのち や人生、生き方と向き合う内容だ。小職は、年齢的に「サユリスト」といわれる世代ではないが、10分に一度くらい涙が出てくるような、いのちについて丁寧に描かれた、ヒューマンな映画であった(※2)。

 

 今回のテーマは、医療の未来の方向性を示す、政府による、いわゆる骨太の方針2021」の閣議決定と、オンライン診療・オンライン服薬指導特例措置恒久化についてである。

 

 経済界からのコメントである。

〇経済同友会代表幹事:なぜオンライン診療(緩和)に時間がかかるのか。変化しないことによるこの国の持つペナルティーはもっと厳しくなるはずだ

 経済同友会の定例記者会見で櫻田謙悟経済同友会代表幹事は、「コロナ禍におけるニューノーマルにおいて、変化しないことによるこの国の持つペナルティーはもっと厳しくなるはずだ。今回の新型コロナウイルスの危機をなんとか危機感に変えて、乗り越えていかなければならない。具体的には、なぜオンライン診療(緩和)に時間がかかるのか、なぜ人工呼吸器の参入承認にそんなに時間がかかるのか」、などと述べた。

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 確かにコロナ禍を機に、オンラインミーティングやリモートワークなど、一般企業において積極的な導入が行われ、いろいろあるのだろうが成果は出ているし、ビジネスの常識も一変した。これまで何度もイノベーションに取り組み、乗り越えてきた自負のある経済界がそのような考え方になるのは、ある意味当然と言えるのかもしれない。

 

 今度は厚労省のコメントを紹介したい。

〇厚労省医政局長:オンライン診療、デジタル庁での取り組みや診療報酬改定も含めて、政府全体として受け止め進めたい

 6月30日のオンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会で迫井正深医政局長は、検討会で医療全体の中でのオンライン診療の役割や活用についても議論が及んでいることに触れ、「実際に診療として活用する場面に議論が移っていることがありがたい。対面診療との組み合わせを強く意識し、大きなデザインとして働き方改革なども意識したい。デジタル庁の中での取り組みや診療報酬改定の話も含めて、政府全体として受け止めて進めていきたい」と述べた。

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 先日、来年社会人となる専門学校生の採用面接を、緊急事態宣言下ではあるが、最終面接なのでご本人方の了解を得た上で、リアルで実施した。予備選考はZoomで行ったのだが、やって分かったことは、リアル面接とオンライン面談では、その方の人となりについては、やはり会ってみないと分からない、ということであった。小職は最終面接のみ参加したが、予備選考の下馬評結果とは明らかに異なる人物像が浮かび上がってくるのである。オンライン面接だけで決めなくて良かったというのが筆者の本音である。危うく良い人材を逃してしまうところであった。

 我々一般人でもそう思うので、こと診療に関して医師からオンライン診療に対する慎重論が出るのは自然なことなのではないだろうか。今後もオンライン診療やオンライン服薬指導など、進んでいくことは間違いないし、反対しているものでもないが、採用面接を機に、そんなことも感じたのも事実である。

 

 海外のオンライン診療事情も紹介したい。

〇イスラエル:遠隔診療で神経学的検査や心肺モニタリングが可能

 「中東のシリコンバレー」と称され、毎年1,000件近くのスタートアップが起業するイスラエル。ヘルスケアのスタートアップ企業の1つMon4t社は、スマートフォンを使って遠隔診療で標準的な神経学的検査を行うモバイルアプリを開発。スマートフォンに内蔵されたセンサーを使用し、運動時や静止時のバランス、関節可動域などをチェックし、運動機能を評価する。また、ストループ検査(注意力や判断力を測る検査)や、記憶力や反応時間を検査する機能も搭載されており、認知機能の評価にも使用可能だ。患者の自宅でリアルタイムにモニタリングができることから、医療機関で行う検査よりも生活に近い環境で評価できる。同社のホームページによれば、すでにパーキンソン病や正常圧水頭症、ハンチントン病、新型コロナウイルス感染症後の後遺症の検査などに用いられている。

 また、Donisi Health社は、自宅での心拍数や呼吸の状態をモニタリングできるシステムを開発。非接触型の卓上センサーが照射する光で複数の生理学的指標を同時に測定し、反射パターンをAIベースの独自の検出アルゴリズムで解析することで、遠隔で心拍数や呼吸数をカウントし、心肺異常の指標(インジケーター)を検出できる。

 

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 先に触れた映画、「いのちの停車場」で描かれた、地方都市の在宅医療の現場風景とはまるで異なる世界だ。映画で描かれていた風景も現実だろうし、イスラエルで起こっていることも現実である。最先端と普遍的な生活とのギャップを感じざるを得ない。

 

 オンライン診療については、当初より設定されている点数の低さについて、診療側の不満もある。

 

〇オンライン診療は、対面診療の約7割という点数差はあまりにも大きい

 地方都市の中小病院長。医療資源が少ない地方では、医師自身が新型コロナにかかると即座に”医療崩壊”になるという危機感が強く、患者さん側の安全を考えてオンライン診療に踏み切った。しかし、対面診療よりも得られる情報量が少ないとはいえ、「対面診療の初診料288点」に対して、約7割の「オンライン診療の初診料214点」という点数差はあまりにも大きい。医療機関は遠隔診療のシステムを導入するための初期費用と、遠隔診療のためのシステムの利用料という負担を抱えつつ、対面診療よりも低い診療報酬で診療を行わなければならないのは、不条理である。

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 これも現実である。ご尤もな話だ。それでも、厚労省がこの声だけを拾い上げ、「じゃあ(点数を)上げましょうとはならないだろう。その上にオンライン診療を推進する動きにも拍車がかかってくる。点数が決まっていくためには、明確なエビデンスと議論を経る必要がある。とても時間がかかる。果たしてシステム導入の初期費用が低廉化するのが先か、点数が上がるのが先なのか?

 

 医師からもコメントをいただいた。

 

〇日医常任理事:対面診療を補完、『安全性と信頼性をベースにする』ことがオンライン診療の前提

 6月16日の日本医師会定例記者会見で松本吉郎常任理事は、「オンライン診療は解決困難な要因によって、医療機関へのアクセスが制限されている場合に対面診療を補完するものである。『安全性と信頼性をベースにする』ことがオンライン診療を行う前提である」との日本医師会の認識を改めて示した上で、「安全性と信頼性」を担保できる医師は、身近な地域のかかりつけ医とすることが大原則であると強調した。

 

〇耳鼻科医師:めまいで通院困難が患者にはメリット

 都内の耳鼻咽喉科クリニック。オンライン診療のメリットは、当たり前だが、自宅で待ち時間なしで診察を受けることができることが最大のメリット。このメリットが1番強く感じられるのがめまいの患者さんである。めまいがあるときは吐き気、嘔吐を伴うことがあり、とてもクリニックまで通院できない患者さんが多い。最近はスマートフォンの性能が向上しており、スマホの画面から患者の症状は十分に把握できる。

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 要は何でもかんでもオンラインでなくメリットがある領域には積極的に活用し、あまりメリットが得られない領域はリアルを重視せざるを得ない、そんなところに落ち着いていくのではなかろうか。

 

 看護師の意見も聞いてみた。

〇訪問看護師がオンライン診療を補助することで大きなメリットが

 在宅医療・オンライン診療が進む中で、スマホやタブレット端末の操作が不得手な患者を訪問看護師が補助することが期待される。専門職である看護師の知識・技術を活かし、例えば薬物治療にとどまらない治療も可能となるなど、大きなメリットがある。「D(医師) to P(患者) with N(看護師)」といわれ、スマホやタブレット端末などの操作が不得手な高齢の在宅療養患者などに対し、オンライン診療の折に、看護師・保健師が訪問し補助を行うものである。看護師が血圧測定をし、電子聴診器を活用して医師に心音をオンラインで伝達するなど、今後、訪問診療の場での活躍が期待される。

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 それで良いのだ、いや、それこそが良いのだと思う。たびたび出てくる「いのちの停車場」は、医師・訪問看護師・診療をサポートする人が、まさに一つのチームであった。映画だったので、その舞台である医療機関「まほろば診療所」の経営状態がどうだったのか、そこは全く描かれていなかったが、あんな取り組みを行っている医療チーム(いや、家族といって良いかも)が、経済を回せる報酬体系にはして差し上げて欲しいものだ。

 患者の一人に末期がんの元厚労省の高級官僚が出てきたが、その元官僚(患者)は、自分の病気で貴重な医療財源を無駄に使うわけにはいかないので、延命のための抗がん治療は行わない、という意思を貫き、この世を去っていった。その志は気高いが、誰もが良質な医療をより低廉な価格で受けることを目指して制度を作る側におられ、尽力してこられたお役人が、自らはその医療を受けようとしない、というのは、それはそれでどう考えるべきなのか。うーん、難しい問題だ。

 

 これまで、特にオンライン診療についてのコメントを紹介してきたが、オンライン健康相談も存在する。

 

〇オンライン健康相談は自費診療となることを明示すべき

 オンライン健康相談は「保険診療」には該当せず、患者が全額を負担する「自費診療」(自由診療)となる。厚労省のオンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会で、山口育子構成員(ささえあい医療人権センターCOML理事長)は、「患者に『オンライン健康相談・受診勧奨』は、自費診療であると明確に伝えるような仕組みを考えるべきだ」と指摘した。

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 健康診断は自費100だ。保険財源を使用するには、その原因となる病名があり、その病名に対する処方があって診療報酬となるのだ。厚労省からすれば、保険財源を使う必要のない自費診療なら、予防医療に力を入れて取り組んできた時のように、「どんどんやってちょうだいといったところだろう。負担する利用者からすると、その負担感(100%負担)と、想像している負担感(1割~3割)とで、あまりにもギャップがありすぎるので、明示は必要だという意見だ。まあそうですわな。

 

 掛け声としてはよほど進んでいるかに見えるオンライン診療だが、こんなコメントを紹介して締め括りとしたい。

 

〇医師会がオンライン診療の条件にあげている身近なかかりつけ医がいない

 オンライン診療を受けたいのだが、そもそも、医師会がオンライン診療の条件にあげている身近なかかりつけ医がいない。「マル適マーク」のようなオンライン診療が可能な医療機関の情報が欲しい。

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 すごいな。「マル適マーク」が出てくるとは。でもそのうちネットの口コミサイトでそういった情報はどんどん発達していくことだろう。特に都市部で。だからこそオンライン診療の点数設定については厚労省も慎重にならざるを得ない。我が国の、都心と地方の地域差は、同じ土俵で語るには、その差があまりにも大きすぎる…。

 

<ワタキューメディカルニュース事務局>

 

(※1)…ナイト・ドクター。いわずと知れたフジテレビ系「月9」枠。主演は波留。何となく「コード・ブルー ‐ドクターヘリ緊急救命」と雰囲気がカブっているような気がした。

 TOKYO MER~走る救命救急室。「ドラゴン桜」のあとを受け、TBS系「日曜劇場」の枠で放送開始。主演は「テセウスの船」で主演の竹内 涼真の父親役として好演した鈴木 亮平。鈴木 亮平扮するチーフドクターの喜多見医師による神業的に迅速なトリアージ、サブドクター等への的確な指示、蘇生、ERカー内でのオペ、消防隊の救助活動と同時並行での現場オペ 等、圧巻のオープニングで始まった第1話であった。石田ゆり子扮する東京都知事のガッツポーズ(のようなもの)が出てくるのもうなずけなくはない。

 歳のせいで涙もろくなった筆者は、ドラマを見ながらよく涙が出てしまう。今クールも、涙と同時に出てしまう鼻水を拭くティッシュが欠かせない…。

<筆者>

 

(※2)…真っ暗闇でカバンから手探りでティッシュを出すのに難儀した。しかも一度や二度でなく、頻回に涙が出てしまうたび、セットで鼻水だ。ティッシュの手持ちがなくて往生した。主人公の吉永小百合は、そのご年齢からは想像もつかぬほどかくしゃくとして、それでいて凛として、素直にすごいと感じた(冒頭の救命救急のシーンは体力的に少し無理があったような気がしないでもないが…)。共演の西田敏行、松坂桃李、広瀬すず、石田ゆり子、泉谷しげる、柳葉敏郎、問題も起こしたのだろうが伊勢谷友介、どの俳優も非常にいい味が出ていたと思う。「Station」のマスターもいい味を出していた。モンゴル料理を食べてみたくなった。

 歳のせいで涙もろくなった筆者は、ドラマを見ながらよく涙が出てしまう。今クールも、涙と同時に出てしまう鼻水を拭くティッシュが欠かせない…。

<筆者>