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No.622 診療報酬改定で退院支援加算を「入退院支援加算」に改称。注目される入退院支援の切れ目ない「ワンストップサービス」

2018年02月15日

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地域包括ケア構築のための取組の強化として「入退院支援加算」

 2018年度診療報酬改定では、入退院支援や地域との医療連携を強化するための点数設定が行われることなった。既に一部の大学病院や民間病院の中には、入院から退院まで一括して支援する患者サポートセンターを設置し、切れ目のない「ワンストップサービス」を行っている病院があるが、この試みが診療報酬として評価されることになる。

 

 昨年12月社会保障審議会医療保険部会・医療部会でとりまとめられた「平成30年度診療報酬改定の基本方針」では、地域包括ケアシステム構築のための取組の強化として、患者の状態に応じた入退院支援や医療連携を推進する観点から、退院支援加算を「入退院支援加算」と改称。①入院予定の患者に対する入院前からの支援の評価、②入院早期から福祉等の関係機関との連携が必要な者が算定対象に含まれることを明確化、③小児の退院支援を充実させる観点から、小児を専門とする医療機関や病棟に対応する要件の見直し、④地域連携診療計画を活用するため地域連携診療計画加算の算定対象病棟を拡大-などの見直しが行われることになった。

 

 退院支援に係る診療報酬は、1996年度(平成8年度)改定で総合的な入院治療計画の策定を評価した「入院治療計画加算」が新設。その後、医療機関の連携を推進する観点から2006年度改定で「地域連携診療計画管理料」「地域連携診療計画退院時指導料」が大腿骨頸部骨折を対象疾患に新設され、2008年度改定では対象疾患に脳卒中が追加された。一方、退院支援計画の策定と退院時の情報共有を推進するため、2008年度改定で退院調整加算と総合評価加算が新設、2010年度改定では、介護支援連携指導料、急性期病棟等退院調整加算、慢性期病棟等退院調整加算、新生児退院調整加算が新設されるなど、退院支援に関する診療報酬は年々強化されてきた。

さらに前回2016年度改定では、早期からの退院支援と関係医療機関との平時からの連携を推進するため、「退院支援加算1(一般病棟600点/療養病棟1200点)」「退院支援加算2(一般病棟190点/療養病棟635点)」「退院支援加算3(1200点)」「地域連携診療計画加算300点」が新設(一部改定)された。

 

 2018年度改定で退院支援加算を「入退院支援加算」と改称することになった背景には、①入院前の外来・在宅~入院中~退院後の外来・在宅まで、切れ目ない支援が重要である、②入院前の支援として、入院生活の説明、持参薬の確認、入院前に利用していたサービス等の確認が必要になっている、③退院支援・連携に関する評価の算定回数は、年々増加している、④退院支援では、福祉サービスなど入院前の支援状況を早期に把握し、関係機関等との連携が重要であるが、要介護被保険者であっても介護支援専門員との情報のやり取りが行われていないケースがみられる、⑤外来通院中の患者が自院に入院する際に連携を行う部署や窓口のニーズが高まっている-ことなどがある(図3 地域包括ケアシステムの構築~入退院支援)。

 

 

入院から退院まで「ワンストップサービス」行う患者サポートセンター

 ワンストップサービスとは、一度の手続きで、必要とする関連作業をすべて完了させられるように設計されたサービス。特に、様々な行政手続きをいっぺんに行なえる『ワンストップ行政サービス』のことを指すことが多い。ワンストップサービスの考え方を取り入れ、入院前から退院後の外来・在宅での療養まで切れ目なく提供しようというのが、2018年度改定で名称変更された「入退院支援加算」の考え方である。

 

 早くから国立大学病院として「ワンストップサービス」を展開しているのが、愛媛大学医学部附属病院だ。「患者から学び、患者に還元する病院」の理念の下、高度急性期医療を担う大学病院として全国に先駆け、2013年10月に、入院前から退院後まで一貫して患者・家族を支える「総合診療サポートセンター(TMSC:Total Medical Support Center)」を設置し、「地域完結型医療」を目指し地域連携を進めている。TMSCでは、院内の多職種がチームを組み、入院前から患者・家族に関する情報について入手・共有し、患者・家族の入院から退院後まで支援する。退院直前には、病棟と連携してリハビリスタッフがその患者が退院後、日常生活で困らないよう院内リハビリが進んだかを評価、薬剤師が服薬状況、栄養士が栄養状態のチェックを行うなどして退院に備える。また、TMSCの看護師やスタッフが患者の転院先の病院や診療所等を定期的に訪問する活動も行っている。

 

 民間病院でも手稲渓仁会病院(札幌市)が2016年10月から「患者サポートセンター」を設置し、入院から退院後の地域の医療機関との連携をワンストップで行っている。同センターには10室の個室があり、専門職員が入院から退院までの相談に応じている。また、麻生飯塚病院(福岡県飯塚市)では、外来入口を入ると直ぐのところに、外来受付・問診・入院受付が一括してできる「トリアージセンター」がある。また、地域連携を進めるため「ふれあいセンター」が設置され、①かかりつけ医からの紹介・逆紹介、②紹介された患者が最適な病床で治療を受けられるように病床運営を行う「病床管理」、経済的な相談や転院(所)・自宅退院等についてMSWが相談を行う「医療福祉相談」、④患者・家族の意向に沿って、安心して退院し在宅療養生活が送れるよう支援する「入退院支援」、⑤介護保険相談-などが一括して行うようにしている。

 今回の「入退院支援加算」の設定よって、病院のワンストップサービスに取り組む病院がさらに増えることが期待される。

 

 

関係者のコメント

 

<健保連理事:「退院支援加算にアウトカム評価導入を」>

 中医協の論議の中で、幸野庄司健康保険組合連合会理事は、退院支援加算を「入退院支援加算」と改称し内容も見直しを行うことに関連して、「退院支援加算1を取得している施設としていない施設で、平均在院日数に有意差がないことを問題視していた。退院支援加算がストラクチャー評価に偏っているのでアウトカム評価を入れてほしい」と要望した。

 

事務局のひとりごと

 

「ソレハイキモノデスカ?」

「ソレハダクトアタタカイデスカ?」

「ソレハトベマスカ?」

「ソレハオオキイデスカ?」

「ソレハニクヲタベマスカ?」

「ソレニハフカフカノケガワガアリマスカ?」

「ソレハキイロデスカ?」

    ・

    ・

    ・

「ソレハ“ゾウ”デスネ?」

 

 10年ほど前だろうか?おもしろプレゼントで「Q20」というおもちゃをいただいた。大雑把にいうと、20の問いに“はい”か“いいえ”(もしくは“分からない”)で回答し(おもちゃ本体の左右ボタンを使用)、質問が終了すると、プレイヤーが想像したものをおもちゃが当ててしまうという代物だ。当たると「エッヘン」というような表示が出てきて、こちらも「何で分かったの?」などと思ったものだ(※4)。今でも販売しているのだろうか?

 

 人間にとって、「吾が意を得たり」という気持ちが発生する時、それは「嬉しい気持ちになるのが普通ではなかろうか?

 逆に何回いっても理解してもらえないたらい回しにされるなどするとどんどん不快になっていくものである。

 そういった意味では最近、何かのコールセンターに電話すると、必ずといっていいほど、まずは音声によるガイダンスで自分の用件について1か2か3などの分類で番号を押し、用件が相手にとって良いように何度もスクリーニングされていく。さらに「サービス品質向上のために会話が録音させていただきます」と、やんわりと釘を刺され、仮にクレームの電話であったとしても、紳士淑女的な対応を求められる。前半部分は先ほどのQ20に似ており、後半部分は企業活動による危機管理や社員保護の観点、(顧客・企業お互いにとっての)サービス品質向上などの効果があるように思われる。

 

 2ヶ月に1回程度、筆者が会合などで行くホテルでは、ドアマンが筆者の顔をみると「○○様(筆者の名字)、ようこそいらっしゃいませ。本日は2階になります。」と笑顔で応対される。どこで筆者の顔と名前を覚えられたのかとても不思議だが、とても良い気持ちになる。「サービス業というのは顧客の想像を超えたサービスを提供した時に『感動』が生まれる」というようなセミナーを何度か受けた経験があるが、いつもお会いする宴会係の人ならいざ知らず、そう会話をしたこともなく、いつその客が来るか分からない状態のドアマンに名前で声がけされるというのは、「実に教育の行き届いたホテルだ」と、肌感覚で感じざるを得ない。それだけでそのホテルのファンは増えていくことだろう。だいたい、どの階に行っても、困っていると声掛けしてくれ、ホテル内での不自由を極力なくすために尽力してくれようとする気持ちが伝わってくる。

 

 「ワンストップサービス」という言葉から想定されるのは、情緒的にいうならば、そんな気持ちにさせてくれた上に、お役所などであっちに行って、今度はこっち、これはマイナンバーカードがないと受け付けられないので、もってきた時にもう一度手続きを・・・などというもどかしさを感じさせないようなものなのだろうか?

 

 翻って医療・介護である。病院に行く時の患者の心情は、決してポジティブに近い、とはいい難い。初診時などに至っては、(何らかの病気の症状のため)むしろネガティブだ。

 そんな状態で問いかけられるのが、例えば、この極寒の時期の熱発。まず「どうされましたか?」、「熱はどのくらい?」、「保険証は?」、「問診票を記入して」とまずたたみかけられるのである。予約もしていないので待たされることもしばしば。回りをみればマスクをしたご同輩がたくさん。診察してもらっても、(例えばインフルエンザ的症状だとして)タミフルやイナビルなどを処方してもらおうと思って来たのに、検査したら「陰性だったから、また次に高熱が出たら来てください」などといわれ、対症療法(解熱剤や痛み止め、整腸剤)しか取れない状況でやるせなく、思い足取りで帰路に着き、しんどい夜を明かす。そんなご経験はおありだろうか?(保険医療のルール上、決して間違ってはいないのだが)

 

 入院ともなればさらに大変だ。急性期病院といわれる一般病床、その上DPC算定病院では、患者の入院期間で、できるだけ単価の高い段階で次の病棟に転棟、若しくは転院いただきたいので、例えば整形の患者さんで身寄りもなく、若干の認知症が入り、長期入院が予想される、そんな患者はあまり受け入れたがらないだろう。次の転院先を探すだけでも一苦労である。

 現実には入院した段階で次の転院先を探しておいてくださいね、と病院から声をかけられ、あちこちの病院にあたるのは患者の家族だったりすることだってざらにあるだろう。

 

 それ故の「ワンストップサービス」を評価しようとする取組みの登場であるのだろう。

 

 コメントを頂戴した。

 

○鈴木日医常任理事:「ワンストップサービスが可能な日本型診療所と有床診療所、中小病院の入院機能」

 わが国の医療は従来からWHOより世界一と評価されるなど極めて優れたものだが、世界で最も高齢化が進行している中でピーク時には40~50万人分の看取りの場を有床診療所や病院以外に確保しなければならず,そのためには在宅医療への取り組みは不可欠である。さらに、それを中負担で乗り切るには、わが国の貴重な既存資源である専門医がかかりつけ医になるために、ワンストップサービスが可能な日本型診療所と有床診療所、中小病院の入院機能を活用して、地域性に応じて施設も在宅も活用する日本型の在宅医療支援システムの確立が必要である。(日医ニュース第1227号(平成24年10月20日)より)

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 そんな中、ワンストップサービスに関する先進的な取組みについてコメントを頂戴した。

 

○東京都の全都立病院に:「患者支援センター」を設置

 東京都は、地域医療機関等と連携を図り、患者が急性期を脱した後、安心して地域に戻れるよう、多職種によるきめ細かな相談支援機能を充実するため、多摩総合医療センターで「患者支援センター」のモデル事業を実施し、課題整理、効果検証を行った。これらの検証結果を基に、2015年6月までに全都立病院に「患者支援センター」を設置した。

 

○地域におけるヘルスケアサービスのワンストップ化:第1回日本サービス大賞総務大臣賞を受賞した恵寿総合病院

 石川県の社会医療法人財団董仙会恵寿総合病院は、統合電子カルテ(ICT)の導入により、診察・入院・投薬記録から、介護サービスの履歴や診察・検診の予約まで、患者一人ひとりの情報を一元管理。病院と介護施設が情報を共有することで、地域におけるヘルスケアサービスのワンストップ化を実現し、サービス産業生産性協議会(SPRING)主催「第1回日本サービス大賞」総務大臣賞を受賞した。

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 医療機関における電子化や、患者情報の共有化などの取組みは少しずつではあるがもちろん進化してきている。加えてIoTなどの先端技術の登場で、時代はどんどん便利になってきた。しかし、それだけで医療と介護と在宅医療(在宅での生活も含)を有機的に、しかもシームレス(段差なく)に連携を図ってワンストップにする、というのは、そう簡単に辿り着くものではないような気がする、というのは少し悲観的過ぎるだろうか?

 

 一方で、業界を問わず「ワンストップ」という取組みが成功している事例を紹介して締め括りとしたい。

 

○電子化により進む自治体のワンストップサービス化

 自治体では縦割り行政を廃し役所内の窓口を一本化する総合窓口を導入し、住民票や印鑑証明の交付、年金、福祉関係など、複数個所にまたがって提供されている関連手続きの窓口を電子化により1ヵ所に集約する、いわば窓口サービスの総合化を進め、市民にワンストップサービスを提供する取り組みが増えている。

 愛媛県松山市では2000年11月に総合窓口センターを導入して、市民課窓口業務を中心とした182業務のワンストップサービスを開始した。さらに、2012年7月には福祉総合窓口を導入している。また、新潟県長岡市では、2012年4月に市役所機能を長岡市シティホールプラザアオーレ長岡に移転させたのを機会にワンストップサービスを開始。部課をまたぐ事務について、来庁者ではなく市職員自身が入れ替わるようにし、引越しや出生など主要な届出の際に必要となる複数の手続きをまとめて受けることができるようになった。

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 近い将来、役所に手続きに行ったら、筆者の顔を見るなり、「○○様(筆者の名前)」、ようこそいらっしゃいました!今日はどんなご用件ですか?少しお疲れのご様子です。お待ちの間にハーブティーなどいかがでしょうか?少しはリラックスできますよ。こちらで静脈認証とスマートフォンをかざしていただけますでしょうか?手続きは3分程度で終了です・・・」想像以上のワンストップサービス。そんな対応をしてくれるのは、もはや人間ではなくロボットだ。

 

 もはや空想上のものではなくなってしまうような、そんな未来に辿り着くまで、そう長い年月はいらないのかもしれない。地域包括ケアにおいても例外なく・・・?

 

<ワタキューメディカルニュース事務局>

 

(※4)・・・仮に答えが外れた場合、追加で5問、質問があり、それにも“はい”か“いいえ”で回答する。当たれば「エッヘン」なのだが、それでも当たらなければ、確か「マイリマシタ」などという表示が出てゲーム終了となる。何とかおもちゃに当てられないものを想像してチャレンジしたが、結構当てられたものだ。ただし、20もの質問に回答するのがだんだん面倒になってくる。

 なぜ当たるか当時不思議に思ったものだが、考えてみれば、ツリー図を逆三角形に見立てて考えれば、納得もいく。夏の甲子園のトーナメント戦でも約50校が最大6回も勝利すれば優勝だ(もちろん、地方大会もあるのだがそれは置いておく)。1,2,4,8,16,32,64,128,256,512,1024,2048,4096,8192,16384,32768,65536,131072,262144,524288・・・

 つまり2の20乗だと50万以上の枝葉が存在することになる。“分からない”などの紛れはあるとしても、そのあたりをおもちゃメーカーが調整してプログラムすれば、大抵のものが当たるのではないか?メーカーの方、間違っていたらすみません。

<筆者私見>

 

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