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No.620 指導・監査等の返還金額、3年連続減の約89億円。厚労省、2016年度保険医療機関等の指導・監査実施状況を発表。

2018年01月15日

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■診療報酬の施設基準確認する適時検査は3割増加したが、返還金額は4割減少

 介護報酬との同時改定となる2018年度診療報酬改定の改定率は、12月18日の加藤厚生労働大臣と麻生財務大臣との大臣折衝で、本体部分0.55%増、薬価・材料価格見直し1.74%減で、ネット(全体)では1.19%減で決着した。

 そのような中、厚生労働省は12月21日、2016年度の「保険医療機関等の指導・監査等の実施状況」を発表した。診療報酬の施設基準を充足しているかどうかを確認する適時調査は3363件と2015年度から約3割増加した一方で、同調査に伴う返還金は76億3351万円から43億5931万円と、約4割減少。その結果、2016年度に確定した返還金額は前年度比35億4202万円減の88億9535万円と大幅に減少し、3年連続の減少となった(図4 指導・監査等の実施状況等の年度推移)。適時検査が増加した背景について同省は、2016年度から調査方法や重点的に確認する項目を標準化し効率的な検査ができるようになったため、また、返還金額が減少した理由について施設基準等への理解が進んできたためとみている。

 

 

 厚労省は、保険医療機関がルールを遵守しているかどうかを定期的に調査し、違反などが疑われる場合には指導・監査を行い、その結果、一番重い場合は保険医療機関等の指定取り消しを行う。2016年度の保険医療機関等の指定取り消しは17件(医科3件、歯科13件、薬局1件)、取り消し相当が10件(医科、歯科各5件)の計27件で、原因のほとんどが不正請求(架空請求、付増請求、振替請求、二重請求)。取り消しの発端は、保険者からの情報提供が18件を占めた。また、保険医等の取り消しは19人(医科5人、歯科13人、薬局1人)、登録取り消し相当は2人(医科、歯科各1人)の計21人だった。

 

■薬局、薬剤師の個別指導が増加

 指導には集団指導(新規に保険指定を受けた医療機関等や医師などを対象に、保険ルールを説明する講習会)、個別指導(違反などが疑われる医療機関等を呼び出し、面接懇談方式で、保険ルールを遵守するよう指導)、集団的個別指導(保険請求金額が高額な医療機関等を一定の場所に集め、簡便な面接懇談方式で、保険ルールを遵守するよう指導)の3種類があり、2016年度に個別指導(新規個別指導を除く)を受けた保険医療機関等は4523件で、内訳は、医科1601件(同35件増)、歯科1324件(同7件減)、薬局1598件(同92件増)と薬局の増加が目立っている

 個別指導を受けた保険医等は9291人(同1016人増)で、内訳は、医師4986人(同699人増)、歯科医師1979人(同134人増)、薬剤師2326人(同183人増)と、全職種で前年度を上回り、これも薬剤師の増加が目立つ。薬局の件数が増加した背景には、施設数が増加したためとみられる。

関係者のコメント

 

<中医協支払側委員:「厚生局に情報提供しても、なしのつぶてに終わる」>

 12月22日の中医協総会で「平成28年度保険医療機関等の指導・監査等の実施状況」の報告を受け、支払側の幸野庄司・健保連理事は「保険者が厚生局に情報提供する時は、裏取りをするなど覚悟を持って情報提供している。間違いないと思ったものしか情報提供していない。しかし、情報提供しても調査をしているのか知らされず全くなしのつぶてで終わってしまう」例もあるとし、情報提供した保険者が問い合わせた場合、進捗状況だけでも回答してほしいと求めた。

 

<支払側委員:「厚生局に告発ではなく、審査支払機関で医療機関との話し合いを」>

 これに対して、支払側の松本純一・日本医師会常任理事は、すぐに厚生局に告発するのではなく、審査支払機関で医療機関との話し合いを持てばどうかと提案した。

 

<中医協の日医代表委員:「日医も自浄作用を努めた結果だと思う」>

 指導・監査等の返還額が3年連続減少したのは、日本医師会として自浄作用を発揮した結果だと思う。しかし、平均点数が高いだけで集団的個別指導の対象となることを本当に嫌がっている先生が多いことを、ぜひ御理解いただきたい。

事務局のひとりごと

 

 「家から学校までの道のりを、行きは時速4㎞で歩き、帰りは一定の速さで自転車で帰ったところ、平均の速さは時速7㎞でした。帰りの速さは時速何㎞ですか?」

 

 せっかく小学3年生の息子の定期考査も終わり、はれて試験勉強から開放されたと思いきや、また別の問題の登場である。

 何やら簡単に解けそうで解けそうにない問題である。まあそれでも、方程式にしたら解けるだろう。そんな思いでペンを取る。

・平均の早さは7km/時、往復なので2倍する→14km

・片方が4kmなので、14kmマイナス4kmで10km

→帰りは10km/h

 

 何だか簡単すぎるような気もするが、こんなんでないの?と息子に見せると「違う!」という。「答えは28km/hだけど、解き方が分からないから教えて、っていってんの!!」

 28km/h? 確かに学校までの道のりが全く述べられていない問題だったので、そこが怪しいとは思っていたのだが、それでも二次方程式になるしなぁ、などと考えているうちに袋小路に入ってしまった。賢明な読者におかれては、筆者と同じ間違いをすることはないと思うのだが、こちらの解答が気になる方は(※3)をご参照いただきたい。

 

 コメントを紹介したい。

 

○厚労省保険局のコメント:「同じミスを指摘することも減ってきている」

 今回、返還額が大幅に減ったことについて厚労省の担当者は、「同じミスを指摘することも減ってきている。医療現場での理解が進んできているのではないか」とコメント。同省では2016年度から、適時調査の手法を見直し、職員が調べる施設基準や時間などを全国的に統一。この結果、作業の効率化が進み、調査の実施件数が増加したという。

 

○地方厚生局のコメント:「カルテの“基本のキ”がなっていない診療録が多すぎる」

 しかし、本省とは違って地方厚生局の担当者に以下のように述べている。

 ある地方厚生局の担当者は、個別指導において保険医療機関(医科)に改善を求めた主な指摘事項を例にあげ、「鉛筆書き、欄外記載、不適切な空行処理、修正液及び修正テープによる訂正、塗りつぶしによる訂正、独自の略称使用」などといったカルテが多くみられ、「そもそもカルテ(診療録)記載の“基本のキ”がなっていない」と嘆いている。

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 確かに手書きのカルテ時代は(もちろん現在も存在するが)、達筆(?)の先生による手書きの処方箋の、個性溢れる独特の字を解読するのにそれなりの修練が必要だったが、そのような「基本のキ」がなっていないカルテが存在するとは・・・。筆者が子どもに“個別指導”する時は、ものの考え方や字の書き方、修正の仕方も含め、きちんと基本を徹底しなければと思う。今、角界で話題になっている元横綱も、お兄さんも横綱であったが、そのお兄さんである横綱に、たしか「基本がなってない」と駄目出ししていた。基本は重要である

 

 指導を受ける側からのコメントを紹介したい。

 

○都内の病院長:「適時検査に対応するため、職員の研修体制が大切に」

 届け出られている施設基準の充足状況を確認するために行う「適時検査」、つまり臨場による施設基準の確認の担当者の中心は、法令系の事務官と保険指導看護師である。このため、病院側の調査対象者もおのずと、医事課等の事務職員と看護師管理職が中心となる。都内の民間病院の経営者は、「院長などの医師らよりも事務職員や看護師こそが肝心となり、これら職員に対する診療報酬請求事務に関する研修体制がますます重要となる」と述べる。

 

○調剤薬局の経営者:「個別指導には弁護士を帯同も」

 診療報酬改定でも年々厳しさを増す調剤報酬。薬局・薬剤師の個別指導が急増していることを受け、都内の調剤薬局の経営者は、「万が一、個別指導を受けるようになったら、保険薬剤師・保険薬局への指導監査に強い弁護士を帯同したい」と、不安を隠さない。

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 先の調剤薬局経営者の不安も、ある意味ごもっともだ。

 調剤薬局運営事業者からのコメントを紹介したい。

 

○調剤薬局運営事業者:「保険調剤薬局のチェーン薬局・薬剤師の質的向上は顕著」

 個別指導の結果では、開設者は指導結果の内容も踏まえ、同様の開設者となっている他の保険薬局について状況の把握を行い、業務内容等について必要な改善を行う等、保険調剤質的向上及び一層の適正化を図ることと通知されている。

 前述を踏まえ、保険調剤薬局のチェーンを個別指導の機会を増やすことにより、効率的に薬局の質的向上をはかることが可能であり、実際、現在に至っては薬局・薬剤師の質的向上は顕著である。

 しかしながら、地域による指導官の指導改善の解釈に違いがあり、広範囲のチェーン薬局にとっては、同一開設者の改善・対応を行うことも大きな労力となっているのも現実である(※4)。

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 チェーン展開しているが故に、情報の広まり方、正確性も担保されるわけだ。昨今、調剤に対する風当たりが厳しいが、請求業務の質的向上には貢献度大である。

 ただ、医科でもそうなのだが、地域により解釈の違いに悩まされるのは調剤も同様か(※4)。

 

 貴重な社会資源である医療を安定して持続し続けるためには無駄に使われる財源には目を光らせるのは当然だが、昭和の時代、どちらかといえば「性善説」重視であった日本社会が平成となり年を追うごとに、「性悪説」を前提とした社会システムになりつつあるのは(すでになってしまっているのかもしれないが)なんとなくさびしいものである。さびしいと感じているのは筆者だけだろうか。

 

 結びにこんなコメントを紹介したい。

 

○「診療報酬は“善意で成り立つ社会システム”ということを忘れないで欲しい」

 今から10年近く前、診療報酬を稼ぐために不要な治療や検査を繰り返し、患者らを騙し、不要な手術を行うことを承諾させて手術代を騙し取り、さらに不適切な手術と処置により患者を死亡させた事件が関西であった。全額公費負担となる生活保護受給者の診療報酬システムを悪用した事件であったが、被害を受けた関係者の一人は、「診療報酬制度は、“善意で成り立っている社会システムの1つ”であり、国民の税金・保険料で成り立っていることを忘れないで欲しい」と強調する。

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<ワタキューメディカルニュース事務局>

 

(※3)・・・「平均の速さ」というのは、「往復の距離」÷「往復の時間」で求める。

普通の「速さ」とは異なる。

まず、家から学校までの距離を仮に28kmとしておく。28というのは4と7の最小公倍数(共通の倍数のうちで一番小さい数:例えば100kmと置いても解くことが可能。中学校レベルの数学だと、この仮定の距離にa などの文字があてられる)。

すると「往復の距離」は56kmとなる。

「往復の時間」は56km÷7km/h=8時間

行きは28km÷4km/h=7時間かかっているから、

帰りは8時間-7時間=1時間

よって帰りの速さは28km÷1時間=28km/h

<筆者の義理の兄:数学教師>

 

→「a」か!。そういえばあったあった。χとyとは別のアルファベットが使われていたことを思い出す。

因みに筆者の息子が、28km/hという答えだけを知った時に、解答を導き出すための数式が、4×7=28 であった。初見時、「何じゃそりゃ!?」と突っ込んだのだが、たまたま最小公倍数と同様の値が正解だっただけに、あながち絶対的な間違いとはいい難い・・・。しかし小学校の算数でこんな問題あったかなぁ?

<筆者>

 

(※4)・・・例えば大阪で指摘をうけたA事項を全国へ発信しても 「東京ではB事項が大切でA事項はどちらでもよい」 というようなことがよくあるので、周知するための教育ツールなど、地域ごとに作成する必要があり、対応に労力が必要なのだそうだ。

<WMN事務局>

 

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