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No.576 診療報酬改定で、回復期リハビリにアウトカム評価が導入 懸念される?クリームスキミング(いいとこ取り)

2016年04月15日

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■ 質の高いリハビリ推進のため、効果が低いリハビリは包括化

 

 4月から施行された2016年度診療報酬改定では、急性期後・回復期入院については、担い手を増やす観点から実質的に要件が緩和される一方で、回復期リハビリテーション病棟ではリハビリによる改善実績が一定水準を下回る場合、点数が包括化されるなど、診療の質に踏み込んだ評価が導入された(図1 質の高いリハビリテーションの評価等、患者の早期の機能回復の推進)。

 現行では疾患別リハビリは、患者1人1日当たり9単位まで出来高算定できる。しかし、改定後は、質の高いリハビリテーションを推進する観点から回復期リハビリ病棟入院料にアウトカム評価を導入し、①1人当たりの1日リハビリ提供単位数、②1入院当たりの平均的なADLの伸び-を3カ月ごとに集計し、2回連続して一定水準に達しないと、6単位を超えたリハビリテーションは入院料に包括される(図2 質の高いリハビリテーションの評価等)。

 

■ アウトカム評価を導入で、リハビリの効率性を高めるのが厚労省の狙い

 リハビリの改善実績は、1入院当たりの平均的なADLの伸びによって決定。具体的には、「各患者の入棟時から退棟時までに増えた運動項目のFIM機能的自立度評価票得点の総和」を、「患者ごとに在棟期間を算定日数の上限で割った値の総和」で割った値をもとに判断される。3カ月ごとに改善実績を集計し、(1)1人・1日当たりの平均リハビリ実施単位数が6単位以上、(2)改善実績が27未満―に2回続けて該当した場合、一定の水準を下回ると見なされ、1日6単位を超える疾患別リハビリ料が入院料に包括される。包括された分のリハビリの実施単位数は、「リハビリテーション充実加算」の要件にあるリハビリの総単位数にも含められなくなるため、同加算の算定も難しくなるとみられる。改善実績の値は、リハビリによってFIM得点を改善させるか、在棟期間を短くすることで高くなる。アウトカム評価を導入することで、リハビリの効率性を高めるのが厚生労働省の狙い。

 

 アウトカム評価は、今年(2016年)4月1日以降に入院した患者について、来年(2017年)1月から実施。したがって、最初に疾患別リハビリ料の算定制限が生じるのは来年(2017年)4月からとなる。なお、一般的にリハビリの効果が出にくい、高齢者や認知症患者など一定の患者はアウトカム評価の対象から除外される。

関係者のコメント

 

<武久日慢協会長:『リハビリ力』と『ケア力』が重要だ>

 日本慢性期医療協会の武久洋三会長は、3月10日に開かれた診療報酬改定に関する記者会見の中で、「これからの病院は、疾病の治療だけでなく、患者が日常に速やかに帰れるような『リハビリ力』と『ケア力』が重要だ」と、回復期リハビリへのアウトカム評価導入に前向きな考えを示した。

 

<宮嵜厚労省医療課長:アウトカム評価導入クリームスキミングの可能性も>

 厚労省保険局の宮嵜雅則課長も、平成28年度診療報酬改定の各種団体による説明会の席上で、リハビリテーションや手術などにアウトカム評価を取り入れた場合のデメリットとして、「医療機関が病状の軽い患者や症状を改善しやすい患者ばかりを集めてリハビリを行う、クリームスキミング(いいとこ取り)が生じる可能性がある」との懸念を示している。

 

<岩中外保連会長:手術等へのアウトカム評価拡大にはNCD に基づくエビデンスで対応>

 100外科系学会が加盟する外科系学会社会保険委員会連合(外保連)の岩中督会長は、今改定に関する見解を示した3月22日の記者会見で、今後、手術等の外科系診療のアウトカム評価が拡大される動きに対して、「日本外科学会などの外科系学会が構築を行っているNCD(ナショナル・クリニカル・データベース)に基づき、しっかりエビデンスを示して対応していきた」との考えを示した。

 NCB(National Clinical Database)とは、2011年から日本外科学会を基盤とする外科系諸学会が協力し手術症例を入力している症例データベース。2014年3月末時点で400万件を越える手術情報が4105施設から集積された。この巨大なNCDデータベースは、今後専門医申請のための症例実績を証明するインフラとして活用されるだけでなく、手術成績からみた医療評価も可能になる。

事務局のひとりごと

 

「結果にコミットする」

 最近「コミット」という言葉をよく耳にするのはCMの影響か。

 聞くところによれば、この会社のインストラクターの報酬は、申込者が16回に亘るプログラムの中で目標達成時に、大幅に支払われるインセンティブがついているそうだ。だから結果にコミットしようと頑張るという訳だ。従って、コミットできない場合は、コーチ料としての定額授業料相当が支給されるのみなのだという(談:筆者の知り合い)。

 確かにCMで流れる芸能人の体型は驚くべき「ビフォーアフター」だ。

 40~50万円以上のお金を支払ってでも申し込む以上、受講者本人にも相当の覚悟があるはずだ。しかしやはり中には挫折してしまう人もいることだろう。結果にコミットできなければ、インストラクターにとっては自らの収入に関わるので一大事だ。

 インストラクターとて人の子だ。いろいろな性格の人がいるだろう。優しいタイプ、スパルタタイプなどなど…。受講者とは一蓮托生になるわけだが、根気強く指導をしていく中で、いくら顧客とはいえ怒鳴りつけたい時があるかもしれない。

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 「(結果は出ていないのかもしれないけれど)努力はしています!」。

 「努力だ?それはお前の主観だ。努力なんて誰だってしているんだ!お前が努力しているかどうかを決めるのはお前じゃない。俺(上司)だ!」

 社会人になってすぐ営業に配属されて2~3年目の頃、数字に苦しみながらの毎日で、目標設定が高すぎると感じる月が年に何回かあった。前年実績がやたらと高かった時の次の年にはそうなりがちだ。すぐにあれやこれやの言い訳を口にしたくなる。

 営業所長とそんな遣り取りをして怒鳴られた昔を思い出してしまった。真っ赤な怒り顔、あの声がよみがえる。それでもあきらめずにやったよなあ、と自分で思う。多少気分屋なところはあったが、本気で怒り、指導してくれた元上司には今でも感謝の気持ちで一杯だ。営業は終わりのないマラソンだ。月末にゴールしたと思えばまた次の日(月初)から新しい目標が立ちはだかる。

 企業活動における営業目標は常に結果が求められる。数字を追い求める営業系職種の方々は、今でも上司とこんな会話をしているだろうか。それとも現代において、こんなスパルタ的遣り取りは流行らないのだろうか…。

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 今後医療・福祉においても、より結果(アウトカム)が求められることになる。エビデンスに基づくことが前提だが、レセプト(請求)が自己申告制であるため、限られた財源である保険料(一部税も入るが)を、無駄や不正なく、より効率的に支払うために導入される手法だ。

 医療提供側の努力だけではどうにもならないことだってあるだろう。「チーム医療」には、治ろうとする患者もチームの一員として努力していかなければならないのだろう(※1)。その上、効率よく(楽して)成績を上げようと思ったらお上が「こら!」とクギを刺す

 

 「クリームスキミング」。何となく甘そうなイメージがする言葉だが、点数設定からもたらされる結果と、現場の努力のことを思うと、先行きは辛口だ。

 まずは来年1月から集計(データ取り)が開始され、(来年の)4月からアウトカム評価が始まる。思わず改善しやすい患者(データが良くなる患者)を集めたくなるところだし、データ取りの段階は低く抑えたくなってしまう。

 患者の選別をしては怒られるのだろうが、医療機関の選別はますます厳しさを増していく。

 

 回復期リハ患者抱える家族の声をいただいた。

 父親が脳卒中後のリハビリで回復期リハに入院しているというある家族。「質の高いリハビリを実施し早期退院を促すとのことですが、在宅や通院でのリハビリなど、退院後の体制が十分確保されるかどうか、不安も感じています。

 

 施設から在宅へ。「点数誘導」と「ふるい落とし」だけで体制確保は実現できるのだろうか。課題は山積みだ


<ワタキューメディカルニュース事務局>

 

 

(※1)……新聞にも似たような内容が載っていた(3/30付 日経新聞1面 医出づる国)。

<WMN事務局>

 

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