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No.572 2016年度予算案で48億円から82億円と大幅増額となった認知症高齢者対策

2016年02月15日

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■ 新オレンジプランに基づき認知症対策予算が急増

 

 政府は1月22日、「一億総活躍社会」の実現に向けて子育て支援や介護サービスの拡充などを盛りこんだ一般会計の総額で過去最大の96兆7218億円となる2016年度予算案を国会に提出した。このうち歳出は「社会保障費」が高齢化を主な要因に2015年度より4412億円増えて31兆9738億円となった。

 

 厚生労働省の2016年度予算案は30兆3110億円(対前年度伸率1.3%増)で、このうち老健局計上分は2兆8890億円(同3.8%増)。この中で目立つのが、48億円から82億円に倍増近くとなった「認知症高齢者等にやさしい地域づくりのための施策の推進」だ。2015年1月に策定された「認知症施策推進総合戦略」(新オレンジプラン)に基づき、早期診断・早期対応を軸とした認知症の容態に応じた切れ目のない適時・適切な医療・介護等の提供が図られる仕組みを構築するなど、認知症高齢者等にやさしい地域づくりを推進する(図1:認知症施策の推進について)。

 従来から進めてきた認知症に関連する地域支援事業では、「認知症初期集中支援チーム」を地域包括支援センター、認知症疾患医療センター等に配置し、認知症専門医の指導の下、保健師、介護福祉士等の専門職が、認知症の人やその家族に対して、初期の支援を包括的・集中的に行い、自立生活のサポートを実施する(316個所→911個所)。ちなみに、認知症初期集中支援チームは2018年4月から全市町村に配置される予定。

 

 また、認知症の人ができる限り住み慣れた良い環境で暮らし続けるように、①市町村ごとに認知症疾患医療センター等の医療機関、介護サービス事業所や地域の支援機関の間の連携支援や認知症の人やその家族を支援する相談業務等を行う認知症地域支援推進員を設置し、②地域の実情に応じて、一般病院・介護保険施設などでの認知症対応力の向上、認知症ケアに携わる多職種の協働研修、認知症グループホームなどでの在宅生活継続のための相談・支援及び認知症カフェ等の設置やボランティアによる認知症の人の居宅訪問等を推進する(580個所→1094個所)。

 

 

■認知症の医療・介護連携のモデル事業

 「新オレンジプラン」の主なポイントは、(1)医療・介護等の連携による認知症患者への支援、(2)認知症の予防・治療のための研究開発、(3)認知症高齢者等にやさしい地域づくり-3点。

 認知症高齢者等にやさしい地域づくりを反映して、2016年度予算案では認知症施策の総合的な取組として、新規に「認知症医療・介護連携の枠組みのためモデル事業」に5200万円を計上(図2:認知症医療・介護連携の枠組み構築のためのモデル事業)。認知症の容態に応じた適時・適切な医療・介護等が提供される仕組みを構築するため、都道府県と保健所が中心となって、二次医療圏単位で認知症に関わる医療機関と圏域内の市町村の地域包括支援センター等が集まる場を設け、認知症医療と介護の連携の枠組みを議論し、市町村の地域ケア会議を通じた適切な認知症医療・介護の連携が行われるようにするためのモデル事業を実施する。

 さらに、一部新規として「若年性認知症施策」(8700万円)計上。若年性認知症に関する相談から医療・福祉・就労の総合的な支援を実施するため、若年性認知症の人の自立支援に関わるネットワークの調整役を担う「若年性認知症支援コーディネーター」を配置するなどの取組を推進する(図3:若年性認知症施策総合推進事業)。

 このほか注目されるのが、認知症高齢者等の権利擁護に関する取組の推進だ。認知症高齢者等がその判断能力に応じて必要な介護や生活支援サービスを受けながら日常生活を過ごせるよう、①成年後見制度の普及・利用促進、②認知症高齢者等の権利擁護に関わる人材の育成とその活動を支援する体制の整備、③市民後見人育成・活用推進事業(新規)-を進める。

 

 地域包括ケアシステムの実現に向けて、医療・介護の連携を図り、認知症高齢者を地域で支えていく体制づくりを意識した認知症対策予算案となった。

関係者のコメント

 

<三浦老健局長:「新オレンジプラン踏まえ一層に認知症対策」

 三浦公嗣・厚労省老健局長は今年の年頭所感の中で、「厚労省と関係11府省庁が共同して策定した認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)に基づき、より一層の認知症施策の充実を図りたい」と、認知症対策を重点施策にあげている。

 

 

<介護ジャーナリスト:「診療・介護報酬同時改定も踏まえた認知症予算案」>

 今回大幅増額となった認知症対策について或る介護ジャーナリストは、「2015年度介護報酬改定では、中重度者や認知症対応を重点評価した改定が行われた。診療報酬と同時改定となる次回2018年度介護報酬改定では、2016年度予算案に盛り込まれた認知症対策について医療・介護連携を評価した介護報酬改定が行われるのではないか」と、2018年度の医療・介護報酬同時改定を踏まえた動きを指摘している。

 

 

<認知症カフェ運営者の声「ボランティアの研修が重要に」>

 認知症高齢者対策の中には、認知症の人や家族などが集まる「認知症カフェ」で交流しているボランティアが、認知症の人の自宅を訪問する事業(関係費26億円)が計上された。認知症カフェは認知症の人や家族が、地域住民や専門職とお茶を飲んだり食事したりしながら情報を共有する場で、2014年度には全国655カ所での運営実績がある。「新オレンジプラン」にもカフェの設置推進を盛り込まれている。

 認知症の家族の会で認知症カフェの運営にも携わる関係者は、「認知症カフェでボランティアが友人としてしっかりした信頼関係を築くことが重要だ。さらに、認知症の人の自宅を訪問することになることから、ボランティアが研修などで認知症に関する知識を深めることが望ましい」とコメントしている。

事務局のひとりごと

 むかし、むかし、わがままな殿様が国を治めていました。殿様は年寄りが大嫌いでした。

 ある日のことです。殿様は、家来に国中に立て札を立てるよう命じました。立て札には、こんなことが書いてありました。

 「六十を過ぎた年寄りは山に捨てるべし。従わない家はみなごろし。」

 誰もが、家中のものが殺されるのを恐れて、殿様の命令に従わざるをえませんでした。

 

 さて、年老いた母親をかかえた若者がおりました。

 「息子よ。私は六十です。山に捨てておくれ。」

 「お母さん。そんなひどいことはできません。」

 「隣の家のおばあさんも、前の家のおじいさんも、もう山に捨てられました。悩まなくてもいいですよ。」

 若者は、しぶしぶ母親を背中に背負うと、山を登りました。でも母を山に置き去りにすることはできません。母親を背負って、夜こっそり家に戻りました。そして、裏の納屋に隠しました。

 

 数日たった日のことです。殿様は、村人に灰の縄を作るよう命じました。

 「お母さん。お殿様が灰の縄を作れとのことです。やってみましたが出来ません。誰もできないと、年貢が高くなります。」

 「息子よ。それは簡単ですよ。教えて上げましょう。」

 息子は、言われた通り、藁縄の輪を作ると、それを塩水の中に入れ、乾かして燃やしました。

 若者は、慎重に、それを殿様のところに持って行きました。

 

 「お主、なかなかやるな。良かろう。それでは、もう少し難しい問題を出そう。これは、一本の棒である。どちらが根の方で、どちらが枝の方か、一両日中に、はっきりさせなさい。」

 

 若者は、棒を家に持ち帰りましたが、途方にくれ、母にたずねました。

 「簡単ですよ。水の入った桶を持ってきなさい。」

 息子は桶を用意し、棒を水の中に入れました。

 「見てご覧。下にある方が根っこで、浮いた方が枝ですよ。」

 

 若者は殿様の前で、答えを言いました。

「やるな。それでは一番難しい問題を出そう。叩かなくても音が出る太鼓を作ってきなさい。」

 若者は、真っ青な顔をして太鼓を携えて家に戻ると、母に助けを求めました。

 

「とても簡単ですよ。山で蜂を数匹捕まえてきなさい。」

 母親は、少し太鼓の皮を緩めると、蜂をその中に入れ、また皮を締めました。太鼓が音を立て始めました。

 若者は音のする太古を殿様に渡しました。

 

 「参った。そちは一人で三つの難題を解いたのか。」

 「お殿様、実を申しますと、問題を解いたのは、私ではなく、母親です。お殿様は、年寄りを山に捨てるよう命じました。でも私は、そのような残酷なことは出来ませんでした。母を納屋に隠しました。年寄りは、体は弱くなっても、若い者より物知りです。」

 殿様はしばらく考えて言いました。

 

 「その通りだな。わしが間違っていた。もう年寄りを山に捨てるのはよそう。」

 お殿様は、若い者は年寄りを大事にするべし、というお触れを国中に出しました。(2004.8.23)

 姥捨て山(うばすてやま)<インターネット検索画面より引用>

www.geocities.co.jp/HeartLand-Gaien/7211/…/ubasutej.html

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 小学校時代の記憶に残っている「姥捨て山」という物語。今になって読み返してみるとなるほど、こういう話だったのか、と絵本を見ていた当時を思い出す。「認知症高齢者対策」とは若干、趣きが異なるのだろうが、当時の平均寿命と現代の平均寿命を比較すると、若年性認知症の問題は別として、現代ほど認知症高齢者の問題で悩む方は少なかったのではなかろうかと推察される。

 とはいえ、今も昔も、言い方は悪いが、社会的弱者に対する「封じ込め」という考え方が風潮としてあり、このままでは財源的に社会保障システム全体が行き詰る可能性が高いため、今度は「社会全体でお互いがお互いを支えていきましょう」という考え方が叫ばれるようになってきた。現代の政治に、社会に、姥捨て山の殿様が改心した後のお触れにみる見識はあるのだろうか。

 

 「一億総活躍社会」の実現に向け、厚生労働省ではあらゆる施策が講じられているわけだが、精神病床に入院されている患者のうち、7万人を一般社会生活の中で暮らしていただく社会実現のためには欠かせない問題の一つだ。地域包括ケアの考え方にも十分リンクしていく必要があるだろう。

 

 厚生労働省によれば、2025年には認知症の方々が全国で700万人を超えるという推計値が出ている。65才以上の高齢者のうち、5人に1人の割合だ。今回、認知症のご家族を持つ方々の声を取材していただいた。

 生の声を目にすると、認知症高齢者の問題は今後誰にでも起こりうることであり、この方々のことをまわりにいる家族だけが悩むのではなく、地域ぐるみで支えていく仕組みがいかに大切か、ということを考えさせられる。今後も認知症対策として先進的な事例があれば逐次紹介していきたい。

 

◎認知症のご家族を持つ方々の声

 

  • 「悩んでいるのは自分だけじゃないんだ」

 都内、山の手の閑静な住宅街にある認知症カフェ。喫茶店でもないのに、賑やかな場所がある。この認知症カフェには、認知症のお年寄りとその家族、近所の医師、そしてボランティアが集う。ここに週2回ばかり通っている70代の認知症の母親の面倒をみている実の娘さんは、「認知症カフェに出かけてみて、悩んでいるのは自分だけじゃないんだって、ホッとしました」と、悩みを抱えた家族が語り合うだけでも安心すると言う。

 

  • 「失禁など出先で失敗しても、同じ認知症の仲間がいるから気兼ねなく、安心して過ごせる」

 認知症の人の多くは、外出先での失敗などを経験してしまうと、「また同じようなことを繰り返してしますのでは?」「出かける自信がない」と不安を感じたり、家族も「周りに迷惑をかけることを考えると、不安」という声がよく聞かれる。日常的に気兼ねなく出かけることができる認知症カフェでは、「失禁など出先で失敗しても、同じ認知症の仲間がいるから気兼ねなく、安心して過ごせる」(横浜市の60代の若年性認知症を抱える家族)と、外出する機会が増えたと語る。

 

●「これからの時代、認知症になる人は増え、街や周囲に当たり前にいるようになると思います。家族としては、“個性”と受け止め、鷹揚な気持ちで接していると、患者である妻の笑顔が増えて来ているように感じます。」(東京都、介護者の60代の夫)


<ワタキューメディカルニュース事務局>

 

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