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565号 健康サポート機能を有する「かかりつけ薬局」の要件 服薬指導の一元的把握、24時間在宅患者からの相談体制など

2015年10月15日

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■健康情報拠点薬局(仮称)は、名称は「健康サポート薬局」に
 厚生労働省は9月24日、「健康情報拠点薬局(仮称)のあり方に関する検討会」(座長:昭和薬科大学学長の西島正弘氏)の最終報告書をまとめ、同省ウェブサイトで公開した。結論が注目されていたOTC薬の取り扱いについては、薬効群や品目数など具体的な取り扱い内容は要件にせず、「利用者が適切に選択できるよう、供給機能や助言の体制を有していること」との表現にとどめた。また、名称は「健康サポート薬局」に決定した。ホームページ上で公表する考えで、来年4月からスタートする予定。

 検討会は健康情報拠点薬局を「かかりつけ薬局としての基本的な機能を備えた上で、特に優れた健康サポート機能を有する薬局」として定義し、具体的な機能や要件を検討。9月14日の最終会合で、服薬指導の一元的把握や24時間在宅患者からの相談に応じる体制など基本的な機能要件図5) については大筋で合意していた。しかし、OTC薬の取り扱いと、当初検討されていた名称である「健康づくり支援薬局(仮称)」については、最後まで折り合いがつかず、結論は座長に一任されていた。


 最後までもめていたOTC薬の取り扱いに関する要件は、最終的に、「要指導医薬品や衛生材料、介護用品などについて、利用者が適切に選択できるよう供給機能や助言の体制を有していること」という表現になった。さらに、「その際、かかりつけ医との適切な連携や受診の妨げとならないよう、適正な運営を行っていること」という一文が加えられ、OTC薬の取り扱いの要件化に反対する日本医師会に配慮した内容となった。
 かかりつけ薬局の構想は2013年6月に策定された政府の日本再興戦略で薬局を地域に密着した健康情報の拠点とし、薬局と薬剤師を活用したセルフメディケーションを推進することが盛り込まれた。さらに、2025年に向け地域包括ケアシステム構築の推進の中で、患者の服薬情報の一元的な把握や管理・指導などの機能が、現在の薬剤師、薬局に求められてきた。厚労省では今年6月から、かかりつけ薬局の定義や基準、公表の仕組みなどについて検討を行い、14日の検討会で、かかりつけ薬剤師・薬局の基準について報告書にまとめたもの。

■関係団体の利害が入り交じり、「名称は迷走」
 OTC薬の取り扱いについて、日本薬剤師会代表の森副会長は、「どのような相談にも答えられるように、薬効分類ごとに満遍なくそろえることが必要」と述べ、一案として、中分類で2銘柄以上、300品目程度を置くことを要件として提案した。これに対して、日本医師会代表委員の羽鳥日医常任理事は、要件化でOTC薬局を取り扱う調剤薬局が増えることや、調剤薬局が積極的に患者にOTC薬を薦めることに強く反対。このため、薬効群や品目数など具体的な取り扱い内容は要件化されず、「利用者が適切に選択できるよう、供給機能や助言の体制を有していること」の表現にとどめた。
 また、名称についても検討会では、複数の委員が「健康づくり支援薬局」を推していたが、これに対して、羽鳥日医常任理事は、「健康情報拠点が薬局である必要は全くないと思う」と名称に反対。同氏は「地域密着サポート薬局」という名称を提案した。このため、双方の顔を立てて、最終的に「健康サポート薬局」に落ち着いたようだ。

 

<患者団体代表「薬局薬剤師に患者はあまり期待を抱かない」>
 患者団体の山口育子氏(NPO法人ささえあい医療人権センターCOML理事長)は、「同じ薬剤師でも病院薬剤師と薬局薬剤師とでは、存在感と役割が異なる」と指摘。既に病院薬剤師は、チーム医療の視点から、院内の緩和ケアチーム、栄養サポートチームの一員として、直接患者に関わる機会が増えてきたことをあげる。一方、「薬局薬剤師は、患者に向き合うより、処方せんを出す医師に気を遣ったり、遠慮しているのが現状だ。どのような専門性を持ち、患者から何を期待できるのか、存在意義が理解できない」と厳しい意見だ。

<日本医師会代表「拠点という言葉ではなく、窓口くらいがいいのでは」>
 検討会の論議の中で、厚労省側の「薬局は気軽に相談に立ち寄れる存在で、全てを処理できるわけではなく、関係職種と連携をつなぐ窓口として機能できるのではないか」と説明すると、日本医師会代表委員の羽鳥日医常任理事は、「拠点という言葉ではなく、窓口くらいがいいのでは」と提案。医師会側は、薬局が健康情報の「拠点」となることにあくまで反対の姿勢を貫いているようだ。

 

<ある薬事ジャーナリスト:「門前イコール悪」というイメージ払拭したいという意図>
 検討会で厚労省が示した資料の中では、「患者のための薬局ビジョン」として、「『門前』から『かかりつけ』、そして『地域』へというフレーズ」があった。同省は、「門前という立地から、かかりつけ薬局という機能に注目するようにし、その後に徐々に地域の中にこのようなかかりつけ薬局が増えていく」という長期的ビジョンを考えているようだが、『門前イコール悪』というイメージを払拭したいという意図がありありだ。

【厚労省のある関係者】

「調剤薬局は、マイナス改定のターゲットにされてもしかたがない?」

 大手調剤薬局チェーンで相次ぐ薬剤調剤歴(薬歴)未記載の不祥事。記載漏れと言いながらも、結局、1件につき41点(410円)の調剤報酬を「不正請求」していたわけだ。その数、中医協の調査によると、2014年で全国の調剤薬局1220カ所で81万件を超える。
 ある厚労省関係者は、「調剤薬局は、調剤報酬マイナス改定のターゲットにされてもしかたがない」と言う。その背景の1つに、前回2014年度診療報酬改定で調剤報酬が大幅に引き下げられたにもかかわらず、2014年度の大手調剤薬局売上高の上位10社中7社は、前年比で2桁の伸びを見せた。これに薬歴未記載による調剤報酬の不正請求問題。改定財源確保で厳しいせめぎ合いが予想される中医協で、日本医師会などが主張するように、さらなる調剤報酬マイナス改定は避けられない?

事務局のひとりごと



 これまでも何度か採り上げてきた「調剤報酬の見直し」については、もはや「マイナス改定」は避けられない、という考え方が業界内に蔓延するという、かつてないほどの厚労省のアピールを感じているのは筆者だけなのだろうか。
 日医総研によれば、そのワーキングペーパー(WP)「調剤医療費の動向と大手調剤薬局の経営概況」でも「患者の視点に立って説明のつかない診療(調剤)報酬を見直し、患者にとって公平な報酬に是正すべき」という提言がなされ、薬局調剤医療費の増加に問題を投げかけているという。

 調剤薬局を運営する事業者からのコメントを紹介したい。

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「かかりつけ薬局の基本機能」について今度の動向
 現場で働く薬剤師は、「かかりつけ薬局機能を充実させる事により、医療費削減を図る」という目的のみでなく、健康管理に直接携わる事により、薬剤師として職能を生かし「やりがい」を感じる事のできる良い機会であると考えております。
 ただし、現状では、調剤のみでなく、在宅・24時間体制など薬剤師不足にて達成困難な条件が多い事が一番の課題となっております。「かかりつけ薬局」の認定性が検討されている中、条件を網羅できるか不安な状態だと感じます。逆に薬剤師不足が解消できれば、より積極的に取り組めると考えております。  その為には、無資格者調剤の合法化・ブランクのある薬剤師教育等、多方面からの取り組みが必要であると考えます。
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 この風潮に対する思い、というよりは、前向きで建設的な意見であり、さらにそのための処方策の課題も指摘いただいた。 「調剤薬局には点数を上げて然るべきだ。」そういう議論が起こっていくよう、社会からの信頼、厚労省からの信頼を、本来の業務で勝ち取っていってほしい。

<ワタキューメディカルニュース事務局>

 

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