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559号 日本の高齢者は若返った!?

2015年07月15日

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日本の高齢者は若返った!?
日本老年学会 -高齢者の定義再検討-

 

■「新しい高齢者の定義」で日本老年医学会がシンポ開催

 老年学会、老年医学会、老年学・社会科学会、基礎老化学会、老年歯科学会、老年精神医学会、老年看護学会の関連7学会で構成する日本老年学会の「高齢者に関する定義検討ワーキンググループ」は、6月12日にパシフィコ横浜で開催された第29回日本老年学会総会合同大会のシンポジウム「新しい高齢者の定義」で、高齢者が5~10歳「若返り」しているデータを報告。2015年度中に高齢者の定義に関する報告書を取りまとめる予定だ (写真1:老年医学会会場となったパシフィコ横浜)。

 

 学会シンポジウム「新しい高齢者の定義」で、日本老年学会理事長の甲斐一郎氏は、「現在の高齢者は10~20年前に比べて5~10歳は若返っている」と指摘した。日本では、現在65~74歳を「前期高齢者」、75~89歳を「後期高齢者」、90歳以上を「超高齢者」と定義。日本の人口構造が劇的に変わる中、1990年には1人の高齢者を5.1人の生産人口(20~64歳)で支えていたところが現在(2012年)は2.4人、2060年には1.2人で支えるようになると予測。増える「高齢者」の実態を分析し、社会状況の変化に応じた在り方の見直しが喫緊の課題となっていると甲斐氏は強調。

 

 日本老年学会は「高齢者に関する定義検討ワーキンググループ」を設置。シンポジウムの中で、日本老年医学会理事長の大内尉義氏は「高齢者の定義見直しには、ネガティブなイメージの“高齢者”を社会の支え手としてモチベーションを持った存在と捉えポジティブなイメージに変える意義の他、社会の支え手を増やし、明るく活気のある高齢社会を築くといった意義もある」と説明。一方、高齢者の社会参画を進めるに当たり「高齢者の身体能力の改善は未来永劫続くのか」「社会保障政策への影響」といった点についても議論や検討が必要との見解を示した。

 

■ 国民の意識調査による高齢者は「70歳」から

 シンポジウムではワーキンググループの委員らが,これまでの検討で得られた知見を紹介。このうち、荒井秀典氏(国立長寿医療研究センター老年学・社会科学研究センター長)によると、 2014年12月に実施された内閣府の高齢者に関する意識調査では「70歳から」を高齢者と自覚、あるいはその年齢に達していなくてもそう捉える人が増加したと報告。過去17年間の同調査結果の推移を見ると「何歳からを高齢者とすべきか」の年齢が上昇していたことが分かった。

 ワーキンググループでは,高齢者の定義見直しの基礎資料となる国民の意識調査や疾病構造,身体・心理・社会機能の変化に関する検討を重ねてきた。現時点で示された声明の要旨は次の通り。声明の内容は6月11日の学会理事会で了承され,2015年度末をめどに最終的な取りまとめが行われる見通しだ。

 

<日本老年学会からの声明>

 最新の科学データでは,高齢者の身体機能や知的能力は年々若返る傾向にあり,現在の高齢者は10~20年前に比べて5~10歳は若返っていると想定される。個人差はあるものの,高齢者には十分,社会活動を営む能力がある人もおり,このような人々が就労やボランティア活動など社会参加できる社会をつくることが今後の超高齢社会を活力あるものにするために大切である。

 

パシフィコ横浜の第29回日本老年学会総会の企業展示から (写真入り)

 「良質な超高齢社会を拓く~学際的研究の進展と深化をめざして」をメインテーマに拓かれた第29回日本老年学会総会合同大会。学会展示ホールでは、高齢者の医療・介護に関連した企業展示が行われた。その中で、目についたのが、最新技術を活用した高齢者施設や在宅医療の現場で使うと便利な次の機器だ。

 「メンタルコミットロボット パロ」は、独立行政法人産業技術総合研究所が開発し、住宅メーカーの大和ハウスグループの株式会社知能システムが製造するアニマル・セラピーの機能を有するアザラシ型ロボット。諸事情によりペットを飼うことができない「ペット用」と、医療福祉施設での躁うつ病、認知症、精神疾患、高次脳機能障がい、自閉症やダウン症などの患者さん向けセラピーやトレーニング用のツールの「セラピー用」がある。動物らしい動作をすることはもちろん、抱きかかえられたり、なでられると鳴き声をあげ、名前を覚え、呼ばれると反応。また飼い主の好みの行動を学習する(写真2)。

製品のWebサイト:http://www.daiwahouse.co.jp/robot/

 「尿吸収ロボ ヒューマニー」は、ユニ・チャームヒューマンケア株式会社が開発・製造した尿吸収機器。パッドに内蔵されたセンサーが排尿を自動に検知、瞬時に本体タンクに引き込み、パッドに尿を残さない。導入した施設や在宅では、夜間のトイレ移動の必要がなくなり、転倒の恐怖感からも解放され、介護者の負担も軽減されると好評だ(写真3)。

製品のWebサイト:http://www.humany.jp

事務局のひとりごと

「人間50年 下天のうちをくらぶれば 夢幻のごとくなり~(※)」

 戦国時代もののドラマ等で、織田信長を演じる役者のこのセリフを、特に年末などで耳にした方も多いことだろう。昔の日本では10代で元服し「一人前の大人」として見られ、さらに人間の寿命が短かった時代があったのだ。それから考えれば、現代は隔世の感がある。科学・医療技術の進歩、公衆衛生の向上、栄養学の進歩 等々…。人類の平均寿命を押し上げた要因は数多い。輝かしい進歩であり、また、皮肉なことに社会保障財源不足という別な問題も引き起こしてしまっている。
 「最近の高齢者は若い、60歳で定年なんてまだまだ早い!」などと、あちらこちらで元気な先輩方が日常的に会話されているのではないだろうか。確かにそのような感覚は間違っていないように感じる。とはいえ、あくまで「感覚」の問題だと認識していたが、科学的に実証されているというから驚きだ。
 企業の定年制を考える厚労省と何らかの関係があるのか、いろいろ考えてしまうところだ。
 「年齢の如何に関わらず、健康な人は、お互いがお互いを支えあって生きていかねばならない。60歳はまだまだ“若い”ですよ。」そんなメッセージなのかもしれない。「定年退職後は夫婦で悠々自適の年金生活。」これからの日本、サラリーマンの夢の一つといわれていたこのセリフ、最低でも定年退職後、10年は遠ざかってしまいそうだ。平均寿命の延びがもたらした光と影。「年金だけの暮らし」も、「定年後は夫婦で仲良く」も、もはや想像上のライフスタイルになってしまっている可能性が高い。
 生産年齢人口(今のところ15~64歳といわれている)が減り、この定義のままでは社会インフラが回らない時代が、すぐそこまで来ている。

<ワタキューメディカルニュース事務局>

 



※…「幸若舞」という芸能の演目『敦盛』(『平家物語』が題材)のなかで、年若い平敦盛を一ノ谷の戦いでやむを得なく討ち取り、世の無常を感じて出家した熊谷直実の嘆きの言葉だといわれているそうだ。

 

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