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557号 新しい介護食品(スマイルケア食)普及で農水省が検討ワーキンググループを設置

2015年06月15日

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 農林水産省は、食べ物をかんだり飲み込んだりすることに問題がある人や栄養状態が悪い人が利用できる「新しい介護食品」(スマイルケア食)の普及を目指す推進ワーキンググループ(WG)を立ち上げ、初会合を5月12日に開いた。WGでは、利用者の状態に応じたスマイルケア食の選び方などについて、具体的な基準を策定する。具体的には、食品の硬さや軟らかさを示す数値基準を検討する。今年9月をメドに取りまとめを行う予定だ。

 

 農水省は、2013年10月から2015年3月にかけて、「介護食品のあり方に関する検討会議」を開催。同会議では、食べ物をかんだり飲み込んだりすることに問題がある人などが利用できる食品を「新しい介護食品」と位置付けることや、その愛称を「スマイルケア食」とするなどの方針が示された。さらに、自分に合った食品を選択するための早見表「新しい介護食品(スマイルケア食)の選び方」図2)や、スマイルケア食活用のための事業者向けガイドラインも策定された。一方、同会議では、今後さらに検討すべき課題として、①スマイルケア食を選ぶ上で参考となる数値基準などの策定、②「スマイルケア食の選び方」で示された、各分類を表すマークを活用する際のルール化、③社会システムの構築に係るさらなる検討も示した。

 

 検討会議の指摘を受け、農水省では、食品製造業者や介護関係者らを委員とする「新しい介護食品(スマイルケア食)普及推進会議」を改めて設置。さらに同推進会議の下にスマイルケア食の選び方や、医療・介護関係者と食品事業者などとの連携を模索するためのWGも置いた。同会議では5月以降、「スマイルケア食の選び方に関するワーキングループ」を定期開催し、具体的な方策についての検討を進める。同WGのほか、「低栄養予防のための食品の選び方」と「医療・介護関係者と食品事業者との連携方策」のWGも順次開催される予定。

 

 なぜ農水省が介護食品に取り組むのか気になるところだが、介護食品市場の拡大を図ることは、農林水産業・食品産業を振興し、かつ、国民への食料の安定供給という農水省のミッションに合致するものであり、引いては、健康寿命の延伸にも資すると、同省の意気込みは高いようだ。

 

介護ジャーナリストのコメント

 ある市場調査・コンサルティング会社の予測によると、流動食品や栄養・水分補給飲料、咀嚼・嚥下補助食品など高齢者用食品市場は2013年で1115億円と推定。さらに順調に市場は成長し、2017年には1340億円に成長すると予測される。また、腎臓病や糖尿病対応食品、褥瘡・PEM対応食品など病者用食品市場は2013年で349億円。以降、年率5%で成長し、2017年には400億円を超える市場となると予想される。
 「団塊の世代」が75歳以上となる2025年には、65歳以上の高齢者人口は3657万人に達することが見込まれ、高齢者の増加に伴い、高齢者・病者用食品のニーズは年々高まっている。需要の増加に伴い、高齢者・病者用食品に対する理解の促進、利用者に向けた社会システムの構築は大きな課題。そのため、農水省では「介護食品のあり方に関する検討会議」を設置し、検討を進めてきた。一方、食品の提供事業者も2012年12月に「日本メディカルニュートリション協議会」を設立。治療食品の普及と安全・適正な使用のため、情報活動を展開してきた。
 「新しい介護食品(スマイルケア食)」普及には、農水省だけではなく、診療報酬や介護報酬の面から医療・介護現場に大きな影響と責任を持つ厚生労働省との省庁間の連携も必要となってこよう。

現場の訪問看護師の反応
 在宅患者の栄養管理指導に力を入れ、訪問診療を展開している横浜市内のクリニックの訪問看護師は、「介護をする人、される人がともに笑顔になれる食品」である「スマイルケア食」というネーミング、「親しみやすいですね」と答えた上で、次のように、「スマイルケア食」への期待を述べた。
 訪問診療の際に、ご家族やヘルパーさんからよく相談されるのが、「治療食は作るのは難しい」「介護が大変で食事ばかりに手をつけられない」という声が多いことです。市販品や冷凍補助食品などをうまく取り入れた食事療法を実践しながら在宅生活を送れるよう指導したいですね。その意味でも、「スマイルケア食」の普及と活用を期待しています。
 ちなみに、このクリニックでは、昨年から、管理栄養士や栄養士が地域や医療機関に対して栄養支援を行う拠点として日本栄養士会が整備を目指している「栄養ケア・ステーション」を設置。現在は3名の管理栄養士が医師・訪問看護師と共に、訪問栄養食事指導を行っている。

在宅配食サービス提供事業者のコメント
 当社は在宅配食サービス事業の他に、病院や介護福祉施設などで食事の提供も行っています。最近では特に、介護福祉施設で提供する食事において、常食の割合が減り、ソフト食やムース食、きざみ食など食形態を変更する食事や治療食の割合が増えています。各施設の調理現場で問題となっている人手不足が加速する一方、喫食者の対応レベルが上がっているのが現実です。
 最近は農水省のスマイルケア食をめぐる検討の動きもあり、これまで介護食品を提供していなかった企業が、現場の詳しいニーズを聞きに来ることも頻繁にあります。
 在宅ではこういう食事を作ってください、と手作りの食事を紹介しても、手間や時間、衛生管理などが求められ、なかなか作ることはできません。経験や知識がなければ難しい。だからこそ、「スマイルケア食」は必要です。
 高齢者は咀嚼・嚥下機能の力が弱くなると、量を食べることも大変で、栄養も不足になりがちです。しっかり食べて頂けるよう見た目、やわらかさ、栄養量に配慮した献立づくりがポイントになります。
 福祉施設で出している高齢者食の基準が各施設バラバラの状況の中、いくら市販されている食品をスマイルケア食として統一しても連携は叶いません。高齢者や家族が「スマイルケア食」の分類Aを食べています」などと伝えることで、分類を参考により適した献立作成ができます。利用者とそのご家族、施設とのきめ細かな情報共有がとても重要です。こうした地域連携が、安全な食事の提供につながり、地域包括ケアの実現にも役立つと思います。

 

事務局のひとりごと
 今月号は業界の様々な立場の方から意見をいただくことになった。番外編として、在宅看護の現場で在宅看護研究に携わっている方にも、現在の在宅配食サービスについてもコメントを紹介したい。

長所
 献立が豊富になった
 調理法、色彩、食材において以前より研究されている
 疾患別・量的に選択肢が増えている

問題点
 味付けにバラつきがみられる
 量的にさまざまである
 選択肢により、価格設定が効果になってしまう
 食材によっては味付けが一定でない
 お届けスタッフにより、サービス(丁寧・雑)にバラつきがみられる
 冷凍は美味しくない
  一度に量がくるものは冷蔵庫に収まらない
  まずい!と感じた時は捨てるようになり、もったいない

 今回コメントを紹介した在宅配食サービス提供事業者によれば、メーカーも出席する「商品開発会議」があるらしいのだが、メーカー担当者は皆口々に「ここは宝の山だ」と言われるそうだ。実際の利用者(喫食者)だけでなく、その家族のニーズ(安否確認など)にもどれだけきめ細かく応えられるかが、これから企業としての生き残りをも左右するのではないだろうか。
 答えはつねに現場にある。調剤薬局の話とは展開が異なるが、しっかり現場の声が反映され、これから本格化していくであろう「地域包括ケア」それぞれの地域の取り組みの中で、少子高齢社会先進国としての我が国の将来を「食」の立場から引っ張ってもらいたい。

<ワタキューメディカルニュース事務局>

 

 

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