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No.746 2024年度介護報酬改定で注目される科学的介護情報システム(LIFE)に基づくアウトカム評価

2023年04月17日

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◇「2024年度介護報酬改定で注目される科学的介護情報システム(LIFE)に基づくアウトカム評価」から読みとれるもの

・2024年度介護報酬改定でLIFEに基づくアウトカム評価を推進

・LIFEで収集した情報等を活用、介護の取組とアウトカムの関連等について分析・評価

・医療情報の入力負担などからLIFEにデータ未提出事業所も多い

 

2024年度介護報酬改定で科学的介護情報システム(LIFE)推進とアウトカム評価拡充

 2024年度介護報酬改定まであと1年。次期介護報酬改定で注目されるのが、科学的介護情報システム(LIFE)に基づくアウトカム評価である。3月6日開かれた政府の規制改革推進会議の「医療・介護・感染症対策ワーキンググループ」の会合で、厚労省は次期介護報酬改定に向け、介護サービス利用者の状態や介護施設・事業所で行っているケアの計画・内容などを一定の様式で入力すると、インターネットを通じて厚労省へ送信、入力内容が分析されて当該施設等にフィードバックされる情報システム科学的介護情報システムLIFE」の推進とアウトカム評価を拡充する方向で検討を進めることを明らかにした(図5  科学的介護情報システム(LIFE)の概要)。

 

 介護報酬のアウトカム評価については、施設からの在宅復帰を評価する加算、褥瘡の予防を評価する加算、リハビリによる社会参加を評価する加算、ADLの維持・改善を評価する加算などが既に導入されている。厚労省は前回2021年度介護報酬改定で、こうした加算のメニューを増やしたり単価を引き上げたりする施策を展開。LIFEを新たに導入したことも含め、自立支援・重度化防止にこれまで以上に重きを置く姿勢を打ち出した。

 

 サービスの質を踏まえた介護報酬については、①ストラクチャー(構造:人の加配等サービスを提供するために必要な人員配置など)、②プロセス(過程:要介護度別の基本報酬、訓練等の実施、計画書の作成等サービスの内容など)、③アウトカム(結果:サービスによりもたらされた利用者の状態変化等在宅復帰など)-3つの視点に分類でき、それぞれの特性に応じた介護報酬が導入されている。

 介護保険制度創設時から導入されている①ストラクチャーと②プロセスは成果にとらわれず、かけた手間や体制等を客観的に評価できる一方、事業者は手間をかけること自体が評価されるため、サービス提供方法を効率的にするインセンティブや、利用者の状態改善等の効果をあげようとするインセンティブが働きにくい

 

 これに対し、③のアウトカム評価については、「より効果的・効率的な介護サービスの提供に向けた取組を促すには、利用者の状態改善等のアウトカム(結果)の観点からの評価を活用することが適している」との考えから、2006年度に介護予防サービスにおいて初めて導入アウトカム評価が可能なものについては、加算の見直し・拡充等により、順次導入が進められている。その一方で、事業者がアウトカムの改善が見込まれる高齢者を選別する等、いわゆるクリームスキミングが起こる可能性が指摘されている。

 このため厚労省は、「LIFEで収集した情報等を活用し、介護の取組とアウトカムの関連等について分析を行い、エビデンスの集積を進める必要がある」との認識の下、LIFEに係る取組を進める中で蓄積された知見も活用し、LIFEに限ることなくより利用者のニーズに沿った、かつ、アウトカムの視点も踏まえた介護報酬制度について、社会保障審議会介護給付費分科会での議論を踏まえ、引き続き検討を行うことを明らかにした。

 

■前回2021年度介護報酬改定後、科学的介護LIFEの利活用が進んだが、依然として入力負担など課題

 2024年度介護報酬改定に向け論議を行っている社会保障審議会・介護給付費分科会は3月16日の会議で、「令和3年度(2021年度)介護報酬改定の効果検証及び調査研究に係る調査の結果(2022年度調査)」が報告され、調査項目のうち「LIFE を活用した取組状況の把握および訪問系サービス・居宅介護支援事業所における LIFE の活用可能性の検証に関する調査研究事業」で、入力負担などからLIFEにデータ提出をしていない事業所も決して少なくなく、ケアの見直しなどにまでは利活用されていないことが明らかになった。

 

 前回2021年度介護報酬改定では、「介護人材不足を踏まえた人員基準等の緩和」や「科学的介護実現のためのLIFEデータベースの推進」「質の高い訪問看護に向けたリハビリ専門職による訪問看護の抑制」など柱に改定が行われた。今回、改定の効果について調査研究を行い、3月16日の介護給付費分科会で報告されたもの。2022年度調査では、(1)都市部、離島や中山間地域などにおける2021年度改定等による措置の検証、地域の実情に応じた必要な方策、サービス提供のあり方の検討、(2)介護保険施設のリスクマネジメント、(3)介護保険施設における医療・介護サービスの提供実態等、(4)LIFEを活用した取組状況の把握および訪問系サービス・居宅介護支援事業所におけるLIFEの活用可能性の検証、(5)介護現場でのテクノロジー活用-の5項目の調査が実施された。

 

 このうち、(4)のLIFEを活用した取組状況の把握および訪問系サービス・居宅介護支援事業所におけるLIFEの活用可能性の検証では、①LIFE関連加算(科学的介護推進体制加算)の算定状況(取り組みや負担状況など)、算定していない事業所の状況(なぜ算定しないのかなど)、②介護関連データベースを活用した分析、③訪問系サービス・居宅介護支援事業所の一部を対象とした「モデル調査」(実際にLIFEを活用してもらい課題などを探る)という3類型の調査を実施。調査結果では、「ADLや認知症の状態の評価を新たに開始した(あるいは評価頻度が向上した)事業所・施設の割合が比較的 高かったなど、徐々にLIFEデータの利活用が進み、現場での利活用も進んできている」ものの、①入力負担(疾病状況や服薬情報など医療情報の入力)などからLIFEにデータ提出をしていない事業所も決して少なくない、②ケアの見直しなどにまでは利活用されていない(調査時点ではデータ分析後の国からのフィードバックがまだなされていなかったという背景もある点に留意)—といった課題が明らかになった。

図6 アンケート調査(LIFE登録済事業所)

 

図7 アンケート調査(LIFE未登録済事業所)

 (5)の介護現場でのテクノロジー活用については、見守りセンサーなどのテクノロジーを活用した場合の「人員基準緩和等」により「利用者の安全やケアの質は保たれるのか」「スタッフの負担は過重にならないのか」などが詳細に調査された。その結果、「見守り機器等の導入はまだ一部にとどまっている」「活用が進まない背景にはコストや必要性が低い点などがあげられている」「小規模事業所でも購入でなくレンタルとするなど工夫して導入しているところもある」ことが分かった。

 

 厚労省は、科学的介護LIFEの利活用や介護現場でのテクノロジー活用についてさらなる分析を加え、また現在実施されている「2023年度調査結果」も合わせ、2024年度介護報酬改定論議につなげたい考えだ。

 

 

 


 「シャイロックの子供たち」(池井戸潤作品 主演:阿部サダヲ)は、ある銀行の支店を舞台に描かれたヒューマンドラマだ。敵役も、主人公たちも、加害者のような被害者の行員、意地悪な女性行員、詐欺師、過去を抱えた検査官、一癖も二癖もありながら、それでもそれが人間というものなのだろう、それぞれの登場人物が味わい深く、一つの物語を紡ぎあげていく。銀行員が主人公となるドラマだが、非常にエンターテインメント的要素が強く、大変面白かった。

 そんな、観るものを楽しませる映画であるが、映画製作現場の就業環境のガイドラインが策定されたという。このガイドラインに申請した映画には「映適マーク」が付与されるのだそうだ。昨年には600本以上の映画が日本では公開されたという。このマークが付与されると観客動員数が増えるのだろうか?

 などと皮肉りたいわけでは決してないが、映画製作現場というのは、鑑賞している観客の視点からは想像もできない、過酷な環境なのだろう。

 「ラ・ラ・ランド」でアカデミー賞を受賞した監督、デイミアン・チャゼルの最新作「バビロン」では、無声映画からトーキー映画に変遷していくハリウッドの悲喜こもごもが描かれていた。その映画内で無声映画全盛の時代、戦争ものの撮影中、映画の中での話だが、撮影中の事故でケガ人がでるのは当たり前。死人だって出そうな勢いだ(いや、出ていた)。その多くはエキストラ出演の、名もなき人々だ。監督からはほとんど奴隷的な扱いを受けているような印象を受けた。とんでもないヒエラルキーを感じた。

 トーキー映画に変遷していく過程においても、一体何テイク取ればシーンが完成するのか、固唾をのんだ。何度ものカットを経てようやくシーンが完成した時、録音室では新たな悲劇が…。

 相当皮肉った内容もあるのだろうが、映画撮影現場がいかに過酷か、反対に、夢を追い求めるものにとっては、何ものにもかえがたい、シビれるような、如何に憧れの世界であるか、そんな思いを抱かされる映画であった。

 

 今回のテーマは、大変な現場ではあるが、映画界の過酷さに比べれば、労働環境は相当進んでいそうな介護現場に導入された科学的介護情報システム、「LIFEについてである。

 

 コメントを紹介したい。

〇自民党介護福祉議連会長に麻生前財務大臣

 2022年11月25日、2年ぶりの開催となった自由民主党・介護福祉議員連盟の会長に前財務大臣の麻生太郎衆院議員、会長代行に田村憲久元厚生労働大臣が就任した。会長就任に当たり麻生新会長は、介護福祉議員連盟のこれまでの20年について紹介した上で、「介護保険制度改正や介護報酬改定に向けて、現場の取組を聞かせていただき、きちんとした対応をしていきたい」と述べた。


 どうぞよろしくお願いします。

 

 厚労省のコメントだ。

〇厚労事務次官:次期介護報酬改定は物価高騰対策を踏まえ新たな考え方で検討

 3月12日に開催された日本介護経営学会のシンポジウム「ケアマネジメントと介護経営」で、基調講演を行った厚労省の大島一博事務次官は、次期介護報酬改定について検討するに当たり、「日本ではデフレが長く続いてきたが、物価や賃金が上がるインフレの局面に変わる。物価高騰への対応や介護職の処遇改善は、これに応じた報酬改定のあり方を新たに組み立てていく。従来とは根本的に異なる考え方で臨む必要がある」などと述べた。


 このコメントを見る限りでは、介護職の処遇改善は当然行われる、と読めるのだが、抜本的に異なる考え方それが気になる

 

 今度は自治体のコメントだ。

〇要介護認定情報は共有することが有用

 要介護認定情報は、認定調査票が市町村作成、主治医意見書は医療機関が作成し市町村が保有、介護保険被保険者証は市町村が作成し、利用者・事業者・ケアマネが保有、要介護認定申請書は利用者が作成し市町村が保有するなど、市町村が管理する重要情報であり、共有することが有用である。全国医療情報プラットホームの中で一元的に管理できれば「より効率的な共有」が可能になると期待できる。


 要介護認定情報は「最重要情報」。ゆえに一元的な管理が必要、か。

 

 介護施設運営事業者からはこんなコメントだ。

〇ケアプランデータを事業者・利用者・市町村・医療機関と広く共有可能とすべき

 ケアプランは、利用者・サービス事業者・ケアマネ事業者で共有しているが、市町村(保険者)や医療機関にとっても非常に重要であり、関係者で広く共有可能とすべき。2023年度からケアプランデータ連携システムが稼働するが、これと全国医療情報プラットホームとの関係を整理すべきではないか。


 共有されていないことによる非効率、これからはそこが改善すれば飛躍的に何かが変わるかもしれない。

 

 介護福祉士のコメントを紹介したい。

〇現在はデータ提出だけでも手一杯であり、「加工」の手間をどう考えるのか

 LIFE情報(フィードバック情報)は、介護事業者が作成し、フィードバックを受けるが、まだ正式フィードバックがなされていない。利用者の状態・ケアの内容・効果について、多くの関係者で共有されることが、より質の高い介護サービスにつながると期待できる。ただし、現在はデータ提出だけでも手一杯であり、「加工」の手間をどう考えるのかも重要である。

 

〇DXを進める上で収集・共有できる情報を今後標準化して整備していくことが非常に重要

 全国医療情報プラットホームに介護情報も含まれ、介護事業者・医療機関が、本人の同意の下、介護情報等を適切に活用することで、利用者に対して提供する介護・医療サービスの質を向上させることも目的となっている。今までの連携の中で、医療側・介護側が必要とする情報に差があったのも事実である。一定程度DXを進める上で収集・共有できる情報を今後標準化して整備していくことが非常に重要である。


 ある意味、医療でない、というのは情報共有のためのハードルは低いのかもしれない。医療情報(カルテの情報)共有の有用性は叫ばれて久しいが、未だ成功事例を全国に波及させよう、という取り組みにまでは至っていない。

 また、「データ提出だけでも手一杯」。この状況を、働き方改革のこの時代にどう実現させるべきか?

 

 介護施設で働く看護師のコメントだ。

〇看護分野にも「科学的看護情報システム」が必要

 LIFEというメジャーができたので、LIFEを「介護の振り返りのツール」として活用することができる。看護分野にも客観的に看護を評価する「科学的看護情報システム」が必要となるのではないか。

 

〇LIFEは、看護師の能力開発・評価のシステム「クリニカルラダー」に通じる

 LIFEは、看護師の能力開発・評価のシステムの1つ「クリニカルラダー」に通じるものがあるようだ。クリニカルラダーは、臨床現場における看護実践能力と専門役割を階段的なレベルで評価し、到達度によって看護師の能力が示されるシステムである。


 さすがは看護師だ。看護師が臨床現場で様々な制約やこなすべき業務がある中で、体系的にも理解しながら業務をこなす職種であるということの証左だろう。

 看護現場にもLIFEの形が変わって逆輸入される日は来るのか?

 

では介護現場で働く、事務に携わる方々の声はどうか?

〇LIFE対象範囲の拡大で事務負担が増え、「介護DX推進が介護負担」となると懸念

 科学的介護推進体制加算の算定要件は、介護事業所などにおいて、①LIFE への利用申請手続き、②データ提出及びフィードバック機能の活用にPDCAサイクルの推進・ケアの向上を図ることである。今後、介護報酬改定でLIFEの対象範囲が拡大されると、かえって事務の負担が増え、「介護DX推進が介護負担」となることが懸念される。


 事務の負担増、その中で事務の負担減、となると魔法の杖、DXの登場か。介護現場で働く事務に携わる方々の処遇改善は、点数上は評価されていない…。

 

 医業系コンサルタントのコメントだ。

〇次期介護報酬改定でLIFEの対象範囲が拡大。早めにLIFEに取り組むべき

 次期介護報酬改定ではLIFEの対象範囲が拡大されて「訪問介護」や「居宅 介護支援」も加算対象に含まれてくると予想される。その一方で、現在は取得できている加算がLIFEに取り組まなければ取得できなくなってしまう懸念がある。このため、介護事業所が今後も生き残るためにも、今のうちから早めにLIFEに取り組んでいくべきだと思う。


 実は介護現場のDXの手始めとは、LIFE入力をする方々のレベルアップなのか?この、アレルギー反応とでも言おうか、そういった考え方を超越しなければならないことは明らかであるはずだし、コンサルタントの言はもっともだ。その通りに現場を動かすための何か、とは何か?もしかするとそここそがDXなのかもしれない。

 

 DXと言えば、ここはIT企業にご登場いただかねばなるまい。

〇医療と介護のプラットホームの共通化統一化は同時に進める必要

 医療DXと介護DXには温度差があり、医療の方が進んでいるように感じている。介護DXのプラットホームの共通化が遅れることのないように医療と介護のプラットホームの共通化統一化は同時に進める必要がある。


 見る人が見れば、どこに手当てすべきか答えは必然的に出るのだろう。それを阻むのは、仕組みか?法か?人か?一体何なのか?

 

 最後に、利用者(ご家族含)の、こんなコメントを紹介して締め括りとしたい。

〇果たしてLIFEが利用者に合った介護施設や事業所を選択の目安となるのか

 「科学的介護」とはエビデンス(科学的裏付け)に基づく介護で、誰もがエビデンスに基づいた質の高い介護を受けられるようにすることがLIFE(科学的介護情報システム)の目的といわれる。LIFE導入により施設や介護職員によるケアのばらつきが少なくなり、全国どこでも誰もが適切なケアを受けることができれば、利用する方にとってメリットとなり、果たしてLIFEが利用者自身に合った介護施設や事業所を選ぶ際のひとつの目安となるのか、その行方を注目したい。


 医療の質の「見える化」は、DPCデータの提出により革新的に変わった。介護の質の「見える化」、そのキーワードともいえるLIFE、そして介護現場DX。

 

 今、適正化の第一歩が踏み出されようとしている映画作成現場介護現場先に適正化のゴールを切るのはどちらだろうか?

 すでに答えは明らかなような気がする

 エンターテインメントは、まず心身の健康があってこそ必要とされる。

 心身の健康維持向上。

 介護現場は、今後ますます増えてくる高齢者の心身の健康維持向上の砦だ。

<ワタキューメディカルニュース事務局>

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