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No.637「骨太の方針2018」などで検討記載された地域別診療報酬。各地の医師会が高齢者医療確保法の特例撤廃求め決議

2018年10月15日

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■奈良県が「発信元」の「地域別診療報酬」の実施は、ハードルが高い

 今年6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2018(骨太の方針2018)」で記載された地域別診療報酬を巡る論議が再び関心を集めている。9月15日に開催された奈良県医師会主催の「地域別診療報酬講演会」で、「最近の医療情勢とその課題~地域別診療報酬のゆくえ」をテーマに中川俊男日本医師会副会長が講演。2008年に制定された高齢者医療確保法(高齢者の医療の確保に関する法律)の13条と14条について、診療報酬の特例として地域別診療報酬を決めることができると定められているが、「厚生労働大臣が都道府県の意見を踏まえ、中医協の諮問・答申を経る必要がある。中医協では日医の役員3人が委員を務めており、14条を適用する上で中医協が高いハードルになるとの見方を示した」などと、実際に実施するにはハードルが高いことを指摘した。また、医療費適正化計画は、各県の保険者協議会で協議して決定し、医療関係者も参画することが求められていることから、医師会・医療関係者が積極的に関わることが大事と強調し、日医として断固反対して実施させないと表明した。

 

 地域別診療報酬は、奈良県が、2018年4月からの国民健康保険制度の都道府県化を契機に、「高齢者の医療の確保に関する法律第14条」に定められた「診療報酬の特例」の適用を打ち出したもの。奈良県が2017年度(2018年3月)に策定した「第3期医療費適正化計画」では、国の準備した推計よりももっと厳しい計算の仕方で6年後の医療費(抑制)目標を立て、その達成に届かない場合は「診療報酬の特例」を活用して、診療報酬単価(1点10円)を一律に引き下げることも検討するとしている(図1 奈良モデル 地域別診療報酬)。

 

 

 これは、医療費適正化計画で医療費目標を立て、国保都道府県化と地域医療構想による医療費コントロールを担わされた都道府県が、医療費抑制を重視する国の狙い通りの展開であり、いわば医療費抑制の「典型モデル」になると考えられる。

 2018年4月11日の財政制度審議会・財政制度分科会で「奈良モデル」が紹介され、5月23日に公表された「新たな財政健全化計画等に関する建議」では、「診療報酬1点単価の調整」「病床削減が進まない場合の入院基本料単価の引き下げ」「薬局が増えすぎた場合の調剤技術料引き下げ」など具体例を示しつつ、具体的なメニュー案の提示や活用に向けた枠組み整備を厚労省に強く求めている(図2 医療費適正化に向けた地域別の診療報酬の設定)。

 さらに、6月15日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2018骨太の方針2018)」にも、「一人当たり医療費の地域差半減、一人当たり介護費の地域差縮減に向けて、国とともに都道府県が積極的な役割を果たしつつ、地域別の取組や成果について進捗管理・見える化を行うとともに、進捗の遅れている地域の要因を分析し、保険者機能の一層の強化を含め、更なる対応を検討する。国保財政の健全化に向け、法定外繰入の解消など先進事例を後押しするとともに横展開を図り、受益と負担の見える化を進める。高齢者の医療の確保に関する法律第14条に基づく地域独自の診療報酬について、都道府県の判断に資する具体的な活用策の在り方を検討する」として、「高齢者の医療の確保に関する法律第14条に基づく地域独自の診療報酬」が書き込まれた

 

■各地医師会が地域別診療報酬特例の撤廃求める決議

 地域別診療報酬に対して日本医師会は強く反発している。財務省の「建議」、さらに①給付率を自動的に調整する仕組みの導入、②地域別診療報酬の設定、③受診時定額負担の導入―の3点をいずれも「検討する」と「骨太の方針2018」原案に書き込まれたことを受け、横倉義武日医会長は6月6日の記者会見で、「今後の検討の場においても、日医は『国民の安全な医療に資する政策か』『公的医療保険による国民皆保険を堅持できる政策か』という2つの政策の判断基準に照らし合わせて主張をしていきたい」と地域別診療報酬をはじめとする財務省を中心とした医療費抑制策を牽制した。さらに、6月24日の日本医師会代議員会でも横倉日医会長は、「地域別診療報酬による医療費抑制は絶対に容認できない」と改めて強調している。

 

 また地域別診療報酬に対して各地の医師会ブロックで、地域別診療報酬特例の撤廃を求める決議が相次いでいる。このうち、地域別診療報酬の発信元の奈良県で開かれた近畿医師会連合の定時委員総会では、「わが国の医療制度は長年にわたって全国どこでも均一、かつ良質な医療を一律の診療単価で提供してきた。地域別診療報酬が導入されるようなことになれば、医療の格差や質の低下を招くことになり、断固として容認することはできない」と決議。また、関東甲信越医師会連合会も9月22日の定例大会で、「国民皆保険制度の根幹を揺るがす地域別診療報酬の導入に断固反対する」と決議した。

 

 一方、全国知事会は、7月27日発表した2019年度の「国の施策・予算に関する提案・要望(社会保障関係)」の中で、「高齢者の医療の確保に関する法律第14条に基づく地域独自の診療報酬について、都道府県の判断に資する具体的な活用策の在り方を検討するにあたっては、国として、地域独自の診療報酬の妥当性及び医療費適正化の実現に向けた実効性に係る検討を、各都道府県の意見も踏まえ、慎重かつ適切に行うこと。また、都道府県がそれぞれの地域の実情を踏まえながら進めている医療費適正化のための取組の状況等に配慮し、その意見を十分に聞き尊重すること」と主張。さらに、全国知事会社会保障常任委員長の尾﨑正直高知県知事は8月3日、横倉日医会長と面談し、「高齢者の医療の確保に関する法律第14条に基づく地域独自の診療報酬」に対する全国知事会の見解を説明するなど、厳しい自治体財政を踏まえ、地域別診療報酬の実施に理解を求めた。

 

 地域別診療報酬は、高齢者医療確保法に規定された権限で、1点単価切り下げ等が想定されている。都道府県の申請を受け、中医協での検討を経て最終的に厚生労働大臣が判断することになり、これまで実施例はない。少子高齢化に伴う地域経済の低迷による税収不足を懸念する地方自治体。地域別診療報酬の動きが、奈良県以外にも広がる可能性は無視できないようだ。

事務局のひとりごと

 

“卵1パック98円、お一人様1個限り”

“柔軟剤198円、お一人様2個まで”

 スーパーのチラシを見て特売品のチェックを怠らない女性は結構多いことだろう。反対に、小売業などの周辺業界にいない男性にとっては、ほとんどチラシになど興味がいかないものである。

「今日は○○ドラッグストアで柔軟剤を2個買ってきて!!198円のやつやで!!なかったらいらんわ。」

「△△屋では卵1パック、98円以外のは買わんといてや!!」

 

 などと家内に言われ、どこにでも売っていそうなものを、目玉商品を求めてあちらのスーパー、こちらのドラッグストアを渡り彷徨う休日。目玉商品で得をした気分になるのはもちろん理解できるのだが、先の計3個で一体いくら得をした(安く買えた)というのだろう?柔軟剤なら238円、卵なら198円程度が相場ではないのか?そこから考えれば、全ての特売品にありつけたとして、合計180円程度の得、ということになるだろうか。 そのために労した時間、車のガソリン代を合計すると、ゆうに180円以上分を浪費してしまっているのではないか?老朽化した考え方なのかもしれないが、そう考えてしまう。

 

 総務省で問題にもなっている「ふるさと納税」お礼の品物については、競争原理が働き、安売り(?)というか、納税者獲得競争で自治体同士が鎬を削っているわけだが、今回のテーマ、「地域別診療報酬」はこのような競争原理から生まれたものではないだろう。

 国民健康保険制度の都道府県化が契機になっているというのだが、本文中にもあるように、自治体の財政問題は自治体によって異なるのであり、故に自治体ごとに生き残り戦略を練るのは、ある意味当然だ。一般企業においても、赤字事業をいかに黒字化にもっていくか、常に試行錯誤の連続である。

 “医療費抑制を重視する国の狙い通り”とは本文の論であるが、確かにその仕組みを活用するならば、診療報酬点数を何も2年に一度見直さなくても、今年は1点=9.8円というふうにしてしまえば、それで▲2%を実現することができる。医療費財源の総枠が決まっているのであれば、1点あたりの単価を柔軟に変更することで総量規制が可能となるわけだ。なるほど国の思惑、恐るべしだ。

 

 だが、そこはこれまでの日本の医療保険制度の成り立ち、歴史の変遷をたどってみるにつけ、なかなか簡単には行かないのだろう。

 コメントを紹介したい。

 

 ○財務省の厚労省担当主計官:「地域別診療報酬、第3期医療費適正化計画の達成に活用」

 4月11日開かれた財務省・財政制度分科会で、同省の厚生労働係第一担当の阿久澤 孝主計官(当時)は、医療費適正化に向けた地域別診療報酬の設定について、「高齢者医療確保法第14条において医療費適正化の視点から地域ごとの診療報酬の定めを行うことが規定されているが、2006年の法律改正で規定して以来、これまで実施例はない」と述べた一方で、「2018年度からの国保改革によって、都道府県が県内の医療費の水準や見通しを踏まえた保険料設定と住民への説明責任を負うことになり、県内の医療提供体制の在り方と一体的な検討を行うことになった。このため、都道府県における医療費適正化の取組に資する実効的な手段を付与し、都道府県のガバナンスを強化する視点もある。これも踏まえ、医療費適正化に向けた地域別の診療報酬の具体的な活用可能なメニューを国としても示し、2018年度から開始した3期医療費適正化計画の達成に活用できるようにしていくべきであると考えている」などと、地域別診療報酬の実施に踏み込んだ発言をした。

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 としては、主体性は都道府県にある、ということをつねに前面に押し出そうとしているわけで、今回の奈良モデルの議論は是非とも活発な議論を進めてもらいたい、といったところだろうか。

 

○病院団体幹部:「地域差撤廃は、全国の医療関係者の悲願だった。単価の全国統一の歴史を無にし、社会的混乱を招来させる」

皆保険制度発足時、医療費は地域によって「甲地」と「乙地」に分かれ、1点の単価差があったと病院団体幹部の先輩から聞いている。地域差撤廃は、全国の医療関係者の悲願であった。この先達の労苦や尽力による単価の全国統一の歴史を無にし、社会的混乱を招来させる。

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 全国一律にまで至ったこれまでの経緯も、相当な苦労の上で成り立っていることを物語ったエピソードだ。

 

○保険局元幹部:「日本の皆保険制度が崩壊する」

厚労省保険局の元幹部は、地域別診療報酬が実施されれば、「こちらは1点10円でなく9円、あちらは8円と広がれば、全国一律で診療報酬を決めている意味が失われる。日本の皆保険制度が崩壊する」と危機感を露わにした。

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 下げる議論にしかなっていないが、もし仮に保険財政が健全で、人口構成がバランスのよい自治体があるならば、「1点=11円」などという議論も出てくるのだろうか。こと医療保険に関して患者負担は上がってしまうものの、その裏腹に、その地域社会は全体が若々しい、ということも背景にある。いわば、高度成長期の日本社会のようなものだ。そんな都道府県なら、企業や人を引き寄せる誘致の材料になりはしないか?そんなことを考えてしまった。

 話を戻す。

 

○奈良県前副知事は、現行法で地域別診療報酬を設定できると県庁内で部下に説いていた

 財務省主計局で厚生労働省を担当し、今年7月まで奈良県副知事に出向していた一松 旬氏は、副知事職当時、県庁内で現行法に地域別診療報酬を設定できる旨の記述があることを部下に説いていたといわれる。

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 奈良県が「奈良モデル」を発信した背景には、財務省からの出向者による働きかけがあったのであろうと思われるエピソードでもある。

 自治体首長のコメントもいただいた。

 

○奈良県知事:「地域別診療報酬は法律で規定された権限。伝家の宝刀として抜けないのもおかしい」

 奈良県の荒井正吾知事は、5月28日開かれた政府の社会保障制度改革推進会議で、同県の地域医療構想などを説明した上で、地域別診療報酬の活用に関して「診療報酬引き上げありきではない。むやみに『伝家の宝刀』を抜くことはしない。しかし、法律で規定された権限であり、抜けないのもおかしい。最終的な選択肢の一つだ」と説明した。

 

○栃木県知事代理:「地域別診療報酬は、妥当性などを踏まえ、慎重な対応が必要」

 4月19日開かれた厚労省の社会保障審議会医療保険部会で、全国知事会社会保障常任委員会委員長でもある福田富一栃木県知事の代理として出席した委員は、「地域別の診療報酬の設定は、国がその活用を積極的に促すという性格ではなく、都道府県の意見を出発点として議論していくべきもの。その妥当性や医療費適正化にどんな貢献があるかも踏まえ、これまでの議論を踏まえ、慎重な対応が必要である」とコメントした。

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 都道府県を預かる立場で、都道府県のありようを憂いその延長線上で国を憂うのは、おそらく誰も変わらないのだろうが、どちらももっともなご意見であり、どちらが正しいかわからない。筆者の勉強不足なのかもしれないが、元厚労省官僚が立候補して議員になる、厚労行政を変えていこう、とする動きはあるが、元財務官僚が立候補し、行政を変えていこう、などという動きはあったのだろうか?引退後、一般企業や独立行政法人などでのご活躍は当然のようにあるように思えるのだが…。財務省は裏方から政治を動かす、といったところなのだろうか

 

 企業経営者のコメントである。

○「医療は、全国統一料金で商売できるので、うらやましい」

 医療は、全国統一料金で、さらに公的保険制度に守られ、取りっぱぐれがない。うらやましい。一方、一般企業は、大都市では高い地代、人件費、材料費などがかかり、利益率は僅かだ。医療機関は、診療報酬という全国統一料金が保証され、地方だと比較的安価な人件費、材料費で済み、利益率が高いのではないか。

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 こういった、他業界からの視点も重要である。その通りで、大都市でも1点10円、地方でも1点10円なので、もし大都市でペイできるのであれば、仮に同様のオペレーションが実現でき、同様の収入が保証されるとするならば、それは土地にかかる費用、人件費などを鑑みれば、地方の利益率が高くなるのは、理の当然だろう。それゆえ企業は人件費の安定する場所を探し、立地し、製品を作り、世に出し流通させ、地方で生産(海外かもしれないが)した商品を大都市でも販売するのである。現物給付である医療は、その場で医療を提供する必要があるが、企業活動において、加工は(主に製造業的な発想であるが)、自らが求めた出来うる限りの好立地で行うことが可能なのである(※1)、ということは付け加えておきたい。

 

 最後にこんなコメントを紹介して締めくくりとしたい。

 

○患者(利用者)のコメント:「点数の低い県の方が窓口負担は軽くなるので、単価点数の低い県で治療を受けたい」

 患者にとっては点数の低い県の方が窓口負担は軽くなる。年々患者自己負担が上がっているので、仮に、点数単価が1円安くなり医療費が1割安ければ、単価点数の低い隣県の病院で治療を受けたい。

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 ランキング雑誌などで、病院のランク付けが行われたり、スーパードクターのいる病院などが紹介されたりと、今や、一般利用者に幅広い情報が提供されている。それもこれも、NDB(ナショナルデータベース)やDPC制度におけるデータ提出が元になっており、それを加工し、見えやすい形で提供する事業者の登場により実現できている時代である(※2)。一般市場においては、同じホテルの一泊料金すら、提供事業者により異なっており分かりにくいのが、今度はそれを比較する便利なサイトも生まれているのは周知のとおりだ。

 人々はそこから得られた情報から比較・吟味し、より自分の望む条件に近いモノ・サービスを購入する。今や医療も情報上はそうなりつつある。

 国のデータを使用して行っているのだから、比較検討し、競争原理を働かせようとする行為は、国も認めているのだろう。だが、行き過ぎた市場原理が働くと、「ふるさと納税」に代表されるようにお礼の品合戦がはじまり、これまた国から諌められるのだ。

 1点10円が全国一律から都道府県別に変わっていくには、まだまだ時間のかかる話であろうし、もしかしたら議論だけにとどまるのかもしれない。しかし、「安くて良いものを」求める人間の心理は、一度火がつくと盲目的にすらなりかねない。

 スーパーの特売品だけ目がけて、次の特売品目がけて、ガソリン代を払って渡り鳥さながらにあっちこっちを右往左往させられる我が身を思いつつ、医療はそうあってほしくないな、と、よくできた国民皆保険制度の歴史を考えた秋の夜長であった。

 

<ワタキューメディカルニュース事務局>

 

 (※1)・・・医療における手術や創傷処置を、まさか加工とは言うまい。

<筆者>

 

 (※2)・・・

病院情報局(https://hospia.jp/) というサイトも非常に見易く、分かり易い。

 こういった仕組みを作った方は、大手銀行を退職された方と聞く。医療を取り巻く環境を、医療以外の方が周辺整理を行い、世の中に分かり易い情報を提供してくれている。厚労省ばかりに頼ることなく、色々な仕組みを作ろうとするベンチャースピリットには頭の下がる思いである。

<WMN事務局>

 

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