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558号 最大で40万床以上削減!? ‐2013年の157万床が115万床に‐

2015年07月15日

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最大で40万床以上削減!? ‐2013年の157万床が115万床に‐

政府の専門調査会が2025年の必要病床数を推計

 ■2025年必要病床数は、2013年の134.7万床から約20万床削減

 内閣の社会保障制度改革推進本部に設けられた「医療・介護情報の活用による改革の推進に関する専門調査会」(会長=永井良三・自治医科大学長)は6月15日、将来の需要推計に基づく2025年の必要病床数の推計を盛り込んだ報告書をまとめた。

 その中で注目を集めたのが、2025年の必要病床数(目指すべき姿)が115~119万床程度と、2013年の134.7万床(一般病床100.6万床、医療療養病床・介護療養病床計34.1万床:医療施設調査)から約20万床削減する推計を示したことだ。2025年の必要病床数は115万~119万床程度のうち、病床機能別は、高度急性期13.0万床、急性期40.1万床、回復期37.5万床、慢性期24.2~28.5床(図1)。

 ただし、2013年の134.7万床に、未報告・未集計の病床数などを加えると約157万床にも達するとみられる。このため、2025年には2013年の157万床から最大で約40万床も削減するという推計も考えられる。

  今回の推計では、厚生労働省が今年4月に公表した地域医療構想策定ガイドラインで示した算定式をもとに、患者の流出入が現状のまま続くことを想定した「医療機関所在地ベース」と、患者の流出入がなく入院が必要な患者は全て住所地の2次医療圏の医療機関に入院すると仮定した「患者住所地ベース」の2類型で必要病床数を算出。2025年の必要病床の全国総数は、「医療機関所在地ベース」で114万8500~119万1200床、「患者住所地ベース」で114万8500~119万1300床で、ほぼ同数。ただ、患者流入の多い大都市部などでは、「医療機関所在地ベース」の推計病床数が多く、流出の多い地域では「患者住所地ベース」の推計病床数が多くなっている。

 病床機能4分類の推計病床数の内訳は、「高度急性期」13万床程度、「急性期」40.1万床程度、「回復期」37.5万床程度。「慢性期」は療養病床の入院受療率の地域差の縮小度合いを加味してA~Cの3パターンで推計し、24.2万~28.5万床程度と幅を持たせて推計。一方、将来、介護施設や高齢者住宅を含めた在宅医療などで、追加的な対応が見込まれる患者は29.7万~33.7万人としている。

  2013年の既存病床数と比較して、全体の病床数が不足すると推計されたのは、埼玉、千葉、東京、神奈川、大阪、沖縄の6都府県。このうち大阪では約6000~1万床、神奈川では約8000~9400床の不足が見込まれるとしている。病床過剰となる道府県のうち、最大で1万床以上が過剰となると推計されたのは、北海道(過剰病床数約1万300~1万4900床)、山口(約7600~1万200床)、福岡(約8500~1万2300床)、熊本(約1万600~1万2500床)、鹿児島(約1万700~1万2900床)となっている(図2)。

<日本創成会議の提言>
 民間有識者でつくる日本創成会議(座長=増田寛也元総務相)は6月4日に発表した提言「東京圏高齢化危機回避戦略」の中で、2025年には東京圏で介護施設が13万人分不足すると指摘しており、社会保障制度改革推進本部の専門調査会の推計通りに病床を減らせても、病床削減の受け皿として在宅や地域の介護施設でどこまで患者を受け入れられるかは不透明な情勢だ。

<厚労省老健局のコメント> 
 「地域包括ケアにおける、住み馴れた地域などで老後を送れる体制の整備を行うことは、大前提であるが、希望する人については、移住も一つの選択肢 である。」

<大分県介護サービス事業課のコメント>(別府市への移住推薦に関して)
 「こちらに元気な内からきたい方がいるなら歓迎する。一般論として地域活性化策につながるであろう。元気なうちに来られて、地域で活動していただければ、活性化につながる。受け入れ体制としては、地元の考え方に配慮していくが介護給付など、財政面の問題と併せて検討していく」。

 

日本医師会は、「地域医療の現場を混乱させる」と反発

 「20万床削減」という数字に医療界には衝撃が走った。早速、日本医師会は6月17日の定例記者会見で横倉会長と中川副会長が声明を発表。

 「地域医療構想の構想区域ごとの必要病床数を全国集計することに意味はなく、単純集計を公表したことは遺憾」とした上で、「報告書の公表以前に、情報が流出し、一部マスコミで『病床10 年後1 割削減』『全国の病院、必要ベッド20 万床減』と報道され、地域の医療現場を混乱させ、地域住民を不安に陥れた。きわめて遺憾だ。今回の報道によって、全国の医師会員から多くの心配の声が寄せられている。マスメディアの影響力の大きさを感じる」などと反発。

 また、「この専門調査会は、医療・介護情報の活用方策等の調査及び検討を行うことを目的として設置されたものにもかかわらず、削減病床数が推計できるデータを示し、医療・介護提供体制の改革そのものにまで踏み込んだことは、明らかに越権行為だ」と、不快感を顕わにした。

 さらに中川副会長は、報告書で懸念される点として、①地域の実情を踏まえることに制限をかけている、②都道府県知事の権限強化、③平均在院日数のさらなる短縮化を求めている、④診療報酬について具体的な記述がある、⑤早急に地域医療構想を策定すべきとしている-ことをあげた。

医療・介護経営に関わる経営の声
 今回の推計では、何も対策を取らないと、2025年に全国で必要病床数は高齢化によって152万床となる。しかし、自宅や介護施設で29.7万床~33.7万床を受け入れられれば、必要なベッド数は115万床~119万床になり、2013年の134.7万床に比べて20万床削減可能としている。「20万床削減」の大前提には、在宅医療や介護サービス提供、介護施設などの充実が欠かせない。しかし、「恐怖すら感じた」マイナス2.27%の2015年度介護報酬改定では介護サービス提供、介護施設などの充実は覚束ない。今回の「20万床削減」という推計は、さらに恐怖が増長されてしまう…。

 事務局のひとりごと

 「病床削減」。紙面や報道では20万床という数字がセンセーショナルにとりあげられ、医療業界では大きな波紋が起こっている。
 平成27年2月時点の病院の病床数合計は、約157万床である。ちなみに同月時点の入院患者数は約129万人だ。
 129万/157万≒約82%。現在でも患者の横たわっていない病床が数字上約28万床ある。
 マクロ的にみれば「(救急の為の病床確保もあるのだろうが)使っていないなら、なくなっても大丈夫でしょう?」ということなのだろうか。とはいえ、医療機関それぞれの環境・背景で考えると、簡単にいくはずもない。
 今後、二次医療圏ごと(小中学校区ごと)に考えられた医療・福祉の提供体制が「地域包括ケアシステム」という呼称で展開されてゆく。

 これからのケアは、各自治体の手腕如何で大きく差が出てくるだろう。

  いささか旧聞に属する話題であるが、2015年2月、京都国際会館で開催された「第53回 関西財界セミナー」では、“一極集中(首都圏)の是正と関西が持つ強みの発揮”をテーマに、大阪・神戸・京都の三大都市が連携・一体化した「複眼型スーパー・メガリージョン」の形成と、関西が首都圏に並び立つ「極」の1つとなっていこう、という宣言が採択の1つとしてなされた。

 「東京は都市が放射線状に作られているため、特に出勤時に殆どの人がどうしても中央に向かうという構図になってしまう。片道2~3時間なんて当たり前。関西では考えられないようなラッシュが発生する。一度首都圏を離れこちらで仕事をしてみると、あのラッシュには正直二度と耐えられない。」
 
参加者からの首都圏一極集中に対する印象的な発言だった。

 多くの人々が集まるゆえ、多くの機能が集中する魅力ある都市、首都圏のきらびやかな側面の陰に、人が多すぎることによる不自然な弊害も生まれている。
 医療もまた然り。こちらは大阪も挙げられているが、東京では病床が不足してしまい、将来医療難民が生まれかねないという。日本創成会議の主張は、「不足しているからといって、また地価の高い東京にお金をかけて病床を用意するのですか。今あるリソースを活用しましょうよ。仮にハード面が整備できてもソフト面、介護する人材だって首都圏だけで探そうとしても集まりませんよ。」といったところか。
 首都圏では、いや、今や大都市のコンビニエンスストアでは、日本人ではないと思しきアルバイトの方を見ない日はない。日本人で職を探している人がその職に就こうとすらしていないのだろうか。飲食店や小売店でも深刻な人手不足が叫ばれ、そんな中で現場のオペレーションを無理に遣り繰りし、企業側がそれを現場任せにしていると、たとえ、それが使命感による行動であったとしても今度はその企業が「健康ブラック企業」などというレッテルを貼られかねない。そのサービスを当たり前のように享受しようとする消費者はブラック消費者ではないのか。というのはブラックジョークか…。
 いつでも・どこでも・より早く・より便利に・よりおいしく・安心・安全で、、、そしてより安く。これまで積み重ねられてきた経済活動だが、これまでのデフレ型経済の中で、安定した格安(と思われているだけかもしれないが)の労働力が支えてきたという側面があるのは間違ないだろう。少子化(※)や全学時代に突入している感のある現在、比較的単純労働と思われている業種は人集めすら難しい。医療もだが、特に介護人材もそうならないとは限らない。

<ワタキューメディカルニュース事務局>

 

※…平成26年の出生数は約100万人、死亡数は約127万人。
ちなみに中絶件数は減少傾向にあるものの、年間約20~30万件あるという。

 

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