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No.656 急性期7対1病棟から急性期2・3への移行は3%程度にとどまる~中医協入院医療分科会調査

2019年07月15日

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7対1病棟の95.6%が急性期1を選択した一方、急性期2・3への移行は3%強

 従来、「7対1一般病棟入院基本料」を届け出ていた病棟のうち、新たな「急性期一般病棟入院料2」への移行は2.6%、「急性期一般病棟入院料3」への移行は0.5%にとどまっていることが、6月7日開催された中医協の診療報酬調査専門組織「入院医療等の調査・評価分科会」(入院医療分科会)で報告された「2018年度入院医療等の調査」結果速報で明らかになった(図3 改定前に一般病棟(7対1)を届出ていた病棟の状況)。

 

 従来の入院基本料では「7対1」1591点と、「10対1」に重症度、医療・看護必要度加算1を算定した1387点との間に開きがあり、「100床当たり年間7500万円近い収益差」があるなど減収幅が大きいために転換が難しいことが指摘されてきた。

 このため、2018年度の診療報酬改定では、入院基本料・特定入院料の報酬について、「基本部分」(看護配置など)と「実績評価部分」(重症患者の受け入れ状況など)とを組み合わせ入院基本料が再編・統合されて「急性期一般入院基本料」となった。これにより、急性期一般入院料1は1591点、同基本料2は1561点で差が小さくなり、地域の医療ニーズや将来の医療ニーズの変化を見据えた病院経営戦略(入院基本料の選択)をしやすくなることが期待された。

 

 しかし、今回明らかになった「2018年度入院医療等の調査」結果では、改定前に「7対1」を届け出ていた病棟が2018年11月時点でどの入院基本料を届け出ているかについては、96.5%が新たな「急性期一般入院料1」2.6%が「急性期一般入院料2」、0.5%が「急性期一般入院料3」と、急性期2・3への移行はわずかだった。7対1の病床数を約35万床と仮定すると、急性期2・3への移行は約1万床と考えられる。

 

■急性期1の「施設基準を満たしている」「医療需要がある」など、移行の必要性なしの理由が多い

 「急性期一般入院料1」を届け出ている理由(n=314、複数回答)については、「施設基準を満たしており、特に転換する必要性を認めないため」が86.6%、「改定前の一般病棟(7対1)相当の看護職員配置が必要な入院患者が多い(医療需要がある)ため」が76.8%、「急性期一般入院料1の方が、他の病棟等と比較して経営が安定するため」が41.4%だった(図4 急性期一般入院料1を届出ている理由)。

 

 

 一方、「7対1」から「急性期一般入院料2・3」に転換した医療機関(n=26、複数回答)では、最も該当する理由として「重症度、医療・看護必要度の基準を満たすことが困難なため」が50.0%で最多。「看護師の確保が困難なため」が26.9%だった(図5 一般病棟(7対1)から転換した理由)。

 今回の調査結果から、急性期7対1から急性期2・3へのシフトは進んでいないことが明らかになり、2018年度診療報酬改定の目玉である「医療機能や患者の状態に応じた入院医療の評価(一般病棟入院基本料(7対1、10対1)の再編・統合)」について、厚労省の思惑は外れたのではないかとの声も聞かれる。

 

 

【事務局のひとりごと】

 

 ダイヤのA actⅡ(作:寺嶋裕二)

 ビッグオーダー(作:えすのサカエ)

 弱虫ペダル(作:渡辺 航)

 Jドリーム(作:堀内 夏子)

 ハリガネサービス(作:荒 達哉)

 不沈アタッカー(作:粂田 晃宏)

 クロカン(作:三田 紀房)

 送球ボーイズ(原作:フウワイ 作画:サカズキ丸)

 ストライプブルー(作:松島幸太朗、森高 夕次)

 エリアの騎士(原作:伊賀 大晃 作画:月山 可也)

 

 “レギュラー争い” “マンガ”とあいまい検索すると、このような検索結果が出てきた。

 絵を見る限り、おおよそがスポーツ(野球・サッカー・バレー・競輪など)をテーマとしていると思しき作品群だ。残念ながら筆者はどの作品の内容も知らないので(辛うじて知っているのは堀内夏子さんか?、時代の変遷を大いに感じる)、中にはスポーツ以外のテーマがあるかもしれないので、もしファンの方がいらっしゃったら、異なった解釈があったとすればそこは何とぞご容赦いただきたい。

 とにかく、特にその世界(スポーツが多そうだが)においてトップを走るために努力する群像を描いた(のだろうと思う)作品は、読者の心を捉えて離さない。おそらくマンガの主人公はトップを走り続ける(あるいは目指す)という、一握りの人種にクローズアップされているはずなので、読者はヤキモキしながらも、主人公に感情移入した結果、最終的にはもたらされた結果にカタルシスを覚えることになるのだろう。

 7:1と10:1の議論を先のマンガに例えるのはいささか暴論であるとは思うのだが、世論一般的には、こういった構図でこの問題を見ているのではないか?ランキング好きの我が国特有(でもないか)の、表面的には弱肉強食に迎合する国民性を思う今日この頃である。

 

○保険局医療課長:「急性期2・3への転換、結果として多くはないと思う」

 6月7日の中医協入院医療分科会の会合で、急性期7対1から急性期2・3への転換が3%とわずかであったことについて、「この数字をどう読むか。改定作業をしていた人たちは人事異動でここにいないが、想定通りか」との委員からの質問に対して、改定後に厚労省保険局医療課長に就任した森光敬子氏は、「どれくらいの予測だったかは分からないが、結果として多くはないと思っている」と答えた。

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 筆者は森光医療課長にお会いしたことはないが、厳しい問合わせである。重症度、医療・看護必要度の基準について、中医協で“高い・低い”の攻防が繰り広げられていた、2018年診療報酬改定に至る議論で、7:1入院基本料は、今でこそ槍玉に上がっている、妊婦加算の話よりも、間違いなく渦中の話題であった結果的に診療側と支払側での主張が相容れることはなく、公益裁定での結果で30%に落ち着いたのだ、と記憶している。その後、厚労省のお役人と意見交換をすることがあったとしても、7:1の重症度、医療・看護必要度の割合の、その基準に関する話題は、当時はもはやタブーであったような気がしている。

 そんなことも今は昔(と言ってもいいのだろうか?)、実際の届出状況を確認してみれば、当時、あれだけ10:1入院基本料のバリュエーションができたことに対する好感的な受け止めが多かったにもかかわらず、結局7:1入院基本料の届出医療機関が、急性期医療の病棟では大半、いや、ほぼ全てを占めるという事態に、批判が集中しているのだという。「1/4の病院が基準値から外れかねないという説もある」というのは何処に行ったのか?

 断っておくが、矛盾しているようだが、WMN事務局の見解としては、膨張する医療費に対する問題意識は当然あるものの、中医協の議論が、ただ7:1からの“ふるいがけ”のような議論だったことに対し、賛同しているつもりは全くない。結果、殆どの急性期病棟が7:1入院基本料を継続して算定することができる基準を満たしていることに対しても、ある意味“そんなものだろう”とすら考えている。それぞれの医療機関の経営上の問題を考慮すれば、10:1に移行してしまえば二度と7:1に戻れないと思っていながら第一義的に10:1に移行しようとする考えが生まれないことは自明の理だ。多少の病床利用率の低下と天秤にかけてでも、7:1の維持に固執するはずだ。そんな背景が容易に想像できるし、実際に10:1に移行した医療機関の少なさを考えればその裏付けにもなろうというものだ。オーバーに聞こえるかもしれないが、仮にハードルが34%(当時の議論の最高値)であったとしても、今にして思えば、大して結果は変わらなかったことだろうとすら思う

 そして、当時の保険局医療課長(確か迫井課長?)は、すでにご栄転で中医協の議論には顔を出していない(その立場にない)のである。

 厚労省の医系技官、保健局医療課長であれば、これくらい(?)の修羅場は当然覚悟せねばならないのだろうが、何とも因果な話である。

 

 コメントを紹介したい。

○中医協支払側:健保連参与「自院の急性期病棟からの転棟先として地域包括ケア病棟利用は、地域包括ケア病棟の趣旨に反する」

 健康保険組合連合会参与の松本義幸氏は、地域包括ケア病棟・病室の調査結果について、2番目に多い12.5%だった「在宅医療の後方支援として、急変時等の入院先として利用している」が創設の理由だったのではないかと指摘した上で、「自院の急性期病棟からの転棟先として利用している」が最多の63.8%に上ったことをあげ、「趣旨からするといかがなものか。要件の見直しなどを考えてもいいのではないか」と指摘した。

 

○中医協診療側:日医常任理事「適切な医療・看護ができるところに移すのは当たり前」

 健保連の松本氏の指摘に対して、石川広己・日本医師会常任理事は、「院内であろうが、院外であろうが、患者に状態にマッチした適切な療養環境で受け入れることが望ましい。医療保険制度の中で、患者に適切な医療・看護ができるところへ移すのは当たり前で、それが医療経営だ。妥当だ」と反論した。

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 さらにコメントを続ける。

○日病常任理事:「職員は4月に採用する。今回のデータだけで入院料2に行かなかったことについて評価が難しいと思う

 「急性期一般入院料1」を届け出ている理由について、「施設基準を満たしており、特に転換する必要性を認めないため」が86.6%だった理由について、日本病院会常任理事の牧野憲一・旭川赤十字病院院長は、「転換する必要性を認めないとあるが、職員を2018年4月に採用し、辞めさせる(異動)というわけにはいかない。今年4月で調整がされると思うので、今回のデータだけで入院料2に行かなかったことについて評価が難しいと思う」と指摘した。

 

○全日病副会長:「回復期リハ病棟のリハ実績指数上昇は、早期リハを集中的に実施した成果」

 すべての入院料種別において、2018年度改定前から改定後にかけて、回復期リハビリテーション病棟のリハビリテーション実績指数が上昇していることが今回の調査で確認できた背景について、神野正博・全日本病院協会副会長は、「より早期に脳血管疾患患者や大腿骨頚部骨折患者を受入れ、より早期にリハビリテーションを集中的に実施している成果が現れているのではないか」との見立てを示した。

 

○日慢協副会長:「在宅復帰先の見直し。在宅復帰に力を入れてきた療養病棟は肩を落としている」

 2018年度診療報酬改定で7対1入院基本料の在宅復帰率の見直しが行われ、「すべての療養病棟」が認められたため、7対1病棟側も「加算取得病院」を探す必要がなくなり、療養病棟側も「加算取得」のインセンティブが低下したとされる。この点について、池端幸彦・日本慢性期医療協会副会長は、「2018年度改定では、十分な議論もないままに、在宅復帰先の見直しが決まってしまった。在宅復帰に力を入れてきた療養病棟は肩を落としている」と指摘した。

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 とにもかくにも、何らかのルールが決まれば、そのラインの上か下か?(右か左か?)という議論はつきものであり、さらに言えば、いわゆるオンライン(ライン内)を目指すのは当然だ。

 厚労省もそんなことも半分分かっていながらの診療報酬改定ではなかったか(筆者の想像もかなり入っているが)?

結果が出てきたので、今度はより厳しいハードルを用意する外堀が埋まったとも取れるわけだ。厚労省としても、2年遅れだったとしても、今度は大手を振ってじわりじわりと7:1入院基本料への締め付けが実行できるのだ。ルールは作る側の方が圧倒的に有利である。

 

 こんなコメントを紹介したい。

○「勤務するなら7対1病床。診療報酬が高く経営が安定しているので、給与面も反映」

 患者にとって手厚い看護を受けられるという7対1看護だが、働く側からみてもメリットがある。看護師1名の担当患者数が少ないため負担が減ることや、勤務している看護師が多いため勤務面での労働環境がよい。また、7対1看護の基準を満たしていると診療報酬が高くなるため病院の経営状況が安定しており、給与面に表れることもある。

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 人間、待遇が良い方向に集まるのは仕方のないことで、このコメントはそれを如実に物語っているわけだ。一時、自民党政権から民主党政権に取って代わられた時、当時一世を風靡した事業仕分けにおいて、「2位じゃだめなんですか?」という女性議員の発言がクローズアップされた。ここまで一連の文章を構成してきたが、(仮に)10:1を2位としたとして(暴論であることは百も承知の仮定である)、1位である7:1は、人材確保、経営的側面から考えても、それぞれの医療機関にとっては、やはり死守すべきものなのだろう。2位じゃだめなのだろう。

 

 話は変わるが7:1入院基本料から10:1入院基本料に移行した病院のコメントである。

 

○「働き方改革に伴い重症患者に対応した看護師の確保が困難となり、10対1に移行」

 医療従事者の働き方改革に伴い、急性期病床の定期的な看護師確保が難しくなり、10対1病床に転換せざるを得なくなった。私どものような中小民間病院の急性期病床では、看護師をはじめ医療従事者の確保が最大の悩みである。政府が推進する働き方改革が急性期病院の運営に与える影響は大きい。

 

○「10対1に移行。次は、近隣病院との再編・統合を検討する中小病院」

 2018年度診療報酬改定の入院基本料の再編・統合を契機に、経営安定を考え7対1病床から10対1病床に転換した。次は、近隣病院との再編・統合を考えている。300床以上の大規模病院では医業利益率は良いが、私どものような中小病院では利益率はマイナス続きである。地域の人口減少が進む中で、経営安定のため近隣病院との再編・統合は大きな課題である。

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 このコメントは非常に切実なコメントではあるが、中医協の議論の行き着く先は、遅かれ早かれこういった医療機関が増えることにつながるのだろう。

 

 こちらは7:1入院基本料から10:1入院基本料に移行しなかった病院のコメントである。

○「重症患者割合等に応じて適切な入院料を柔軟に選択できる」報酬体系を考えて欲しい

 今回は、今後の地域の医療需要を分析できる時間がなく、急性期一般入院料2・3への移行は見送った。2018年度診療報酬改定では、7対1と10対1の中間的評価である急性期一般入院料2・3については、現行7対1相当の急性期一般入院料からの移行しか認められないが、次回改定では「重症患者割合等に応じて適切な入院料を柔軟に選択できる報酬体系」を考えて欲しい。

 

○「地域包括ケア病棟に軽症患者を移した方が良いと考え、10対1移行を見送った

 7対1病院と10対1病院では地域包括ケア病棟導入が進んでいると聞く。特に一部の7対1急性期病院では、「7対1の施設基準である重症患者割合を維持するために、一部を地域包括ケア病棟とし、そこに軽症患者を転棟させる」ことなどが行われている。このため、10対1病床に移行するよりも、地域包括ケア病棟を確保して軽症患者を移した方が、経営が安定するのではないかと転換を見送った。

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 何事も拙速には進まないものだ。これまでWMNで折に触れてとりあげて来た話題(考え方)がコメントの至るところに散りばめられている気がしてならない。

 

 こんなコメントを紹介したい。医業系コンサルタントのコメントだ。

○「医療従事者の働き方改革を踏まえ、入院料2・3の選択を」

 「急性期一般入院料2」と「急性期一般入院料3」では看護配置は10対1とされ、重症患者割合の受け入れに伴う看護師の負担を考慮し、例えば前者では8対1看護、後者では9対1看護とすることも可能で、この場合、単純計算では「急性期一般入院料1」<「急性期一般入院料2」<「急性期一般入院料3」という形で利益率が上がると考えられる。医療従事者の働き方改革に伴う急性期病床の看護職員確保や今後の病院経営戦略を考える中では、「急性期一般入院料2」や「急性期一般入院料3」への移行が、魅力的な選択肢となってくると思う。

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 至極まっとうな考え方であるが、採用した人員が急に不要となる、などという劇的な方向転換を選択肢とすることができる医療機関はそうない。一般病床再編(急性期病床再編)は、その帰結がようやく見えかかるまでに、あと何度の診療報酬改定を経ていく必要があるのだろうか。マンガのように、一握りの主人公だけがハッピーエンドを迎える結末が、皆にとってのハッピーエンドになるのなら良いのだが。現実世界の大いなる矛盾である。

 

 

<ワタキューメディカルニュース事務局>

 

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