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No.609 地域包括ケア病棟は「地域多機能型病院」を目指すべき。武久日慢協会長が地域包括ケア病棟研究大会で発言

2017年08月15日

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■武久氏、日本の病院は「高度急性期病院」と「地域多機能型病院」に大別される

 日本慢性期医療協会の武久洋三会長は、7月9日都内で開かれた第3回地域包括ケア病棟研究大会(大会長=安藤高朗・永生病院理事長)のシンポジウム「地域包括ケア病棟と医療・介護・福祉連携~2018年の姿~」で、2018年度診療報酬・介護報酬の同時改定を契機に、「中途半端な自称急性期病院がいよいよ客観的な指標により、医療界から追放されるだろう」と厳しい見方を述べた上で、近々に日本の病院は「高度急性期病院(広域急性期)」と「地域多機能型病院」の2つに大別されるとの見通しを示した。その動きの中で、地域包括ケア病棟は「自院からの受け皿として活用する病院」「回復期・慢性期からレベルアップした病院」をめざしていくべきとの考えを示した。

 武久氏が述べる「地域多機能型病院」とは、「地域包括ケア」「回復期リハビリテーション」「高度慢性期(慢性期治療)」「障害者」の各病床を有する。同氏は、「地域多機能病院は、回復期リハビリテーション病棟よりも地域包括ケア病棟を必ず取得しなければならない。回復期リハビリ病棟から地域包括ケア病棟へのシフトが起こるだろう。リハビリだけをしたらよい時代は終わった」と強調した。

 さらに、地域多機能型病院での治療について武久氏は、「多臓器の身体合併症の多い後期高齢期患者が多いため、高度急性期の臓器別専門医の治療よりむしろ総合診療専門医機能を持つ後期高齢者の治療に習熟した医師が必要となる」と指摘した。

 

■猪口全日病会長、地域包括ケア「病院」として成り立つ診療報酬体系を

 同じくシンポジウムで考えを述べた全日本病院協会の猪口雄二会長は、2014年度診療報酬改定で地域包括ケア病棟が新設された経緯について、全日病をはじめ日本医師会・四病院団体協議会が提案した、地域(一次医療圏・生活圏)において連携を中心として地域医療を支える地域密着型の病棟(病院)であり、地域包括ケアを推進する「地域一般病棟」がもとになっていたことを紹介した。

 地域一般病棟の機能は、①急性期入院(軽度~中等度)に24時間体制で対応、②亜急性期の入院機能連携を行う、③救急医療における連携機能を持つ、④在宅療養を支援する病棟(病院)-となっている。まさに地域一般病棟は、①高度急性期や急性期からの受け入れ(ポストアキュート)、②在宅や施設で療養している発症前から生活支援が必要な方の緊急時の受け入れ(サブアキュート)、③発症前には生活支援が不必要な方の緊急時の受け入れに加え、がん化学療法、緩和ケア、手術、麻酔、糖尿病教育入院、医療必要度の高いレスパイトケア等の受け入れ(周辺機能)、④在宅復帰のための心身の準備・回復やケアプラン作成等、院内多職種協働・地域内多職種協働による「退院支援機能」-という「地域包括ケア病棟」(図1)とほぼ同じ機能を有する病棟である。

 

 猪口氏は、地域包括ケア病棟が地域包括ケアシステムにおいて活躍するには、「連携部門の強化」「在宅、介護保険施設等からの急性増悪の受け入れ」「急性期病院からの回復期患者の受け入れ」「医療・介護連携事業への参加」「診療所との在宅医療連携」の機能を担うことが必要であると強調。その上で、「地域包括ケア『病院』として成り立つ診療報酬体系」の確立を求めた。

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関係者のコメント

 

<鈴木老健課長:「同時改定のコアは医療と介護の連携、医療課と検討する」>

 厚生労働省老健局老健保険課の鈴木健彦課長は同シンポジウムで、診療報酬と介護報酬の同時改定について「プラス改定を望む声が高くなっている」とした上で、「改定のコアとなるのは、医療の機能分化、連携強化、地域包括ケアシステムの推進が大きな柱」と医療と介護の連携強化であるとし、入院時のケアマネジャー連携の評価について保険局医療課と連携して検討したいとの考えを示した。

 

<武久日慢協会長:「良質な慢性期医療がなければ、日本の医療は成り立たない」>

 地域包括ケア病棟協会第3回研究大会のシンポジウムで、日本慢性期医療協会の武久会長は、「急性期指標が明確化されると、慢性期指標も明確化されるし、地域包括ケア指標も明確化されるだろう」と述べた上で、「良質な慢性期医療がなければ、日本の医療は成り立たない」と、地域包括ケア時代における慢性期医療の質確保を強調した。

事務局のひとりごと

 

 筆者は本来的にはドラマが大好きである。といっても、なかなか見る時間がないので、近年は余程ハマったドラマでないとビデオまでとって見ようとはしない。4月には警察ものでとても面白いシリーズが2つもあり、全て見た。今夏のドラマではコード・ブルー(ドクターヘリ)を毎週楽しみにしている。今シリーズはすでに3作目(1作目から通算で10年以上経っている)。主人公の救急医たちは、研修医だった1作目の頃から成長し、すでに後輩を指導する立場となっている。個人的には大変好きなドラマである。もともと血を見るのが苦手なのだが、何度も医療ものを見ているうちにだんだん慣れてきた。先日は(第2話)、今の研修医たちが主人公たちに指導されながら命(瀕死の救急患者)と真剣に向き合うシーンでは、涙が出るくらいに感情移入してしまった。患者の酸素濃度が回復した時など、ドラマのはずなのに思わず涙を流しながら「やった!」と叫んでしまった。 「地域一般病棟」といえば「そういえば聞いたことがある」(テリーマン風に:古いか?)、と思われた方もいらっしゃることだろう。当時、厚労省の病床機能についての資料は、病床の機能は病院単位で描かれていることが多かった。そこへ日本医師会・四病院団体協議会が提案した、一つの病院に複数の病棟機能を持つ方が現実的で良い、とされる提案をしていた。それが現在の地域包括ケア病棟の考え方の先駆けであるのだという。なるほど。

 

 関係各位のコメントを集めさせて頂いた。

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<慢性期病院系>

慢性期病院の二代目院長:「慢性期医療が元気でなければ、日本の医療は成り立たないと思うようになった」

 九州の慢性期病院の二代目の院長。4年前に急死した父親の後を継いだ。それまでは東京の大学病院で外科医をしていて、田舎で高齢の患者さんを診ることなど全く考えておらず、本音ではいやいや後継者となった。しかし、3年ばかり地域の患者を診ていると、今後の超高齢社会、地域包括ケアの時代を考えると、慢性期医療が元気でなければ日本の医療は成り立たないと思うようになった。

 

ある県の民間中小病院長:「地域包括ケア病棟へ転換したくても、病室単位での補助金が出ない」

 医療療養病床から地域包括ケア病棟への病床転換を図りたいと思っているが、私の県の地域医療構想推進事業における転換補助は病棟単位で行われており、われわれ中小病院の病室単位での転換には補助金が出ない。

 

都下の民間病院長:「大規模な急性期病院は、自院患者の転院先として慢性期病院を都合良く使っている」

 公立病院や大学病院など大規模な急性期病院(7:1病院)は、自院内の急性期の患者の転院のために、都合良く使っている。お互いにWin-Winの関係で連携したいのに、こちらが満床の時に限って患者を送りたいと言ってくる。

 

<急性期病院系>

四国のある大学病院長:「大学病院にとって、平均在院日数削減を進める上で地域包括ケア病棟は有り難い存在」

 DPC対応の大学病院にとって平均在院日数削減と退院調整は、経営上の大きな課題である。急性期の受け皿として、地域包括ケア病棟は、有り難い存在である。大学病院は、慢性期病院、地域包括ケア病棟の“後方支援病院”として連携を深めていきたい。

 

北陸の急性期公的病院長:「地域包括ケア病床を提案したが、医師会などの反対で頓挫」

 私どもの病院は400床の急性期病院だが、治療を終えた患者の転院先確保に悩んでいて、病床の一部を包括ケア病床に転換したいと県の地域医療構想調整会議で提案したところ、医師会等が「民間病院の経営を圧迫する」「大病院による包括ケア病棟の届出、本来の趣旨にあらず」などの理由で反対され、頓挫した。その後、県内で地域包括ケア病床申請の動きはない。県地域医療構想では、急性期病院の受け皿となる回復期病床の不足が明らかになっている。必要な病床なのに、なぜ公的病院だとダメなのか釈然としない。

 

<地域包括ケア病棟系>

群馬県の民間病院理事長:「地域医療福祉機能を持つ病院を目指す」

 地域包括ケア病棟協会第3回研究大会のシンポジウム「住み慣れた街でみんないつまでも暮らすための地域包括ケア病棟の役割」で、シンポジストの群馬県沼田市・内田病院の田中志子理事長は、病院の増改築を契機に医療療養病床を地域包括ケア病床に病床転換したことを報告。もともと、認知症疾患医療センターを設置しており認知症患者が多いことから、地域包括ケア病棟を認知症患者が落ち着ける環境を考慮した少人数で過ごせるリビングのある病棟にした。田中氏は、「これからは、高齢者はもとより障害を持つ幅広い世代を受け入れる“地域医療福祉機能”を持った病院を目指したい」と、抱負を語っている。

 

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 「中途半端な自称急性期」といわれる病院が、果たしてどれくらいあるのか、これは筆者には到底考えが及ばないところだ。先月のテーマで「急性期指標」についてとりあげたが、まだその具体的な内容は見えていないものの、高度急性期医療と慢性期医療の間がいわゆる急性期なのだろうが(一般病床、7:1もしくは10:1)、そういったストラクチャーではなく、中身を見て急性期医療を提供しているといえる、いやむしろ、急性期医療を提供すべき患者が入院しているか(そういった患者を連れてくる医療連携がなされているか、取り組みをしているか)を見極めようとするものなのだろう。

 日慢協のコメントをつねづね拝見するに、(仮に)急性期医療から落ちる(語弊があったら申し訳ないが)からといって、イコールそれが慢性期医療とはならない、ということも述べていると考える。

 

 国公立理系を目指していたが、そこから国公立文系に鞍替えし、さらに私大文系に鞍替えし・・・ 「国公立理系をあきらめたからといって、簡単に私大文系を目指されたって、そう簡単にはいかないぞ!受験に失敗するのは、なんとなく大学には入れたらいい、なんて思って勉強しているからだ!」予備校の先生は今、こんなことをいいながら学生を叱咤しているのだろうか?

 

 締め括りに実際に病院を利用されている患者の声を紹介したい

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<「落ち着いてリハビリに集中できる環境がある地域包括ケア病棟」>

 脳梗塞の治療が終わって、大学病院から地域包括ケア病棟のある民間病院に転院し、リハビリに励んでいる。大学病院にもリハビリ病棟があったが、地域包括ケア病棟でのリハビリは、スタッフもゆっくりと話をしてくれる。看護師さんも大学病院のように常に忙しく動き回ってはいないようだ。落ち着いてリハビリに集中できる環境があると感じている。

 

<「お国都合で、高齢者を対象とした様々な名称の施設ができて、その役割が分からなくなってくる」>

 お国都合で、高齢者を対象とした色々の名称の施設ができて、その役割が分からなくなってくる。地域包括ケア病棟とは、病院のパンフレットによると、「一般病棟での集中的な治療を終え、病状が安定した患者さんに対して、在宅や施設への復帰支援に向けた医療や支援を行う病棟です」と説明しているが、似たような施設で、在宅の復帰を支援する「老人保健施設」がある。それに加え、来年には「介護医療院」ができるという。どのような役割の施設なのか。どのような施設でお世話になっていいのか、ますます分からなくなる。

 

<ワタキューメディカルニュース事務局>

 

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