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No.602 「医師・看護師等働き方ビジョン検討会」が最終報告へ。政府の働き方改革で焦点の残業時間の上限規制

2017年04月15日

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■医師の偏在対策と負担軽減、カギは「ワークシェア」

 厚生労働省の「新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会」の最終報告が、当初予定していた3月中旬からずれ込み、4月6日塩崎厚生労働大臣に提出された。約10万人の医師を対象に実施した「医師の勤務実態及び働き方の意向等に関する調査」結果の公表が遅れていることと、3月下旬にまとまる予定の政府の「働き方改革実現会議」(議長=安倍首相)による実行計画との整合性を考慮したものとみられる。

 

 ビジョン検討会は、厚労省の「医師従事者の需給に関する検討会」による、「医師の働き方・勤務状況などの現状を把握するための全国調査を行う」「新たな医療の在り方を踏まえた医師の働き方ビジョン(仮称)の策定を行う」といった中間まとめに沿って、昨年10月に設置された。当初は、2016年内に「医師の偏在対策」をまとめる予定だったが、ビジョン検討会が出した結論を踏まえて、改めて医師需給の推計などを行うことになった。このため、ビジョン検討会の位置づけが曖昧との指摘もある。

 

 検討会は昨年12月22日、「目指すべきビジョン」として、「地域が主導して、医療・介護を生活で支える」を掲げた上で、医師偏在の解消に向け、プライマリ・ケアの確保や、大学医局ではなく都道府県が中心となり取り組むことなどを盛り込んだ『中間的な議論の整理』を取りまとめた。その後、2017年2月6日の会議では、4人の構成員がプレゼンテーションを行い、自由討論を行い、医師の負担軽減、へき地での医師確保などのためには、医師同士、あるいは医師と他職種との間でワークシェアリングが必要との意見が出された。一方で、「医師の医師不足地域への強制配置」「医師不足地域での勤務を保険医療機関の管理者の条件とする」など強制的な手法では、医師偏在は解消できないとの声が上がった。

 

 この日プレゼンを行った2016年「日本サービス大賞地方創生大臣賞」を受賞した愛媛県で在宅医療を展開する医療法人ゆうの森は、2000年に松山市で在宅専門の「たんぽぽクリニック」を開設。現在は常勤医10人、非常勤医1人のほか、MSW、看護師、リハビリスタッフなど多職種を雇用し、約100人の職員を抱えている。この法人の特徴は「疲弊しないシステム」。医師は交代制で2つのクリニックで診療。多職種が参加するWeb会議を開き、情報共有と運営方針の統一を図り、医師同士及び職種間でワークシェアリングを行い、医療の質向上を図っている。

 

■政府の「働き方改革実現会議」実行計画、医師の残業上限規制は法律施行5年後に

 「働き方改革」を構造改革の柱と位置づける安倍政権は昨年9月に、「働き方改革実現会議(議長=安倍首相)」を設置し、「時間外労働の上限規制の在り方など長時間労働の是正」など9つのテーマについて議論を行い、このほど、罰則付きの残業の上限規制など実行計画をまとめた。

 

 現行の仕組みでは、医師は残業規制の対象だが、実際は規制を超えた長時間労働が常態化している。総務省統計局が2012年に実施した調査「職業別週労働時間60時間以上の雇用者割合」では、週労働時間が60時間超の労働者は全体の11.6%で、職種別では医師が38.1%を占め、自動車運転手よりも長時間労働の割合が高い(図3)。

 ただし、働き方改革実現会議の実行計画では、厳しい労働環境になりがちな医師への適用は法律施行から5年後に遅らせる方針だ。これは、日本医師会や病院団体が、「医療法で、医師は正当な理由がなければ診療の求めを拒んではならないとの義務が課せられており、医師が病気や不在時以外は急患を断れない」「地域医療に混乱が起こる」などとし、医師を例外とするよう求めていたことに応えたもの。

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関係者のコメント

 

<塩崎厚労相:「救急など労働環境がかなり厳しい診療科がいくつかある」>

 塩崎厚生労働大臣は3月22日の参院厚生労働委員会で、「新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会」が実施した「医師の勤務実態及び働き方の意向等に関する調査」について、救急など「労働環境がかなり厳しい診療科がいくつかある」ことを明らかにした。

 

<へき地の公的病院長:「女性医師が働きやすい環境づくりを」>

 医師の確保に奔走するへき地のある公的病院の院長は、「医師全体のワークシェアを考えると、医学部定員の約3~4割を占める女性の役割が重要となる。そのためには、産休・育休を考慮した女性医師が働きやすい環境づくりが大切である」と強調。この病院では、急な夜勤にも対応できる24時間保育施設を院内に設置する予定だ。

 

<厚生労働省:次期診療報酬改定の外来医療評価の見直しの視点として「働き方改革への対応」を提示>

 働き方改革の実行計画を受け、厚生労働省は4月から厚生労働大臣の諮問機関である労働政策審議会での審議を始め、改正法案の策定を急ぐことにしている。「改正法の施行までには、少なくとも2度の春闘を経る必要がある」という見通しを示す識者もおり、働き方改革の実現にはハードルが高い。

 厚労省は3月29日開かれた中医協総会で、外来医療の評価の見直しに向けた視点の1つとして、「働き方改革への対応」を提示。これに対し中川俊男日本医師会副会長は「診療報酬改定の守備範囲を超えている」などと指摘し、取り扱うテーマを広げ過ぎないように牽制。働き方改革は、次期診療報酬改定の内容にも絡んできている。

 

<堺日病会長:「時間外上限で賃金の割り増し。大病院では数億円・十数億円の人件費増も」>

 堺常雄・日本病院会会長は、今年2月末の記者会見で、「救急対応をしている医療機関では、医師が24時間待機している。時間外労働上限規制が見直されれば、人員増が必要となる」と述べた上で、「宿直などについては通常の診療業務と異なるため、『時間外』と扱っていない医療機関もある。これが時間外となれば、当然賃金の割り増しが必要となる。大病院では数億円・十数億円の人件費増も想定され、病院の経営にも大きな影響が出る」と、時間外労働の上限規定によって、結果的に病院経営に大きな影響を及ぼす懸念を指摘した。

 

<ある看護師のコメント(病院勤務:入院:夜勤あり):「産休をきっかけに夜勤がなく勤務時間が調整できる訪問看護師を選んだ」>

 30歳前半の看護師。育休明けの職場復帰先に訪問看護師を選んだ理由について、「共稼ぎで、近くに子供をみてくれる身内もおらず、勤務先の病院には院内保育も整っていない。夜勤がなく勤務時間が調整できる民間企業が運営する訪問看護ステーションの看護師に就くことした」と、育児をしながらの病院勤務の困難さを語る。

 

事務局のひとりごと

 

 今回のテーマは「医師の働き方改革」であった。医師の応召義務の問題も悩ましい。医師の働き方改革は政治では先送りとなったが、将来的に解決することが果たして出来るのだろうか。「本日の営業時間は終了しました。」せめて17:30を過ぎたら、病気にも本日の体への侵襲はいったんお休みいただくことができれば、医師や看護師のご苦労も減ると思うのだが・・・。

 医師の問題と少し離れてしまうが、「働き方改革」について筆者が経験した取組みを紹介してみたい。

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 今を去ること2月。関西圏のある大学構内でこんな取り組みが行われた学生が企業に訪問、ヒアリングを行い、学生の視点でそこから出てきた企業の課題と思われるテーマをとり上げ、そして企業に提案を行う。その過程をプレゼン形式で会場の関係者に発表、そして順位付けを行う、というものだ。文科系学部の産学連携、若しくはテーマ取り組み型インターンシップ、とでも言おうか。関西の私立大学6校のゼミ生(2~3回生)がゼミ内でグループを組み、そのチームで取り組む行いが学業での「単位取得」と連動するという。どのゼミも非常に熱のこもった提案だ。

 全9チームあった中で、小職がもっとも高順位(自己採点で:筆者は審査員でないので)につけたのが、11社もの企業へのヒアリング、分析を行った結果、「働きがい」と関係性の深いデニムを(※2)、ある企業の制服にしてみてはどうか?という提案だ。しかもこのデニムの導入が「働きがい」の実現に客観的な分析結果を用いた上でしっかりとした根拠付けも行われていた。実際そのデニムの試作品を拝見したが素晴らしい出来であった。内容的には甲乙つけがたい取り組みもあったが、プレゼンの仕方、話し方、表現力を総合的に考えると一番だった(実際、このゼミが1番であった)。

 そんなコンペティションが第1部で、2部は、企業人と学生のダイアログ(対話)である。今回のテーマは「若者が働きたい企業とは?」である。筆者は過去2回、このダイアログに参加し、「中小企業への就職」をテーマに現役学生と意見交換をさせて頂いていたが、今回は若干趣向が異なった

 学生と企業人で11チームに分かれ、制限時間内(約40分)でそのチーム内で「社長役」を決め、残る人数は社長のスタッフとなる(つまり11社の会社が誕生することになる)。そして、人材獲得のために、学生に対して自社の「働きやすさ」をアピールするコンテストを、突然行うこととなった。はじめてあったメンバー同士で自己紹介を終え、「社長役」を決める(ここは学生にお願いするのが妥当だろう)。そしてわが社のアピールポイントを社長の思いを真剣に受け止めながらみんなで案を出していく。

 最後に、それを各チームが1分間で会場のみんなにプレゼンする。その後は自分以外のチームに挙手で1票ずつ投じ、最多数の共感を得られた会社(チーム)が優勝だ。

 

 わが社は(⑥チーム目)、「シリコンバレーにあるような会社を目指す」、という社長の方針の下、色々なアイディアを出し合った。まとまった当社のアピールポイントは以下の通りである。社長の意見を元に、筆者が「じゃあ、こんな感じではいかがでしょうか」と提案した内容がかなり反映される結果となった。

社員は1日のうち15%は業務以外の自由なことに時間を使って良い。→それが新たなイノベーションを起こす「種」となる。

・必ずしも会社に出社しなくてよい。在宅での勤務も可。

・当社以外の会社での副業も可(但しその副業は企業の管理職以上か若しくは起業であること(時給などのアルバイト的な勤務でないこと)。→企業経営の視点を持った社員がいることは企業にとって有益。

・仮に社員が独立するのであればそれも支援する(社内ベンチャー制度)。→同上

 

 いざ自分の会社でないとなれば、恐ろしいほどアイディアが出るものだ。当社は社長からそれをプレゼンでアピールしてもらった。

 

 他企業(チーム)においては、

① 100年先も安心なアットホームな会社を目指す。

17:00以降は社内でお酒を販売する。有給は100%消化。

③ 社内でスポーツ大会を開催するような夢のある企業。SNS活用で社内を見える化。

④ 社員一人一人を大切にする。社員の意見が直接社長に届く。フレックスタイム導入。有休100%消化。服装自由。

長期インターンシップを実施。在宅ワーク可。金曜日は午後から休み。

⑦ 社会貢献をする。社内のコミュニケーションがよく、風通しの良い会社。社内教育も充実した明るい企業。

⑧ 学生と企業を結びつける取組みを行う。

⑨ 長期インターンシップ導入。ホームページ上で会社の課題を体験してもらう。

⑩ 充実した福利厚生。「プレミアムフライデー手当」を支給。残業なし。育休100%取得可。賞与年3回支給。

ベンチャー企業の起業をサポートするベンチャー企業。コンサルティング業としてノウハウを伝授。

 

 福利厚生面ばかりに目が行き過ぎて、果たしてこれで売上・利益ともに成長できていくのだろうか?と現実的な心配はあるものの、こと「働きやすさ」の観点からするとどれも素晴らしい内容ばかりで、こういうものが学生にとって、どこの会社に行っても魅力的に映るのだろう。

 断っておくがこの取組みに参加する学生の、「就職」というものに関する気持ちは、そんじょそこらの学生とは意識レベルが違う。その点においては「質の高い」学生であるとも言えるだろう。大学2回生の頃、就職のことなど何も考えず、ただサークル活動に没頭していた筆者からすれば、今の彼らは大したものだと思う。

 そんな学生たちが出した意見だ。心の中で突っ込んでしまうような内容もあったが、確かに傾聴に値する内容もあった。良い経験ができた。

 

 意外だがこんな意見も聞くことができた。「『在宅ワーク』は、自分には出来ないと思う。なぜなら皆がお互い監視するような状況にないと、だらけてしまって仕事をすることができないだろうから。むしろ会社に来て、緊張感のある中で仕事がしたい。」なるほど、それもごもっともである。

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 彼らが40~50代を迎え、将来の日本を担う世代となる頃、2040年代の日本における「働き方」とは、いかなるものになるのだろうか。現在の日本を担っている現役世代(「1億総活躍社会」なので、大人は全員か?)は、若い方々の戯言と思わず、一緒になって真剣に働き方改革に取り組む必要がある。

 

 ちなみにプレゼンの結果は、僅差ではあるが、決選投票の末、我が社(⑥チーム目)がもっとも「働きやすい」会社として1等賞を獲得し、皆で万歳した。この会社の将来が楽しみである・・・。


<ワタキューメディカルニュース事務局>

 

※2・・・実際に根拠があるらしいので、興味ある方は調べて頂きたい。

 

 

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