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No.600 「長期処方の増加」は診療所の3分の1に、一方で問題事例も。日医の「かかりつけ医機能と在宅医療」診療所調査

2017年03月15日

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1年前に比べ長期処方が増えたと回答した診療所は、全体の3分の1

 日本医師会は2月15日、次期診療報酬・介護報酬の同時改定に向けた、「かかりつけ医機能と在宅医療についての診療所調査」の結果を発表した。そのうち、「処方および後発医薬品」について、①約1年前に比べ長期処方(30日超)の患者が増えたと回答した診療所は、全体の3分の1の33.5%に達する一方、減った診療所は6.9%で、長期処方が増加している実態が明らかになった(図3)。

 

 

 

②また、長期処方の問題事例として、3カ月の降圧剤長期処方によって、低血圧や血圧コントロールが不良になったことや、過量服薬で救急搬送されるなどの問題点が明らかになった。③さらに、後発医薬品の品質、効果に問題があると考える医師は5割以上もいるとの結果が示された。

 調査は、日本医師会員のうち、診療所開設者または法人の代表者を兼ねる医師から20分の1を無作為抽出した3416人を対象に実施。有効回答数は1603人(有効回答率46.9%)。

 

 過去約1年で遭遇した長期処方(他院での長期処方を含む)が原因として考えられる問題事例として、「大病院で3カ月投与(降圧剤)されて、低血圧になった」「降圧剤の長期処方により、血圧のコントロールが不良となった」「過量服薬して救急搬送、または友人に譲渡」「患者が薬をなくしてしまい、次回予約よりも前に再診」「コスト削減のため投与量や飲み方を自己調整する患者が増加」などをあげた。日医では調査の総括として、「長期処方が増加しているが、長期処方には問題もある。患者の理解も得て、是正していく必要があるのではないか」と指摘している。

 

■厚労省の2016年度後発医薬品の特別調査で一般名処方が3割超える

 このほか日医の調査では「一般名処方加算」の算定診療所は、「加算1」と「加算2」で計69.8%に上り、一般名処方が普及している実態が明らかになった。また、同加算を算定していない診療所にその理由を聞いたところ、「薬局や薬剤師の対応が不安」などの回答は減少したが、後発医薬品の「品質」と「効果」の問題をあげたのは、55.1%、51.3%といずれも5割を超えている

 

 一方、厚生労働省は2月22日に開かれた中医協総会で、2016年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査「後発医薬品の使用促進策の影響及び実施状況調査」の結果を公表した。保険調剤薬局が受け取る院外処方せんにおける一般名処方された医薬品の割合は全体の31.1%に上り、2015年度調査の24.8%よりも6.3ポイント増加し、後発医薬品が選択された割合も増加するなど、後発医薬品の使用が進んでいる実態が明らかになった。

 後発医薬品を処方しない理由の1位は「患者からの希望があるから」、2位は「後発医薬品の品質に問題があるから」をあげ、患者が後発医薬品を希望しない理由として「効き目や副作用に不安があるから」が1位となっており、いまだ後発医薬品の品質への不安が根強いことが明らかになった。

 

 同時期に発表された医薬品を巡る日医と厚労省の調査結果が、次期改定に向けた論議にどのような影響を及ぼすのか注目される。

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関係者のコメント

 

<厚労省の薬剤管理官:「昔は薬を飲んでもらうことが重要だったが、今後は渡した後が重要」>

 昨年9月、都内で開かれたワークショップ「地域包括ケアと薬局・薬剤師の役割」で、厚生労働省の前薬剤管理官は、地域包括ケアシステムにおいて薬局を地域でどう使うかが焦点になるとした上で、「昔は(薬を)飲んでもらうことが重要だったが、今後は渡した後が重要。きちんと評価し、医師にちゃんとつなげることが大事」と、投薬後の薬剤師によるフォローアップの重要性を指摘した。

 

<長期処方に賛成の勤務医:「患者の利便性を考えると、症状安定していれば、半年の長期処方でも良い」>

 勤務する地方の病院に来診する患者さんは高齢者が多く、病院へのアクセスも良くない。患者さんの利便性を考えると、症状さえ安定しているのであれば、半年に1回の長期処方でも良いと思う。

 

<残薬問題で調剤薬局の薬剤師:「医師は、何かあれば、薬を増やすという処方を改めて欲しい」>

 医師は、何かあれば、薬を増やすという処方を改めて欲しい。患者さんは薬の種類が増えるほど、飲まなくなる。管理できなくなり、ゴミ箱に捨てることになる。

 

<在宅歯科医:「多剤服薬を調整すれば、摂食嚥下リハにも効果」>

 在宅歯科の現場で摂食嚥下リハビリテーションを行っている歯科医師。多剤服用されている患者さんで、いくつかの薬を減薬、薬剤変更して調整してもらうと、覚醒が良くなり、嚥下反射惹起しやすくなって、より安全に食事がとれるようになった症例を経験している。

 

<薬剤師会幹部:「長期処方のメリット・デメリット」>

 最近増えてきている「長期処方」には、メリット・デメリットがあると思う。メリットは、患者の受診回数が軽減され、その結果、大病院等の勤務医の外来診療の負担軽減につながる。一方、デメリットは、処方が長期化することで患者の様態の変化を処方医が把握し難くなる。また、飲み忘れ等コンプライアンスの低下が起こりやすくなる。この解決策として医師の指示による分割調剤が平成28年度診療報酬改定で新設された。患者費用負担が増えることなく、薬剤師が薬物治療の最適化に貢献できるシステムである。分割調剤によって薬物治療の治療確認、副作用の早期発見、残薬の解消につながると期待される。

事務局のひとりごと

 

弘法筆を選ばず」という諺がある(※1)。ところがどっこい、実は「弘法こそ筆を選ぶ」なのだと、多感な中学生の時に教わった。

 確かに、囲碁、将棋、楽器、ゴルフ、釣り、など(もちろん書道も)、奥の深い遊び(失礼があったらすみません)において、趣味が高じれば高じるほど、人は道具にこだわるものだというのが恩師(というほどでもないのだが。週にたった一度しかない、書道の先生だったので。)の言葉だ。中学生ながら、「なるほど」とうなずいたものだが、最近つくづくそれを実感する

 

 筆者は肌が弱いので、寝る前と起床時は肌にクリームを欠かさず塗る。これは小学校時代から続けてきたことなのだが、今使用している保湿クリーム(@1,300位)に辿り着くまで、実に何十年も、何種類もの試行錯誤を繰り返してきた。結果出会えたのが今使っているクリームで、もしこのクリームが製造・販売されなくなってしまったら、自分の肌に合うクリーム探しをまたしなければならない。というより、コストパフォーマンス的にも、今後これ以上のものは見つからないだろう、という、身勝手な断言をしても差し支えないくらいに、これこそが筆者の人生においてかけがえのないクリームなのだと、大げさだが半ば確信している(※2)。

 

「医療」という、人の命に関わりかねないものと一緒にするな!とお叱りを受けそうだが、「先発品」とは長い間の信頼関係がもたらす一種の「安心感」なのかもしれない(それはあくまで提供側の論理なのかもしれないのだが・・・)。 

 

 しかし、筆者がもし皮膚科の患者であり、先のクリームが処方薬、しかも先発品であり、さらにジェネリックが誕生したとして、「こっちの方が同じ効き目で同じ成分でジェネリックなので、こちらにしておきますね」などと薬剤師に言われても、愛想笑いをしながら結局いつものクリームを選んでいるに違いない。それくらい、肌に合わなかった時のガサガサ感、ツッパリ感など、微妙な変化を想像すると、変更するなんて有り得ない、と本能的に思ってしまうのだ。

 当然、筆者の購入するクリームには保険適用はされない(医薬部外品)ので、何を選ぼうが当人の自由なのだが、「健康保険」という公的な財源を使う処方薬には、そうも言っていられない背景があるのは、頭では十分に理解できるところだ。

 一概に一緒にできないのだろうが、かくも「個人の自由裁量」が重要視される現代である。場合によっては、どうしても、高い(のだろうか?)「先発品」を患者が選択する際は、今後例えば、患者の自己負担だけ増える、などという検討もなされていくのだろうか?または、それでなくとも、「混合診療」というテーマで今後の議論がなされることも充分予測できる

 

 長期処方のテーマに関して、調剤薬局運営事業者からのコメントを紹介したい。

 患者様にとっての長期処方のメリットは、「医療機関への再診と薬局への訪問の回数が減り、その分、負担金が減る」といった経済的な面が大きいと思う。その反面、「服用を忘れたり、中断したために病状が改善しない」という弊害も生じていると聞く。

 大切なことは、薬剤師が患者様にお薬を渡した後も、定期的に残薬確認も含めた服薬状況や副作用の状況などを把握し、処方医と情報を共有し患者のケアをしていくことであり、それが患者様の一番のメリットとならなければいけないと思う。  長期処方により「残薬の増加」「不足によるクレーム」この2点が増える事が想定される。

海外の「リフィル処方」が導入され、家から遠くの病院への診察回数を減らし近所の薬局で1カ月毎に薬をもらい、服薬状況・副作用の把握をするのが望ましいと思う。調剤薬局としては、手間は変わらないので適切な点数 が付与されることを望む。

________________________________________

 単に薬を調剤するという行為だけでなく、役割を果たした上で、適正な調剤報酬の設定も望んでおられるわけだ。調剤薬局も「保険医療機関」である、という前提に立ち、さらに患者の利便性について考えられた、前向きなコメントだと感じる。

 

 

「(さすがの私でも)本当のところ、思い通りの字を書くなら、どうしようもない筆では無理やわ・・・」弘法大師が現世に生きていたとしたら、もしかしたらこんなことを呟くのだろうか。罰当たりな想像をしてしまうのだった・・・。


<ワタキューメディカルニュース事務局>

 

(※1)・・・インターネットで検索して見ると、「能書家の弘法大師はどんな筆であっても立派に書くことから、その道の名人や達人と呼ばれるような人は、道具や材料のことをとやかく言わず、見事に使いこなすということ。下手な者が道具や材料のせいにするのを戒めた言葉。『弘法は筆を選ばず』ともいう。『弘法筆を択ばず』とも書く。」とのこと。

(※2)・・・営業職時代に営業車を運転しながらよく耳にした、女優 高橋恵子(古い?)の、「好きです!これさえあれば死んでもいい!!      とは思いませんけど」という、チョーヤ梅酒の、ラジオならではのドッキリCMを思い出す。


<WMN事務局>

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