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No.592 入院患者の居住費(光熱水費)負担拡大   

2016年11月15日

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65歳以上の入院患者光熱水費を1日320円から370円に引き上げ提案

 厚生労働省の社会保障審議会・医療保険部会は10月12日、入院時の居住費(光熱水費相当額)負担の見直しを議題に会合を開催した。厚労省から、医療保険の療養病床に入院する65歳以上の患者について居住費負担額を1日320円から370円に引き上げるほか、現在徴収していない65歳未満入院患者から徴収するなど、入院時の光熱水費に関する患者負担の見直しを論点として提示。議論は賛否が分かれ結論を出すには至らず、同省は議論を整理した上で、年末までに再度検討することになった。

 

 現在、療養病床で65歳以上かつ医療区分1の入院患者には居住費負担を求めている。入院時の居住費(光熱水費)に関する患者負担と、金融資産等の保有状況を考慮に入れた負担についての検討については、2015年6月に閣議決定された「骨太の方針2015」で、「負担能力に応じた公平な負担、給付の適正化」の観点から提言。2016年末までに結論を得て、法改正が必要な見直しを行う場合は、2017年の通常国会に法案提出する予定になっている。これを受け医療保険部会で厚労省が、居住費負担額の引き上げのほか、①現在は居住費負担を求めていない医療区分2・3に負担を求めるかどうか、②居住費負担における年齢区分をどう考えるか、③食費の負担のみを求めている一般病床・精神病床などに居住費の負担を求めるかどうか―について示したもの。

 

 応益負担の原則により、医療機関の入院患者や介護保険施設の入所者については、医療費や介護費にかかる一部自己負担(年齢や所得に応じて1~3割)を支払い、また医療機関に入院する患者では、食事にかかる一部自己負担がある。介護保険では原則として食費は完全に自己負担だが、低所得者では「補足給付」という補填措置がある(図3 入院時食事療養費及び入院時生活療養費の概要)。

 

 

■療養病床「医療区分2、3」の居住費負担で賛否分かれる

 居住費(光熱水費)については、次のように制度や病床の種類によってまちまちとなっており(図3)、公平性、整合性をどう図るべきかが医療保険部会での論議の焦点となっている。①一般病床、精神病床などの入院患者、療養病床に入院する65歳未満の患者:自己負担なし。②療養病床に入院する65歳以上の医療区分1の患者:1日当たり320円の自己負担。③療養病床に入院する65歳以上の医療区分2または3の患者:自己負担なし。④介護保険施設に入所する一般所得者:全額自己負担。⑤介護保険施設に入所する低所得者:居住費は自己負担だが、補足給付で補填(生活保護を受けていない市町村民税非課税世帯では370円)。

 

 このため、12日の医療保険部会では、このような居住費自己負担の差異解消を巡り議論が行われ、②の「療養病床に入院する65歳以上の医療区分1の患者の居住費負担320円」を⑤の「介護保険施設における居住費負担370円」に合わせるかどうかで、議論が分かれた。健保連や経済界をはじめ委員の多くから、「介護保険との整合性を図るべき」との意見が出された。その一方で、②の「療養病床の居住費負担」を③の「医療区分2、3の患者」に求めるべきかについては、健保連や経済界の委員から「医療区分は医療の必要性を示すものと言えるが、『医療の必要性』と『光熱水費』の負担とは関係がない」とし、医療区分2、3の患者にも居住費負担を求めるべきと主張。これに対して、日医や労働団体の代表委員は反対を表明した。

 

 さらに、65歳未満の療養病床入院患者にも居住費負担を求めるかの議論について、健保組合などの保険者の委員は「65歳未満の長期入院患者もさまざまであり、単純に年齢で限定すべきではない。年齢区分を廃止して、療養病床の入院患者には居住費負担を求めるべきだ」と、費用負担を求めた。これに対して、日医や労働団体の代表委員は、「65歳以上の患者では、年金で居住費負担がカバーされる」という制度の趣旨に則って、65歳以上の限定を維持する必要があると反対を表明した。

 

関係者のコメント

 

 <松原日医副会長:入院患者から居住費を取るのは「筋の悪い話」>

 医療保険部会の論議で松原謙二日本医師会副会長は、「療養病床で一部の患者に居住費負担を求めているのは財政的な理由にすぎず、入院患者から居住費を取るのは、もともと筋の悪い話」と指摘。区分2や3に拡大する考えについて、「入院に対する理解が足りない」と、強く反対した。

 

<松原日医副会長:医療保険は7割給付、これ以上の負担は求めないのが筋>

 一方、健保連副会長の白川修二氏は、「一般病床でも、一定期間の長期入院、例えば90日を超える方には居住費を負担してもらうという区切り方はどうか」と提案。精神病床なども平均在院日数が長いため負担を求めるべきとした。

 

<武久日慢協会長:2018年度以降の療養病床の議論行方を踏まえる必要>

 療養病床を抱える医療団体の日本慢性期医療協会の武久洋三会長は、介護療養病床が2018年度末で設置期限を迎えることから、社保審の「療養病床の在り方等に関する特別部会」の論議もあり、「今の段階で議論すべきではない。2018年度以降の療養病床の形が見えてから、もう一度検討すべきだ」と慎重な審議を求めた。

 

<高齢の入院患者:病院の食事の時間が楽しみだったのに…>

 既に昨年10月から介護施設の食費・居住費が全額利用者負担 になり、負担に耐えきれず特養を退所した友人がいる。新聞でも負担増が原因で施設を退所した人が全国で少なくとも千人以上になると伝えている。病院も同じことになるのか心配だ。長く入院生活を送っているが、食事の時間が楽しみだったのに…。

 

<食事療法に熱心な民間病院長:患者負担と病院経営を考えると、食事はじめ療養環境を見直さなければ…>

 200床以下の小さな民間病院だが、当院では「食事は医療の一環」という理念の下、常勤の管理栄養士を雇い、献立も考え、患者さんの食事療法に力を入れている。患者さんの負担増と病院経営を考えると、食事の質を落としたり、栄養士に辞めてもらうなど、食事療法をはじめとする療養環境を見直さなければならないか心配だ。

 

事務局のひとりごと

 

 「シン・ゴジラ」はこの夏ヒットした映画である(現在もロングラン上映中)。筆者が自分で見ようとした映画の時間に映画館に行ってみたら、あろうことか自らの勘違いでその映画は開始後45分も経っていた。発券もしてもらえなかった。仕方なく今からみられそうなタイトルに切り替えてみようとする。見ようとは思っていなかったのだが、「シン・ゴジラ」が「時間帯だけ」その日の筆者のニーズにマッチした。

 昔懐かしい平べったい感じのゴジラのテーマがBGMで響き渡る。謎の生命体に容赦なく破壊されていく人々の日常、建造物や街並みを見るたび心の中で悲鳴が上がる。見ていくうちにこの映画は災害映画なのかと思ってしまうほどリアリティにあふれた設定だった。だが最終的には、筆者はこの映画をSF特撮映画としてではなく、「官僚映画」として捉えた

 「官僚たちの夏」など、日本が将来大国と渡り合っていくために、熱血硬派な官僚たちが主役となった物語はあったが、「シン・ゴジラ」はそれとは対照的に、何度も何度も閣僚で会議が行われ、その内容は実にコミカルだ(「踊る大捜査線」のような感じ?:筆者感)。そんな形で日本の政治を風刺しつつも、しかし目の前の、常識的にはあり得ないとさえ思えるほどの危機に真摯に立ち向かおうとする大臣や官僚たち、流暢なバイリンガルの日系アメリカ大統領特使の女性(※1)を通じた、日本と「かの国」米国との友好的(主従的?)な関係性、「ヤシオリ作戦(※2)」を陰ながら支える、日本の企業群の科学力や調達網など、日本人としてはとても共感できる映画ではなかっただろうか。先日新聞記事で目にしたが、安倍総理も官房副長官からこの映画を薦められたそうだ。勘違いから始まって見ることになった映画だが、終盤ではジーンときて涙が出てしまった記憶がある(※3)。

 

 果たして現実の官僚もやはり、この国を憂いているのだろう。膨れ上がる社会保障給付費の伸びを抑えるために、あの手この手を打ってくる。というより、どのみち利用者(患者)の自己負担を増やし、保険財源の流出を抑制しようとするのが基本思想だ。大局観としてはそう思わざるを得ない。もう一方のテーマでも似たようなひとりごとをつぶやいたが、なかなか一筋縄に行くというものでもないのが、「政治」や「選挙」と密接な関わりがあるからなのだろう。

 一方で待てよ、とも思う。これまでの政権の中で最も安定し、もはや「一強」とさえ言っても過言ではない現在の自公体制で決めることができなければ、今後いったいどの政権が改革を成し遂げることができるのだろうか。つまり改革を断行したい官僚は今を千載一遇のチャンスと捉えているのではないか?

 

 社会保障という「巨大予算生物」を相手に、日本の政治家は、官僚は、そして国民はどう立ち向かっていくべきなのだろうか。白熱の光が発せられる前には何とかしていたいものだ。

 

 「この国はまだやれる…」、壊滅的な被害を被った日本の中心地で、ゴジラの活動を停止させることに成功した主人公がスクリーンの中で残した言葉は、とても印象的であった。フィクションの中のことだけでなく、現実でも「まだやれる力」が発揮されることを願いたい。

 

 締め括りに、患者給食提供事業者に、今回の問題が業界に与える影響についてコメントを頂戴したので紹介したい。

________________________________________

 自己負担の引き上げに関しては、2016年4月より、入院時食事療養費の引き上げが行われましたが、本件が実現すれば更なる患者負担増となり、食事サービスのようなアメニティ部分に対する要求が益々高まるものと予想しています。

 事業者としては、求められるニーズを想定し、品質の改善やロスなく提供するための規格変更はじめ、仕入食材の見直しや、業務の効率化・省力化を推進しています。常に安定したサービスレベルを維持できるよう取り組んでいます。

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 給付であろうが、自己負担増であろうが、利用者の大きな楽しみである食事について一食一食を提供する姿勢は、常に真摯に変わることなく、美味しさの追求を行っています。制度変更なんか関係ありません!事業者としての矜持が感じられるメッセージであった。


<ワタキューメディカルニュース事務局>

 

(※1)…演じるは石原さとみ。あれほど流暢な英語を喋れるとは意外。恐れ入った。英会話教室のイメージキャラクターだけのことはある。ゴジラ災害への対応に際し、世界中から届く支援の声に「この国って世界中から好かれてるわねぇ」という日本びいき(?)のセリフがとても印象的であった。

 

(※2)…総理大臣はじめ、内閣の殆どがゴジラによって亡くなってしまった後の臨時政府により、ゴジラを活動停止に追い込むために立案された計画名。

 

(※3)…年齢からくるのだろうか。年を追うごとに涙もろくなってしまった。

<WMN事務局>

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