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554号 「残薬 有り」と答えた患者は9割 重複投薬・残薬が、外来医療見直しの焦点に

2015年05月15日

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薬局の調査で残薬は9割、医薬品が余った患者は5割に

外来医療のあり方の議論を始めた4月8日の中央社会保険医療協議会総会(中医協)で、重複投薬・残薬が今後の課題としてクローズアップしてきた。中医協は2016年度診療報酬改定に向けて、外来医療の現状や今後の課題について議論を開始。今後の課題として厚生労働省から、(1)外来の機能分化・連携を推進する方策、(2)重複投薬や残薬を減らす方策、(3)主治医機能の強化を含め外来診療の質の向上を図る方策-が提起された。

 このうち、飲み忘れや重複投与、残薬が多量に散見される実態について問題提起。厚労省が日本薬剤師会に委託した調査では、「残薬のある患者がいた」と回答した薬局が約9割医薬品が余った経験があると回答した患者が約5割もいることが明らかになった(図1 残薬の経験の有無)。また、年間の重複投薬が推定約117万件にのぼった。



 さらに議論では、重複受診も問題視された。従来言われてきた高齢者のほかに、乳幼児でも多いことが指摘された。重複受診の理由としては、「専門的治療、検査、医師の紹介」が多く、他の医師の意見を聞くためという声も一部あった。重複受診が見られる疾患は、乳幼児では呼吸器疾患、高齢者では生活習慣病や整形外科疾患が多かった。

1カ月のレセプトで複数の医療機関に同一の医薬品を処方された「重複投薬」の頻度は、高齢者よりも小児で比較的多く、4歳未満で約2%、10歳以上からは0.5%以下でほぼ横ばいのままだった。乳幼児では同様に呼吸器疾患に対する薬剤が多いのに対し、高齢者では鎮痛、消炎、催眠、抗不安薬などが多かった。

■薬局の残薬確認で年間29億円の医療費削減効果

 同じ厚労省の委託調査では、「平成25年度全国薬局疑義照会調査」では、応需処方せん18万3532件のうち薬学的疑義照会を行った処方せんは4141件。そのうち「残薬に伴う日数・投与回数の調整」件数は420(0.23%)。1件当たり1,595.3円で全国の年間処方せん枚数に換算すると、実に約29億円に相当すると、厚労省では説明。つまり、薬局による残薬確認によって年間29億円の医療費削減効果が見込まれるというわけだ。

 調査結果に対して、支払側の白川健保連副会長は、「あまりの多さに愕然とした。医薬分業で患者負担が増えているが、負担増に見合う薬剤師の業務の向上も求められる」と指摘。一方、日本医師会副会長の中川俊男氏は「残薬の減少には長期処方の制限の検討が必要。2、3カ月という長期処方を許した経緯の検証など、政策的な反省が必要だ」と述べ、長期処方について抜本的な見直しを求めた。

医師関連筋のコメント 
 かかりつけ医が残薬を調整しながら薬局と連携して対処中医協の議論の中で、中川日本医師会副会長は、「長期処方のあり方を大胆に見直す時期に来ているのではないか」と、長期処方の見直しを次期診療報酬改定の課題として提言。さらに、かかりつけ医が残薬を調整しながら薬局と連携して対処する必要性を強調した。

子を持つある母親のコメント
<3人:小5、5才、2才>
 上の子はよく風邪をひいたので、受診・調剤後、子どもの症状が治まった段階で残薬は投薬せず、保管していました。次に似たような症状になった時に使えると便利なので。
 下の子は丈夫なので、あまり風邪をひくこともなく、たまに受診して処方されても、上の子同様に途中で飲ませませんでした。余った薬はあまり期間が空いたら捨てていました(分包された粉薬で、子どもの体重が変わると、分量も変わってくるだろうと思って)。捨てたとしても、自治体の小児医療受給者証(公費)が使えていたので、個人としては全くお金もかかっていませんし、(残薬を)捨てることに対して比較的抵抗はありませんでした。


<3人:小1、4才、4才>
 冬の季節がくると、一人が幼稚園で(何かの)病気をうつされてくると、必ず家じゅうで風邪が蔓延するので、一人が受診したらできるだけたくさん、処方してもらっていました。まだ風邪をひいていない他の子もすぐに同じ症状になるので、診察券は3人分出し、同じ症状なので3人分処方してもらいました。その時点で一番症状の重い子どもだけ受診させ、あとの二人は医療機関に連れて行きません。別の病気をもらってしまいかねず、よけいに大変なので。残薬はもちろん取っています。次に似たような症状になった時に使えると便利なので。医療費の無駄遣いと思わないですかって?いっぺん3人の子育て手伝ってみたら?


<1人:小6>
 まだ子どもが小さかった頃、子どもの症状が「こうなりそうだな」と感じたとき、事前にかかりつけの診療所で先生に相談しながら処方してもらっていた。ある程度薬をためておかないといざという時不安。時には診療所をはしごしてでも薬のため置きをしたこともあった。ため置きしていた薬は消費期限を見ながら必要に応じて処分(廃棄)した。(自身は仕事もしている)子を持つ母親の心情って、そんなものじゃないでしょうか?ちなみに、子どもは保育園、小学校と皆勤継続中です。

総合診療医のコメント
 通常、家庭で風邪など同じような症状が出た場合、前の残薬を与えることは、特に問題ありません。
 余り日数がたったものは捨てているということでしたら、夜間の発症などで、早期の投薬ということを考えると、構わないと思います。ただし、抗生物質はやめておくべきです。
 また、風邪薬と一口にいっても、時に別の疾患に効くものであったり、他の薬を服用している場合には、飲み合わせの問題もありえます。
 子供の症状や様子を注意深く見守ってあげてください。
 風邪の流行期など、確かに小児を病院へつれていくのはためらわれます。かかりつけ医がそのようにして一度にたくさん出されたなら、構わないでしょう。ただ、風邪と思ったら、違う病気だったという場合が問題です。様子を見て、改善が遅いようでしたら、早めに、一度、病児のみを連れて診察を受けていただくことが望まれます。


事務局のひとりごと
 限られた財源である医療費を、できるだけ効率的に再配分しようとする医療保険制度の考え方は間違っていない。ただ、すでに医療費が40兆円に近づこうとしている現段階では、この禄を食む人間の裾野の広さと多さゆえに一筋縄ではいかない問題である。
 「残薬」とされているはずのそれぞれの薬代も、それぞれの家にあって捨てられてしまう薬も、メーカーにとってはすべて毎年出荷している売上実績の一つである。いわば「飯のタネ」だ。そして企業において昨年実績を上回る業績を求めるのは、至極当然のことである。
 子を持つ母親、毎日何かの薬のお世話になっている慢性病患者、高齢者・・・。これら利用者のおかげで製薬業界は成り立っているのだ(もしかすると処方権のある医師のおかげなのかもしれないが・・・)。
 話し合いやスイッチOTCなどで伸びの抑制をしていくことが本来は丁寧な方法なのだろうが、いったい何年かかることか?
 医療のエビデンスを覆すようで申し訳ないが、「○○病にはこの処方で○○日の処方が妥当」だという、これまで築き上げられた歴史を強制的に五掛、六掛けにしていくことでもしない限り、膨れ上がる薬価を下げることはできないのではないか?
いつ罹るかわからない我が子の病気と日々の生活の中で、時間に追われながらもなんとか子育てしてくれている父母の実態・・・。ルールだからと切って捨ててしまえば、少子化問題の解決もままならぬのではないか。
 財源論だけで医療を語るにはあまりにも大きな問題であるなあと、今日も子育ての件で家内とあまりにも小さな理由から始まった言い争いをしたのを思い出して、ため息をつくのだった。

<ワタキューメディカルニュース事務局>


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