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549号 平成27年度介護報酬9年ぶりのマイナス改定 地域医療介護総合確保基金の活用を

2015年03月15日

読者の皆さん、いつもワタキューメディカルニュースをご覧いただき、ありがとうございます。

約1ヶ月間にわたり、ワタキューメディカルニュースは充電期間をいただきました。かねてよりホームページ上でご案内しておりましたが、今回よりワタキューメディカルニュースはこれまでの現代けんこう出版社の編集協力から、「ヘルスケアNOW」の編集協力へと形を変え、強力な医療ジャーナリスト陣の力をお借りして装いも新たに再スタートをする運びとなりました。

これまでの「PDFサイズ出力でA4 裏表2枚」というボリュームの制約からも離れ、行政の舞台裏、医療業界情報にメスを入れ、「今のその先を知りたい」方々に向け、情報発信してまいる所存です。

更新は毎月15日(土日祝の場合は繰り下げ)を予定しています。

その分、文章量には制限を設けず、読み応えのある内容を目指してまいります。

これからも新生ワタキューメディカルニュースをご愛読いただきますようお願い申し上げます。

<ワタキューメディカルニュース事務局>

 

 

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◇介護報酬改定から読みとれるメッセージ

・9年ぶりのマイナス改定。介護職員の処遇改善は拡充

・介護報酬マイナス分を「地域医療介護総合確保基金」活用し補う

・職員処遇改善への各施設・事業所の工夫・努力が

 

マイナス2.27%の介護報酬改定、人材確保と介護職員の処遇改善が特徴

 塩崎恭久厚生労働大臣は2月6日、厚生労働省社会保障審議会(社保審)に平成27年度介護報酬改定について諮問。2006(平成18)年度のマイナス0.5%改定以来、9年ぶりのマイナス改定となった。社保審介護給付費分科会は同日の会合で、厚労省が示した改定案を了承し、社保審では近く厚生労働大臣に答申を行い、介護報酬改定の単位表が明らかにされる。

 当初、介護施設の経営実態調査の結果を根拠に財務省がマイナス6%の改定率を提案するなど、厳しい改定内容が予測されていた。結局、今年1月11日、2015(平成27)年度予算編成に関する塩崎恭久厚生労働相と麻生太郎財務相の大臣折衝で、介護報酬の改定率をマイナス2.27%にすることで合意。マイナス2.27%の内訳は、在宅がマイナス1.42%、施設がマイナス0.85%。改定の内容別では、介護職員の処遇改善がプラス1.65%、良好なサービスに対する加算がプラス0.56%、その他(介護施設の収支状況などを反映)がマイナス4.48%(表 平成27年度介護報酬改定の概要)。ほぼすべての介護サービスの基本報酬が引き下げられ、中でも小規模の通所介護では約1割の単位が削減。また、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)や要支援者を対象とした特定施設入居者生活介護についても思い切った基本報酬の削減が行われる。

 改定財源として、介護職員の給与を最大で月額1万2000円アップ(新設)させるため、介護職員処遇改善加算の拡充としてプラス1.65%(公費ベースで約780億円)を消費税財源から確保。中重度の要介護者や、認知症高齢者へのサービスを提供する事業所への加算措置などの拡充としてプラス0.56%(同約270億円)も同様に確保。一方、介護施設の収支状況などを反映した4.48%の引き下げを行う。

 住み慣れた地域で暮らし続けられる「地域包括ケアシステム」の構築に向けた取組を進めるために実施される今改定の特徴は大きく次の3点

 第1は中重度の要介護者や認知症高齢者等への対応のさらなる強化。今後、増大することが予測される医療ニーズを併せ持つ中重度の要介護者や認知症高齢者への対応として、引き続き、在宅生活を支援するためのサービスの充実を図る。利用者が在宅での生活を無理なく継続できるよう積極的な連携体制整備を評価する総合マネジメント体制加算1000単位/月を新設(定期巡回・随時対応型訪問介護看護、小規模多機能型居宅介護、複合型サービス共通)。また、訪問を担当する従事者を一定程度配置し、1月当たり述べ訪問回数が一定以上の事業所について訪問体制強化加算1000単位/月を新設(小規模多機能型居宅介護)。さらに、24時間365日の在宅生活を支援する定期巡回・随時対応型訪問介護看護を始めとした包括報酬サービスのさらなる機能を強化。中重度の要介護者の医療ニーズに重点的な対応をしている事業所について、訪問看護体制強化加算2500単位/月を新設(複合型サービス)。通所介護では、認知症高齢者の日常生活自立度Ⅲ以上や要介護3以上の高齢者を積極的に受け入れる体制を整えている事業所を評価。認知症加算60単位/日、中重度者ケア体制加算45単位/日を新設(通所介護)。夜間の利用者の安全確保を推進する観点から現在は評価の対象となっていない宿直職員による夜間の加配を新たに評価した夜間支援体制加算を新設した(1ユニット50単位/日、2ユニット以上25単位/日)。

 第2は、改定率にもみられるように、介護人材確保対策の推進。当初、介護職員処遇改善加算による1人当たり給与月額1万円アップの目標が出されていたが、現行の職員1人当たり月額1万5千円相当の仕組みは維持しつつ、さらになる職員の資質向上の取組、雇用管理や労働環境の改善の取組を進める事業所を対象にさらなる上乗せ評価加算(月額1万2千円相当)を新設。また、サービス提供体制強化加算として、介護福祉士の配置割合の高い評価を新設し(介護福祉士6割以上18単位)、介護福祉士の配置の一層の促進を図る。

 人材確保と介護職員の処遇改善に重点を置いた改定となった背景には、次の点がある。 (1)2014年7月の介護サービス業の有効求人倍率は2.1倍と全産業の0.95の2倍以上と依然として厳しい環境にある。(2)介護職の平均給与は23.8万円で、在宅訪問介護員は21.8万円。全産業平均の32.4万円より月額約10万円安い。

 第3は、サービス評価の適正化と効率的なサービス提供体制の構築。集合住宅に居住する利用者へのサービス提供に係る評価の見直しとして、①訪問系サービス(訪問介護、訪問入浴介護、訪問看護、訪問リハビリテーション、夜間対応型訪問介護)について、事業所と同一敷地内または隣接する敷地内の建物に居住する利用者に対する報酬を10%減算、②同様の居住者の定期巡回・随時対応型訪問介護看護についても新たに1月当たり600単位減算、③一方で、事業所と同一の建物の居住者に対する小規模多機能型居室介護、複合型サービス(看護小規模多機能型居宅介護)の基本報酬を新たに創設する。

 利益率の高さが指摘されていた特別養護老人ホームは、基本報酬が6%程度引き下げられたが、重度の要介護者を多く受け入れたり、看取りの体制を強化すれば加算され(死亡日以前4日以上30日以下の看取り介護加算が80単位/日から144単位/日に引き上げ)、大幅減収は免れる。

 これら介護報酬改定の結果、厚労省が試算したモデルケースの利用者負担は(1カ月当たり1割自己負担)、①訪問介護が3820円から4004円、②訪問看護が6878円から7038円、③通所介護が1万170円から1万5円、④特別養護老人ホームが3万300円から2万9670円(相部屋)・3万1530円から3万720円(個室)、⑤介護老人保健施設が3万3343円から3万3275円、⑥24時間の定期巡回・随時対応が1万9136円から1万9992円、⑦看護小規模多機能型(現行「複合型」)の在宅介護が2万6857円から2万7883円-にそれぞれ改定される。

 ところで今回のマイナス改定の背景に、2014(平成26)年6月に行われた第3回目の介護保険法改正がある。

 この改正では2015年度から、(1)サービス利用者負担の増加(①サービス利用者の20%は2割負担に②特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護療養型医療施設の介護保険3施設の居住費・食事代補足給付に資産要件を勘案)、(2)サービス利用者の減少(①要支援のサービス利用者の85%は地域に移行②認定なしのチェックリストで認定抑制③特養ホーム入居は要介護3以上に引き上げ)、(3)保険者機能の強化と市町村への移行(①ケアマネジャーの市町村指定への変更②住宅改修届出制へ移行③小規模デイサービス・療養通所介護は地域密着型へ移行③お泊まりデイサービスの届出制)-などが段階的に施行される。これらの改正は、介護給付を効率化し、所得に応じた自己負担増へ転換し、保険給付の重度者への移行を目指し、居宅からターミナルまで看取ることを具体化したもので、法改正の一部が今回の介護報酬改定で具現化されたわけだ。

 

平成27年度予算案で地域医療介護総合確保基金の介護分724億円

 政府の2015年度予算案では、昨年6月に成立した「医療介護総合確保推進法」に基づき、先に交付が始まった「地域医療介護総合確保基金」の医療分に続き、介護分724億円が確保された(図 地域医療介護総合確保基金)。これにより、団塊の世代が75歳以上となり医療・介護等の需要がピークを迎える2025年を目途に、医療・介護・予防・住まい・生活支援が包括的に確保される「地域包括ケアシステム」の構築に向けた取り組みが本格的にスタートする。

 具体的には、この基金を活用して、①介護施設等の設備に関する事業(地域密着型特別養護老人ホーム等の地域密着型サービスの施設整備に必要な経費や、広域型を含む介護施設の開設準備等に必要な経費、特養多床室のプライバシー保護のための改修など介護サービスの改善を図るための改修等に必要な経費の助成を行う)、②介護従事者の確保に関する事業(多様な人材の参入促進、資質の向上、労働環境・処遇の改善の観点から、介護従事者の確保対策を推進)を行う。

 2015年度介護報酬改定は、介護職員の処遇改善、物価の動向、介護事業者の経営状況、地域包括ケアの推進等を踏まえ、2.27%のマイナス改定となったが、結局、2015年度予算案で確保された地域医療介護総合確保基金の介護分724億円によって補う形となった。

 厚労省老健局は1月16日付けで2015年度から実施する地域医療介護総合確保基金の介護分について事業量や事業内容を把握するための調査を各都道府県に依頼。提出された調査票を基に3月初旬に都道府県からヒアリングを行い、2015年度予算成立後に都道府県に内示し、7月頃に交付を行う予定。この基金を介護現場でどう活用するかが焦点となる。

 マイナス2.27%という厳しい内容となった介護報酬改定。改定の特徴である「介護人材確保対策の推進」「サービス評価の適正化と効率的なサービス提供体制の構築」に対応するには、地域医療介護総合確保基金の活用とともに、昇格昇給のルール化など賃金体系の整備、教育訓練の制度化・各種研修・キャリア制度など職員の資質向上への取組、勤務時間・休暇制度・福利厚生など、各施設・事業所の工夫・努力が求められる。

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アベノミクスという言葉で定着したかに見える今の好景気。「やりがい」「人と人とのつながり」などがキーワードの医療・介護事業のような労働集約型産業における人材確保は、外食系などのサービス産業も含め、もはや社会問題化していると言っても過言ではない。介護事業については制度や点数で守られ、さらに組織的に国に陳情できる体制もある。それ故に点数で束縛された経営にならざるを得ない。痛し痒しである。それぞれの事業者の創意工夫は、制度で縛られていない他のサービス産業や、他業種とどこまで渡り合えるのか。はたまたその前に現場から人が去っていってしまうのか、国の判断も痛し痒しということか。 (関係識者のコメント)

 

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