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No.749 財政審が医療費増加要因に過剰病床数を指摘、法制的対応ができる体制求める 医師偏在歯止めに、診療所の新規開業規制にも言及

2023年06月15日

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◇「財政審が医療費増加要因に過剰病床数を指摘、法制的対応ができる体制求める 医師偏在歯止めに、診療所の新規開業規制にも言及から読みとれるもの

・増大する医療費は過剰な病床数と指摘、地域医療構想による病床規制求める

・財政審分科会が知事の病床規制権限のほか一歩踏み込んだ対応求める

・医師偏在解消で診療科・地域別に医師定員を提案

 

■地域医療構想で、知事の病床規制権限のほか一歩踏み込んだ法制的対応求める

 財務省は2023年5月11日、国の予算等の具体的な方針を財務大臣に提言する諮問機関・財政制度等審議会・財政制度分科会を開き、増大する医療費などを賄うための財源の確保などについて議論した。

 同省は少子・高齢化以外で医療費を増加させている要因として過剰な病床数をあげ、地域医療構想を推進するため、「地域医療構想の実現の必要性、進捗の遅さを踏まえれば、2025年以降の確実な目標実現を見据えて、例えば、各医療機関において地域医療構想と整合的な対応を行うよう求めるなど、もう一歩踏み込んだ法制的対応が必要ではないか」と、現在、都道府県知事が有する病床規制の権限のほかに、さらなる病床再編を促進させるための各医療機関に対する法制的対応ができる体制の構築を求めた

 都道府県知事の権限に関しては、これまで医療法を改正、既に過剰となっている医療機能へ転換しようとする民間病院への転換中止や稼働していない病床の削減の要請・勧告ができる権限のほか、協議が整わない場合に地域で不足している医療機能を担うよう要請・勧告できる権限も知事に与えてきた。勧告などに従わない医療機関に対しては、制裁として医療機関名の公表や地域医療支援病院・特定機能病院の承認の取り消し等ができる。

 しかし、今回財務省が示した資料よると、2022年9月時点で稼働していない病床の削減要請や勧告等を行った実績はゼロ、不足している医療機能を担うよう要請や勧告をした実績も4件にとどまり、与えられた権限が有名無実化していると指摘した(図1 地域医療構想の実現に向けたさらなる制度整備の必要性:5月11日財政制度等審議会財務省資料)。

 

都市・地方の医師偏在解消で、診療科別・地域別に医師定員を設ける仕組みを提案

 この日の財政制度分科会では、都市・地方の医師の偏在についても議論。財務省は、医師偏在指数が全国1位の東京都区中央部(港区等)789.8に対し下位41位の東京都島しょ部(大島町等)131.6のデータを示し、現状のままでは、大都市部で医師や診療所が過剰となる一方、地方では過少となる傾向が続くことを指摘した(図2 都市・地方の医師の偏在について:5月11日財政制度等審議会財務省資料)。

 

 国が2020年度に作成した「外来医療計画」に基づくガイドラインにおいては、外来医師担当多数区域での開業を希望する医師に対し、不足する医療機能をカバーするよう都道府県が要請することになっているが、財務省によると、「そもそも要請を行っておらず、また、要請を行っている場合でも、新規開業者に担うことを求める機能が不明瞭な場合もある。厚労省の調査によれば要請に従っている新規開業希望者は7割程度」との現状を明らかにしている。

 

 その上で、必要な医療人材を集中・確保していくため、日本と同様に公的医療保険制度をとっているドイツやフランスのように診療科別、地域別に医師の定員を設ける仕組みなどを参考にして、診療所の新規開設への対応を求めた(図3 主要国における開業規制について:5月11日財政制度等審議会財務省資料)。

 

 また、経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)に盛り込まれる「新経済・財政再生計画」(改革工程表)を着実に実行するため、内閣府の経済財政諮問会議の下に専門調査会として設置されている経済・財政一体改革推進委員会は5月10日オンラインで会議を開き、各ワーキンググループ(WG)における議論について報告を受けた。

 このうち、地域医療構想の実現、介護分野における給付と負担の見直し、 医薬品の在り方、医療費の地域差縮減に向けた医療費適正化の推進、かかりつけ医機能、医療DXの工程化等について論議してきた社会保障WGでは、地域医療構想を巡る議論についてこれまで、相当な年数をかけて地域医療構想の実現と乖離がある状況であり、都道府県の権限とそれに見合った責任を制度的に強化・整備して取り組むことが必要である」と指摘した上で、①診療報酬についても、地域医療構想との連動を目指すべき。②定量的な基準で病床機能報告を実施するよう見直すべき。③地域医療構想調整会議での検討に資するようなデータの整備についても検討すべき-と強調した。

 

 財政制度等審議会はこれまでの論議をもとに2024年度予算編成を見据えた「春の建議」をまとめ、財務大臣に提出する。財政制度等審議会で財務省が指摘した病床規制や診療所新規開設の規制強化の文言が、6月中に閣議決定される「経済財政運営と改革の基本方針2023(骨太の方針2023)」や改革工程表2023にどのように反映されるのか注目される。

 

 


 

 「異次元」を謳った少子化対策の財源に対する議論も、まだ決まったわけではないが、ふたを開けてみれば結局このようなものか。

 

 異次元空間から宝物でも引っ張り出してきて、それを財源にして未来への投資とする

 

 それくらいの思い切りがあっても良さそうなものだが。だからといって決してそんな空想ごとが実現するとは思っていないが、現時点では捻出して3兆円。消費税増税1%分といわれる数字と同様である。

 

 消費税が財源という議論にはなっていないが、社会保険料に焦点が絞られている中では、もともと消費増税分(8%→10%時)は、社会保障に振り向けるという名目であったので、仮にこの「異次元」政策で消費税率が上がらなかったとしても、結局は消費税も財源に振り向けられていることになるのではないか?

 加えて企業負担による防衛費1%→2%に向けた負担増。とかくこの世はお金のかかることばかりらしい。

 

 予想はしていたが、通常とは全く異なる考え方である「異次元」はそこまで異次元でもないようだ。ある意味「現世」である。

現実味を帯びた議論になればなるほど、財務省の壁が立ち塞がる。

 

 今回のテーマ病床数過剰が医療費増加要因だと指摘する財政審(財政制度等審議会)についてである。

 

 まずはこんなコメントを紹介したい。

 

〇外来医療報告制度データの有効活用を

 改正医療法を巡る2021年4月2日の衆議院厚生労働委員会で、外来医療の報告制度について枡屋敬悟議員(当時)は、「報告制度で集まったデータを活用して、地域の医療資源の有効活用が推進されて、有床診療所と病院の役割分担、すみ分け、そして何より地域の医療連携が推進されるような方策を、是非このデータを活用して、我々は協力するから、是非その辺を考えていただきたい。診療所はなかなか大変であり、スタッフも、この報告制度が半日もかかるような作業にならないようにできるだけ簡便なものにしていただきたい。そして有効活用してもらいたいという御要請を、地元の医師会の皆さん方から、有床診の皆さんから御要請をいただいている」などと要望した。

 これに対して、当時の田村憲久厚生労働大臣は、「病床機能報告、これは今も、もうお出しをいただくようになりまして、出していただいておりますが、外来の方の実施状況がどういう状況か、こういうデータを、ナショナルデータベース、NDBからしっかりとお示しをさせていただきながら、なるべく簡易な形で報告いただく。今言われました、いろんな事務的な手続等々で御負担があると。元々、人数的に少ない中で、本当にフル稼働して御活躍をいただいておる、そういう医療機関でございますので、なるべく簡素で分かりやすい形で報告を出していただけるように、そして、それにのっとってしっかりとした役割を担っていただけるように、われわれとしても丁寧にお示しをさせていただいて、努力してまいりたい」と答弁した。


 外来・病床の機能報告に関する遣り取りだ。こういった報告制度に基づき、財政審から言わせると、我が国の、やや歪(いびつ)と思われる医療提供体制が「見える化」され、今日の議論に至っている。

 

 こんなコメントを紹介したい。

 

〇医師の自由度はもう少し狭めた形で国の政策に協力する職業という形の業にするべき

 医師の報酬は税金と保険料。医療機関や医師の自由度はもう少し狭めた形で国の政策に協力する職業という形の業にするべきではないか。

 

〇開業を含めてもっと強力に配置を調整。医療体制が合理的で適切な形に強制力を

 法律で、病院の義務づけを増やしたり、開業を含めてもっと強力に配置を調整できるようにしたりしないと、今後更に厳しい状況になる医療資源が効率的には配分されないのではないか。若年人口がこれだけ減る中で、医療体制が合理的で適切な形に強制力を持ってできないと、日本全体の人材資源にも大きな悪い影響が出るのではないか。

 

〇医療計画の責任主体である都道府県知事にもっとリーダーシップを発揮

 地域医療構想について、医療計画の責任主体である都道府県知事にもっとリーダーシップを発揮していただき、全国一律でなく都道府県独自でもできることは進めてもらえるような環境整備が必要。

 

〇かかりつけ医機能を持つ医療者を公的に認定。しかるべき報酬の枠組みを

 かかりつけ医機能を持つ医療者ないしは医療グループを公的に認定して、そこに責任を持ってもらう。代わりに、しかるべき報酬の枠組みをつくるといった追加的な措置を検討いただきたい。


 財政審のメンバーからのコメントは、かなり威勢の良い意見だ。毎回このような議論が出た時に、このような意見どおりにものごとが動けばあっという間に社会保障費が削減されるのかもしれない。

 ただしそれは財政審メンバーの仰いようが全て正しいと仮定して、の話である。

 良質で均一な医療を受ける権利が(おそらくは)狭められた医療政策の中、これまでとは異なる生活が医療を受けたる人、提供する人、取り巻く社会に大きな影響を与えているかもしれず、仮に仰るとおりのことが実現したとしても、今度は別の問題もきっと噴出していることだろう

 

 今度はこんなコメントだ。

 

〇厚労省官僚:非常に自由度が高い日本の医療。将来需要とのミスマッチが生じ得るという側面とのバランスを取る難しさがある

 4月23日に行われた日本医学会総会2023の会頭特別企画8「2040年を見据えた地域医療構想~我が国の医療供給体制の課題と未来への提言」で、迫井正深元医政局長(内閣官房新型コロナウイルス等感染症対策推進室長・内閣審議官)は、日本の医療の特徴として医療提供側と患者側の双方にとって、非常に自由度が高いことをあげ、そのため、「創意工夫による医療の効率的・効果的な改善・普及が可能になる側面がある一方で、医療の将来需要とのミスマッチが生じ得るという側面とのバランスを取る難しさがあるほか、新型コロナウイルス感染症対応に見られたように有事でのガバナンスが利かない課題が生じる」と指摘した。


 「非常に自由度が高い」か。

   自由開業制

   フリーアクセス

 確かにどちらにも日本語にすると「自由」という意味が含まれている。

 そういえば一時的に政権交代がなされたが、長きにわたり政権与党の立ち地位置にいる政権与党の名称にも「自由」が冠されている。

  「自由」。

 いやあ、良い響きではないか。但し、自由には「責任も伴っている」という側面がある。

 言葉の響きばかりにとらわれて、「自由」ばかりを主張する我が子に、「責任」についてもよくよく考えてもらいたい今日この頃である。

 

 本文中の資料【図‐1】地域医療構想の実現に向けたさらなる制度整備の必要性 において、医療法で定められている知事の権限についての説明があったが、これによると、あくまで財政審で使用された財務省作成の資料なのだが、数字上、「知事は何の権限も発動していない」という結果となっている(と言いたい資料なのだろう)。

 

 今度はこんなコメントを紹介したい。

 

〇奈良県の地域医療構想は、国保の県営化、医療費適正化、医療提供体制を一体的に推進

 日本医学会総会2023の会頭特別企画8「2040年を見据えた地域医療構想~我が国の医療供給体制の課題と未来への提言」で、前奈良県知事の荒井正吾氏は、奈良県の医療の特徴は、可住地面積が全国最小で人口当たり医師数は全国平均に近いにもかかわらず、救急医療体制は遅れ、強い医師不足感があると指摘。このため、地域医療構想は、①高度急性期・重症急性期の「断らない病院」と軽症急性期・回復期・慢性期の「面倒見のいい病院」の機能強化、②医療従事者の確保と県内医療機関への人材供給、③医療、包括ケア、健康増進、福祉の一体的推進、④国保の県営化、医療費適正化、医療提供体制の一体的推進-を柱に取り組んできた。その結果、不足していた急性期病院を整備。南和地域の3つの公立病院を、急性期・回復期を担う1つの病院と慢性期を担う2つの病院に役割分担して新しい3つの病院に再編整備したことを報告した。

 

〇岩手県知事:公的急性期病院の一部に対する特定領域の診療実績に応じた「再編統合」を含めた役割の見直しに懸念

 医師不足に悩まされる青森、岩手、福島、新潟、長野、静岡の5県の知事を発起人とする「地域医療を担う医師の確保を目指す知事の会」が2022年1月発足。同会の会長で、厚労省が2019年2月に公表した三次医療圏別(47都道府県別)の医師偏在指標において、医師が最も少ない県とされた岩手県の達増拓也知事は、地域医療構想の実現や働き方改革の推進は、医師の確保が前提条件となるが、都道府県による自助努力では限界があると指摘。政府が進める「三位一体」の医療改革についても言及。へき地の医療機関の一部診療科では、県庁所在地にある病院の応援によって、週に数回の診療が可能になっている場合があることを例にあげ、潜在的な医療ニーズはあっても、医師不足によって十分なサービス供給ができていない状況があることを指摘した。自治体立や公的な急性期病院の一部に、特定領域の診療実績に応じて「再編統合」を含めた役割の見直しが求められていることに対して懸念を示した


 奈良県は、実現こそしていないが、診療報酬の1点単価(現在10円)を見直すという動きを全国に先駆けて世に問うた県だ(診療報酬の1点単価も知事の権限で変更可能)。

 人口減が叫ばれている日本ではあるが、とりわけ地方と、まだ人口が多い都会、東京等とでは置かれている状況も全く異なる。

 こういったコメントを読むにつけ、中規模都市群を何か所かに置いた上での、都道府県の再編成と、国民が住む場所すら(平和的に)統制していくことで、問題解決の糸口になるのでは?と思ってしまう。学校のクラス替えも、何年かに1度は強制的に起こるものだ。別れもあれば出会いもある。

 いやいや、我が国は「自由」を愛してやまない国でありました。暴論でした。

 

 地域医療構想についての各病院団体のコメントを紹介したい。

 

〇全日病会長:地域の実情を踏まえた地域医療構想の策定を>

 4月23日に行われた日本医学会総会2023の会頭特別企画8「2040年を見据えた地域医療構想~我が国の医療供給体制の課題と未来への提言」で、猪口雄二全日本病院協会長は、2026年以降の新たな地域医療構想策定に触れ、「2040年に向け都市部での高齢化と地方での過疎化が加速し、これが顕著になる。地域医療構想は二次医療圏を基本単位とするが、人口100万人を超える医療圏がある一方で、人口10万人未満の医療圏がある。それぞれ実情が異なるので、地域医療構想を一つの考え方で整理するには、無理がある。二次医療圏を見直すべきだが、過去の経緯があり、難しいと言われる。そうであれば、例えば、都市部は区分けし、過疎地は隣接した地域を合わせるなどして、構想区域を考えるべきだ」などと、地域の実情を踏まえた地域医療構想の策定を主張した。

 

〇全自病会長:厳しい自治体病院の経営、コロナ5類移行後も診療報酬の特例継続を要望

 全国自治体病院協議会が4月13日に開いた記者会見で小熊豊会長は、新型コロナウイルス感染症の5類感染症への移行後の対応について全国の自治体病院を対象に実施したアンケート調査の結果を発表し、2023年10月以降に向け、①従来の空床確保ではなく、実際に入院させた実績に対する支援を補助金または診療報酬で行う、②診療報酬上の特例措置について、2024年度診療報酬改定の方針が決まるまでは現状の措置継続をする-の2点を厚生労働大臣へ要望する方針を示した。2022年度の自治体病院(県立病院や市立病院など)の経営状況は非常に厳しく、回答した176病院の93.2%が2022年度は赤字になるとの見通しを示した。2021年度と比べ医業収支が「悪化する」と回答したのは65.3%。医業収支悪化の要因については、73.7%が新型コロナによる診療体制縮小等が「影響している」と答えた。前年度よりも「悪化する」ところが多いことから、政府等に「コロナ患者受け入れ実績の経済的評価」「診療報酬臨時特例の秋以降の継続」を求めていく考えを示した。


 筆者は5月8日以降、意識的にマスクを外すようにしている。コロナ禍中は、マスクを着けていたおかげ(?)で、かつてはたまに痛めていた喉すら傷めることのなかった約2年だったが、そういったこともあり、喉を傷めたりするのが怖いのだが、自分の体をいわゆる「雑菌」に強くならせるためには必要なことだと自分に言い聞かせている。

 人間には鼻の粘膜、鼻毛があり、そういった器官で菌などの外敵から身を護るための仕組みがある。その機能を弱め続けていくことの方が、ある意味恐ろしい。

 とはいえ、医療機関においては補助金ルールが変わったが、コロナウイルス感染症にかかってしまえば7日間の出勤停止など、インフルエンザの取り扱いと似てきた感はあるものの、やはりその入院患者への対応については人手もかかれば対策も必要だ。

 それ故の要望でもあるのだろう。

 

 今度は病院経営層のコメントだ。

 

〇人口減少・少子高齢化の20年先を見据えた病院経営

 急性期病床を削減、慢性期・回復期に転換した病院づくりを進める地方の民間病院長。当院がある県の人口推移は2015年約165万人から、2025年には約152万人、2040年には約131万人に減少すると予測され、人口減少・少子高齢化に伴い外来患者の減少、高齢患者が増加する。何よりも地方では生産年齢人口が減少する2040年以降、医療・介護の担い手となるスタッフの確保が深刻な問題となる。医療・介護従事者の確保が最大の課題となる20年先の2040年以降を見据えた病院づくりのため、スタッフの健康管理をはじめ勤務環境改善を進めるなど働き方改革を進めている。

 

〇民間病院も急性期と慢性期のコラボの時代に

 地域医療連携推進法人の設立によって病床機能の分化、病床削減が行われているが、その多くが公立・公的病院同士の法人設立で、民間病院同士の設立は数少ない。慢性期・回復期を主体の当院は、市の再開発事業を契機に、近隣の急性期民間病院と共に移転し、病院同士を渡り廊下でつないだ新病院を開院した。当初は民間病院同士の地域医療連携推進法人を設立することを考えたが、民間病院同士の緩い病病連携をとることにした。経営主体が全く異なる民間病院同士ということで最初は不安を抱いていたが、慢性期と急性期とはっきりと医療機能が分化することによって経営上の心配は払拭された。患者さんにとっても、急性期の治療が終わった後、渡り廊下がつながる当院で継続的に慢性期・回復期の治療が受けられる安心感があるようだ。民間病院も急性期と慢性期のコラボレーションを考えなければならない時代に入ってきた。

 


 「地域医療構想」という考え方の単位すら、全体論で考えると、もしかしたら大きな範囲なのかもしれない。勇気と責任が伴った個別具体的な対応が未来を切り拓く。そのためには地域の実情をよくよく「考え抜いて答えをださなければならない

 

 医師のコメントも紹介したい。

【勤務医】

〇開業医が増えて病院勤務医が疲弊するのはナンセンス

 財政審は病院の減少の一方で、診療所は増加傾向にあると指摘した。開業医が増えて病院勤務医が疲弊するのはナンセンス。特に、単科専門医は病院に集約すべき。

 

〇病医院間の連携に医師会がリーダーシップを

 病医院間の連携は、本来医師会のような組織が統制することが望ましいが、日本においては医師会が長年学術的に何の役割も果たしてこなかった。もっと地域医療、プライマリケアを中心に医療を率いていくべき。

 

【開業医】

〇「何でも屋」、何が専門か分からない開業医が増えた

 最近は「何でも屋」が増えすぎて、何が専門か分からない開業医が増えた。それに反して患者は専門性を求めている。患者の期待を裏切らない看板(標榜)を求めたい。自由標榜制は制限が必要ではないか。

 

〇地域医療に熱心に取り組むかかりつけ医には有利なインセンティブを

 一部の地域では総合病院の外来削減により診療所の新規開業が増えたといわれる。かかりつけ医は総合的に地域の患者を診るべきだと思う。在宅医療をはじめ地域医療に熱心に取り組むかかりつけ医には有利なインセンティブを与えるべきだと思う。

 

〇診療所の供給過多な地域はある。一方で救急医療に対応できる病院は足りない

 診療所の供給過多な地域はあると思う。その一方で救急医療に対応できる病院は足りない印象。


 たとえ医師といえども人間である。自分がしたいこと、目指したいことの自由を妨げられるべきではないのだろう。と一般論としては思う。

 

 今流行りのお笑い芸人の台詞ではないが、「時を戻そう」。

 

〇医師の自由度はもう少し狭めた形で国の政策に協力する職業という形の業にするべき

 医師の報酬は税金と保険料。医療機関や医師の自由度はもう少し狭めた形で国の政策に協力する職業という形の業にするべきではないか。

 

〇開業を含めてもっと強力に配置を調整。医療体制が合理的で適切な形に強制力を

 法律で、病院の義務づけを増やしたり、開業を含めてもっと強力に配置を調整できるようにしたりしないと、今後更に厳しい状況になる医療資源が効率的には配分されないのではないか。若年人口がこれだけ減る中で、医療体制が合理的で適切な形に強制力を持ってできないと、日本全体の人材資源にも大きな悪い影響が出るのではないか。

 

〇医療計画の責任主体である都道府県知事にもっとリーダーシップを発揮

 地域医療構想について、医療計画の責任主体である都道府県知事にもっとリーダーシップを発揮していただき、全国一律でなく都道府県独自でもできることは進めてもらえるような環境整備が必要。

 

〇かかりつけ医機能を持つ医療者を公的に認定。しかるべき報酬の枠組みを

 かかりつけ医機能を持つ医療者ないしは医療グループを公的に認定して、そこに責任を持ってもらう。代わりに、しかるべき報酬の枠組みをつくるといった追加的な措置を検討いただきたい。


 冒頭で紹介した財政審メンバーのコメントである。

 

 

 よく言われる、我が国が見習うべき(?)とされる、欧州の医療提供体制について、医業系コンサルタントによるコメントも紹介したい。

 

〇ドイツ:開業規制だけでは医師の適正配置には限界

 ドイツは、人口1万人当たりの医師数が41人(OECD、2013年)と、世界的に見ても医師密度が高い国の1つである。一方で医師の地域偏在と僻地での医師不足が社会問題となり、2012年に「医療供給構造法」(通称:田舎医法)が施行され、政府による対策が着々と進んでいる。

 日本と同様に公的医療保険制度が発達していたドイツでは、早い時期から保険医療費の増大が問題になり国家レベルで対策が講じられてきた。医師数の過剰こそが、医療費増大を招く最大の原因だという考えから、1990年代の初めから、医療費抑制の一手段として「保険医数の制限」が実施されてきた。保険医数を制限するために作成された指針(需要計画策定指針)では、診療科ごとに「その地域で医師1人が何人の住民の診療に当たるべきか」が規定され、現在に至るまで少しずつ形を変えながら運用されている。目標値と当該地区の住民人口から「目標配置医師数」が算出され、実際の各科の保険医数が目標数の110%以上であれば供給過剰と見なして、その科ではこの地区の新規開業が制限されるという仕組みである。保険医数がコントロールされれば、結果的に都市部や周辺地域での新規開業が減り、田舎の医師不足も抑えられるものと期待された。医療供給構造法で定められた「新需要計画ガイドライン」では、計画単位となる区分を大幅に変更。例えば、最も多くの配置医師数が求められる家庭医では、これまでの372地区から883地区に区域数を増やし、1区域の面積を減らした。さらに、診療科ごとの特殊性や必要医師数の差を考慮して、専門医を家庭医、一般的専門医、特別専門医の4つに分類した。

 

 しかし実際には、需要計画に社会経済や疾病構造の地域差が考慮されていないことから、特に田舎で不足している「家庭医」の適正配置は一向に実現されなかった。過剰地区で診療所を閉鎖して医師を減らすといっても、供給構造法では強制力が弱く、結果的に、過剰地域の医師数は減っておらず、田舎への医師誘導も実現できていないようだ。


 …少し意外であった。医師も感情を持つ人間であり、生活の一主体だということだろう。いや、参った。この問題、どうやったら解決できるのか?

 

 最後に患者からのこんなコメントを紹介して締め括りとしたい。

 

〇患者のハシゴ受診やコンビニ受診が日本の医療提供体制の問題点を生んだ

 われわれ患者のコンビニ受診が日本の医療提供体制の問題点を生んだかもしれない。何カ所の医療機関を渡り歩くハシゴ受診や緊急性がない軽症患者のコンビニ受診をなくし、極端に言えば救急車も有料化、時間外受診も自費すべきだと思う。その手の費用は自己負担の生命保険特約などで補填したらどうか。


 限りある資源を有効利用するために、一人ひとりの小さな協力が欠かせない。

 今回紹介したコメントの中では、かなり建設的なアイデアではないだろうか。

<ワタキューメディカルニュース事務局>

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